ドリーム小説
あおいとりがわらう 1
・・・あれは誰だ。
大学からの帰り。
学生らしく寄り道でもしようかと思い友人と共に向かうショッピングモールへの道すがら。
「その件は俺が処理するよい。代わりにお前は先方のところに今すぐ連絡を入れろ。午後一番に約束をとれ。今から俺が向かう。」
その男は少し早口になりながら電話口にはなしていた。
パイナップルのような変わった髪型。
しかしながら端整な顔立ちにその髪型は大変マッチしていて。
金の髪色ですら、その存在を際だたせる役割を持って。
その男のそば、栗色のふわりとした髪を風に揺らして泣きそうな顔で一人の女が謝罪を口にする。
「マルコ部長、申し訳ありません・・・」
「謝る時間がもったいないだろい。さっさと行くぞ。」
女の言葉をばっさりと切って見せた男。
しかしながらその後の一言で今まで中りに漂っていたただならぬ空気は拡散した。
「___だがお前のおかげで先方に直接の乗り込むきっかけができた。安心しろ。ここからは俺も手を貸してやるからよい。」
ふわり、今までの厳しい表情が一転。
柔らかな色を帯びて瞳が眇められる。
のばされた男の手は軽く女の頭に乗せられてゆるり、なでられる。
___いやいやいや、あれは本当に誰だよ。
一通りの流れ、柔らかな空気。
それは端から見ていればとても微笑ましいもののように思える。
しかしながらそれが知らない人物であれば、に限定されるのではないだろうか。
金色の異質な髪型
眠たげな瞳
今はスーツでばっちりと着こなす男の正体。
それを知っている私からしてみれば、これは何かの錯覚ではないかと、そう感じてしまうわけで。
少し髪が乱れているのは問題が起きて駆け回っていただけではない。
恐らく今日の朝、しっかりととかしていかなかったのだろう。
パリ、とのりの利いたシャツ。
それはどう見ても自分が昨日かけたもので。
眠たげな瞳。
人をにらむかのように見えるその瞳だが、否、あれは本当に冗談抜きで面倒で眠たがっている瞳だ。
しかしながら、最後に見せたあの笑みだけは、初めて見るもので。
始めてみたそれに、じわり、胸が溶かされるような焦燥が生まれたのは、そう、きっと気のせいだ。
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