ドリーム小説
あおいとりがわらう 10
「ちゃん!」
道を歩いていれば突如呼ばれた名前。
「・・・ええと・・・」
にんまりと楽しそうに笑う笑顔の男の人。
頭の中の人物と当てはまらなくて思わず言いよどむ。
「ちゃんひどい!俺のことわかんないの?!」
そう言いながら流したままの少し長めの髪を持ち上げてでこを見せる。
「あ!サッチさんだ!」
特徴的なリーゼントが作られておらず、ただの素敵なおじさまとなっていたその人は、確かにサッチさんで。
「元気にしてた?」
「サッチさんもお元気ですか?」
以前マルコさんに連れていってもらって以来会ってはいなかったが、サッチさんは親しげに話しかけてくれる。
「ねえねえ、ちゃん。今から暇?」
サッチさんの言葉にうなずけばそれはそれは楽しそうに手を取られた。
「おじさんとデート、しない?」
「わー!!なんですかこれ!!すごいすごい!!」
連れて行かれたのはどこかのケーキ屋さん。
色とりどりのフルーツが宝石みたいにちりばめられた魔法のお店。
「俺の経営してるお店の一つ。いつもマルコのためにがんばってくれてるちゃんにおじさんがいくつか買ってあげよう!さ、好きなの選びな。」
ショーケースにやっていた目をサッチさんに向ければしせんにきづいて、ふわり、笑い返されて。
「ありがとうございます!!」
なんて素敵なお言葉!
素敵なおじさま!
遠慮するべきなんだろうと思いながらも、甘いものの誘惑に勝てるはずもなく。
ショートケーキにモンブラン。
タルトにシュークリームにプリン。
どれもが素敵で私を誘惑してくる。
そして、ふわり、脳裏に浮かんだマルコさんの姿。
「・・・サッチさん。マルコさんってなんのケーキが好きですか?」
ぽろり、口からでた言葉にサッチさんがくつり、声を上げて笑った。
「マルコは、甘いものならなんでも好きだな。生クリームが特に好きだぞ。」
ショーケースの中をのぞき込む私の横に同じようにしゃがみこんで、サッチさんは教えてくれる。
「ついでにあいつの好きな食べものとか、知りたいか?」
「!ぜひ!」
サッチさんの申し出はとてもうれしいもので、一も二もなく返事を返せばサッチさんにぐわしぐわしと頭をなでられた。
「じゃあ買ったケーキもって、マルコの家で、いろいろ話そうか。」
「・・・サッチ。てめえ何、してるんだい」
「ちょっとまて、ちょっとまてマルコ!!」
帰ってきたマルコさんはサッチさんを視線に入れた瞬間に持っていた鞄やら上着やらをセットされていないリーゼントに向かって投げつけた。
とても仲がいいんだなあ、とみていればサッチさんが涙目で私の後ろに避難してきて。
「ちゃんっ、助けて!」
それを追ってきたマルコさんは私の前に仁王立ちになるわけで。
あ、怒ってる。
怖いからなあ、できたら巻き込まないでいただきたいものだ。
くるり、サッチさんとの場所を交代して、彼を前に押だして。
「裏切り者!!」
がなるサッチさんに笑顔を返して手を振れば小さな部屋の中でのとても大人気のない鬼ごっこが再会されて。
二人がへばる頃に冷たいお茶でも飲めるように用意しておこうかと立ち上がり台所へと向かう。
ついでにもう少ししたら晩ご飯の時間だ。
・・・・・・・・・サッチさん、食べて帰るだろうか。
「サッチさん、晩ご飯、食べて帰られますか?」
ひょい、と顔を出して問えばうれしそうな笑顔が返され他ので同意と見なす。
「!こんな奴に出さなくていいよい!!」
マルコさんが何か言っているけれど、それはそれ。
見事にスルーを試みて冷蔵庫をのぞき込む。
さて、何を作ろうか。
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