ドリーム小説
蒼の世界で生きる 許容
「」
強く強く込められた意志。
逃げるのは許さぬと、俺のそばからはなさぬと、ただ強い一言。
鋭い瞳は決してそらされることはなく。
私は一生、この人の呪縛から抜けられはしないのだろう。
それでも、それでも、
「お頭、私は、ここにいたい。」
ゆるり、手にもつ短剣を構えて。
それを向けるのは赤い人。
一度だけ大きく開かれた瞳は、すぐさま愉しげにゆがめられて。
「ほう、俺に刃を向けるというのか。」
すらり、片方だけの手が、握る剣。
まっすぐに切っ先は私へと向かう。
「いいだろう。俺から一本とれるのであれば、俺の船から降ろしてやろう。」
鋭い、肉食獣のようなその瞳。
獲物をとらえた獣は強い。
いっぺんの隙さえ見せることはなく。
どう頑張っても一太刀すら浴びせることはできない、それはわかっていた。
それでも、刃を向けるしか方法を知らなくて。
それでも、それでも
お頭の刃が私の短剣をはじきとばし、そうして向けられた切っ先はまっすぐに、私に、
「っ!」
きいん、と金属が叫ぶ。
音が、響く。
一瞬の邂逅の末、そこにあったのは、
「おいおい、手を出すなんて野暮なことをしてくれるじゃないか。」
お頭の刃を自らの刃で受け止めるマルコ隊長の姿。
「そっちこそ、副船長まででてくるたあ、ひどいんじゃねえかい?」
副船長の刃を短銃で受け止めるイゾウ隊長。
そして、
「怪我、見せて見ろ。」
柔らかな温もりとともに私を包むサッチ隊長。
ああ、やっぱり私は、誰になんといわれようと、
ここにいたい。
「一本は取れなかったが、まあ、成長はしているな。」
上からの声。
まだ愉快そうに頬をゆがめるお頭の姿。
「今回は見逃してやろう。次あったときは問答無用で連れ帰るがな。」
込められる視線の意味。
何一つ取りこぼすつもりなどはないと、そう告げる双眸の強さ。
逃げまどう子兎をどうやって調理するか、それを考えるように。
紅い髪のその人はその言葉を残し、その船から降りて行った。
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