ドリーム小説
あおいとりがわらう 14
あふれそうになる言葉たち
それを口に出すタイミングを、きっかけを作れないまま日は流れて。
そして、そのときはやってくる。
「っ、私はマルコさんの家政婦じゃないっ!!」
激高して叫んだ言葉。
すべての想いがぐちゃぐちゃになって、ただ、苦しくて仕方がなくなって。
投げつけた言葉はひどく乱暴で。
きっかけは、大学の友人の言葉。
_え?つきあってないのにご飯とか作りに行ってるの?!_
きれいな顔を驚きでいっぱいにして、オレンジ色の髪を持った彼女は叫んで。
_それはおかしいわよ!いっそのことアルバイト代でももらいなさい!_
後の言葉はともかく、そういえばこの関係はどう表現したらいいのかわからなくて。
帰ったら聞いてみようと、そう思って。
「マルコさん。私たちってどういう関係になるんですか?」
それに対してマルコさんは瞳をぱちくりと瞬かせて一瞬考えた後、口にしたのだ。
「今更何を行ってるんだよい。」
「俺とお前はまずお隣さんだろい?」
いや、まあ、その通りなんだけど、
そうじゃなくて、もっと、こう、違う答えを望んでいたわけで。
「あと、俺の家のご飯、掃除洗濯もしてくれてる。・・・ん?なんか、家政婦みたいだな。」
それは、マルコさんにとって何気ない言葉だったのかもしれない。
それでも、その言葉は、ひどく、心臓に痛くて。
ただのお隣さんで、ただの家政婦みたいな存在で。
ほんの少しだけ期待してしまっていた自分が、バカみたいに思えた。
「私は、ただの便利なだけの、存在ですか。」
じわり、あふれる感情は、決して押さえられるものではなくて。
「つまり、マルコさんは私じゃなくても、よかったんですね。隣に家事ができる女の人がいれば、誰でも、よかったんですね。」
少しだけ、特別だと想ってた。
あなたにとって、私は、少しだけうぬぼれてもいい存在なんじゃないかって。
でも、違ったんだ。
「っ、私はマルコさんの家政婦じゃないっ!!」
一瞬だけあった瞳をとっさにそらして。
立ち上がり、渡された合い鍵を投げつけて。
そのまま裸足で飛び出した玄関。
周りをみもせずに自分の部屋へ帰ろうと方向を変えればぶわり、目の前の何かにぶつかる。
「っ?!」
こんなところに壁はなかったはずだ。
何事かと顔を上げればそこには不健康そうな隈を両目の下に携えた幼なじみの姿。
「、おまえいったいなにがしたいんだ。」
べりり、とはがされた距離をもどかしく感じて、思い切りその体へと飛びつく。
「ロー!!」
ぎゅうぎゅうと懐かしい匂いを、温もりを、堪能していれば後ろのドアが勢いよく開く音。
「、まつよい!!」
中からでてきたのはもちろんマルコさんで。
でも、今は彼の顔を見たくなどなくて、ぎゅ、とさらにローにすがりつく。
「・・・なんだおまえ。」
「だれだてめえ。」
「をはなしやがれ。」
「気安く名前を呼んでんじゃねえよ。」
二人の応酬を耳にしながら、それでも今は彼の声を聞きたくはなくて。
「ロー、お願い、つれてって。」
「っ、なにいってんだよい!」
その言葉に大きく反応したのはマルコさん。
こちらに近づこうとする気配を感じてさらにローにすがる。
それと同時にマルコさんの携帯が着信を知らせる音を鳴らして。
「行くぞ、。」
しがみついたままの私をひょい、と抱き上げてローはエレベーターへと歩き出す。
落とさないように、という配慮が見て取れる仕草にどうしようもなく泣きたくなる。
ごめん、ごめんロー。
こんな時ばっかり、頼っちゃって、ごめんなさい。
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