ドリーム小説
蒼の世界で生きる 言葉
どんなに距離をおこうがはなしはしないと、そう訴えかけるような視線。
それは子供がお気に入りのおもちゃに見せる執着にもにて。
もっとも、この男の場合はそんなかわいらしいものではないのだけれど。
夜を迎え始まった宴。
先ほどまで共にいたサッチ隊長は料理のことで呼ばれて席を立った。
おかげで今は一人で目の前の食べ物を眺めていて。
ちくちくと感じる視線の意味はいたいほどわかっている。
なぜここにいる、さっさとかえってしまえ。
サッチ隊長がいなくなった今、それは顕著に現れていて。
「。」
緩やかな、艶やかな声。
同時に横にするりと座り込む、紫色。
ふわりと鼻孔をくすぐる微かなお香のにおい。
それは確かに元自隊の隊長のもので。
私を拾ってこの船に置いてくれた優しいこの人を、私は裏切った。
この船にいればいいとその言葉に甘えておいて、私を認識してくれなかったからと、子供のように逃げ出した。
久しぶりにあったあのときはサッチ隊長たちのことに必死で何を思う間もなかった。
けれども今は、違って。
すぐ横で何を言うでもなく、ゆるりと酒を流し込むその姿。
けれども目を合わせることは、できなくて。
「俺としちゃあ、かわいい妹が、俺の隊の大事な末の娘が戻ってきてくれるならそれほどうれしいことはないな。」
妹だと。末の娘だと、未だなお呼んでくれることに、どうしようもない温もりが広がる。
そっと顔を見ればふわりとてもとてもきれいな笑み。
「かえってこい、。」
ずっと焦がれていたその言葉。
裏切ったのに、差し出される手。
どうして、どうして
だって、私は、あなたたちに、この船に
刃を向けた、の、に、
「ちゃん!!」
ふわり、混乱する頭に響く甘やかな声。
そして広がる柔らかな感触。
ごめんなさい
ありがとう
あいたかった
広がる波紋
彼女の言葉
混乱を収めるように、彼女はぎゅうぎゅうとしがみついてきて。
彼女越し、隊長が、とてもきれいに笑っている。
「この家出娘が。」
ぐらり、揺れる世界。
響く言葉
声は確かに船長さんのもの。
ゆるり、彼女をしがみつかせたままそちらをみれば、まぶしそうに目を細める大きな姿。
「もう気が済んだろう?さっさと帰ってこい」
その声は、響きは、その場所を支配していたマイナスの感情なんてものともせず。
ただ、まっすぐに心に響く。
「おいおい、白髭。俺のクルーを___」
「、帰ってこい。」
お頭の言葉を遮るのは蒼い陰。
細められた瞳はまっすぐにこちらを射ぬく。
「。」
極めつけとばかりにサッチ隊長の声。
何もいわない名前しか呼ばない、でもそれが、確かに彼の言葉を表していて。
「かえっておいで」
そんな優しい言葉、私にはもったいないのに。
「」
強く強く込められた意志。
逃げるのは許さぬと、俺のそばからはなさぬと、ただ強い一言。
鋭い瞳は決してそらされることはなく。
戻る