ドリーム小説


あおいとりがわらう 11  

























「あ!」


突然向けられた声。

同時に捕まれた腕。

何事かと思い慌てて振り返ればそこにはふわふわの髪を揺らす女性の姿。


「マルコ部長の!!」


その人には確かに見覚えがあって。

あまり会いたくはない人で。

それでもうれしそうに私をみて笑うものだから邪険にはできなくて。


「確か、ちゃん!」

なぜか覚えられている名前。

放されない腕。

え、いったいどうしろと??


とてもとても楽しそうに彼女は笑う。

今ここにいる理由だとか、何をしているところだとか。

友人にするかのような世間話。

それに相づちを打って、頷いて。

質問に答えて。

朗らかに、
柔らかく、
この人は笑う。



話の延長戦のように、ふわり、私に告げた。



「わたし、マルコぶちょうがだいすきなの」



とてもとてもきれいな顔で

とてもとてもかわいい声で

とてもとても愛らしい姿で



あなたは私に毒をはく


「マルコ部長が私をみてくれていないことは知ってるけれど、私も彼が大好きだから。だから私もがんばるわ」


大人の表情で

大人の声で

大人の姿で



私にはできないであろうことを、この人はするの。


私は、私がマルコさんにどう思われてるか、なんて、わからなくて。

決定的な言葉なんて、一度ももらえたことがなくて

仕草も言葉も態度も、何一つ信じられなくて。


私は子供で、あの人を支えることなんかできない。

この人のように同じ目線でものをみることなんて、できない。


恋敵相手に、がんばる、だなんて、いえない。


じわり、にじみそうになる視界。

それをこらえて笑って見せて。

目の前の彼女に、心臓を、突き刺されたような感覚になって




ふわり


世界が黒く染まった。





「どうした、。」




ふつうはこう言うときに現れるのはヒーローとか、本人とかじゃないんだろうか。

艶やかな声

焚きつめられた香

鮮やかな着物


そして、暖かな手のひら



私の視界から彼女を遠ざけてくれたのは、イゾウさんだった。

































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