ドリーム小説


あおいとりがわらう 16  































俺をみて、すごくうれしそうに笑う。

幸せそうに、言葉を紡ぐ。

名前を呼ばれればどうしようもなく、愛しく感じて、この手で抱きよせて、閉じこめてしまいたい衝動に駆られる。


愛しい


好きだとか、そんなちゃちな言葉では言い表せられない。


ただ、愛しい。


俺のものにしてしまって、俺しか見えないように閉じこめて

俺だけを求めるように、してしまいたいくらいには、



俺はに溺れている。



俺のためにご飯を作って、おかえりと言葉をくれて。

パソコンに向かっていればコーヒーを持ってきてくれて。

甘い笑顔と、耳朶に響く穏やかな声。


俺の中の欲望が、首を擡げるのを、笑って閉じこめて。


サッチやイゾウに紹介したいと、自慢したいと、その思いから連れていった服屋にレストラン。

俺の友人をみてもきれいですね、の一言で終わらせる存在に、ただただ愛しさが募るばかりで。

服をかってやるといったのに、強請ったのは高くもない髪留めで。

しかも、それを選んだ理由が、俺の色、だとか。


もう、本当に、あいつは俺をどうしたいんだ。


イゾウに気に入られるのはうれしいけれど、複雑で。

俺よりも先に名前を呼ぶとか、ふざけるなと、思ったけれど。

それでも、口では言わないが大事な友が、俺の愛しく思う女を好んでくれる。

その事実に、ほっとした。







サッチのレストランでこんなところは入れないと必死に抵抗する様もかわいい。

おとなしくおごられていればいいのに、それすら気が引けるようで。

大学の友人と話す姿は、俺の知っている彼女ではなく。


初めて、感じた、年の違いの不便差。

俺の知らないがいることが、信じたくなくて。

このときに初めて、同じ年であればと思った

まあ、その思いは一瞬で消えたけれど。

サッチが俺に向ける視線がうっとうしい。

俺だってこういう顔するよい。

ああ、でも、俺が思う大事な女を、悔しいけれどお前の方がうまく導けるだろう。

調子に乗りやすく、テンションも高いうっとうしい奴だけれども、その実人の心に敏感で、すぐにいろんなことに気がつける。

それも知っているわけで。

俺が全く知らない相手に相談しに行くよりは、サッチやイゾウという、俺が認めている男に、よっていってくれた方が助かる。

まあ、もちろん俺に一番に頼ってはほしいのだが。




ずっとタイミングを見計らっていた名前が、口からでたのは至極簡単で。

彼女の涙をみたときだった。

その前にいた会社の後輩のことなどどうでもよく。

ただ、その姿をこの腕の中に閉じこめたくて。


そっと答える手が、愛しくて。


ああ、やばい。

妹だと?

バカを言うな。

この子は俺にとってどうしようもないくらいに愛しい女だ。

お前は代わりになどはなれない。


に何を言ったのか、なぜ、が涙を流したのか。

理由はよくわからなかったけれど、妹だと思われたことを悲しんでくれていればいい。


俺のために、料理を作ってくれて

俺のために、部屋を片づけてくれて

俺のために、洗濯をしてくれて



お前は隣人が俺じゃなくても、同じようなことをしたのだろうか。

隣人が望んだのならば、同じことをしてやったのだろうか。



それとも、これは俺だったからだと、そう、錯覚してもいいものだろうか。




なあ、






俺はうぬぼれてもいいのかい?


俺をみて、顔を赤らめるその理由を

俺に触れられて、幸せそうに微笑むその意味を

俺の家から帰るとき、少し寂しそうに手を振るその心意を




少なからず、俺はお前に思われていると、そう、錯覚してしまっていいんだねい?












「っ、私は家政婦なんかじゃない」


俺が、お前のことを、ただの隣人だと思っていると?

俺が、お前のことを、家政婦だと本当に思っていると?


ふざけるな


胸の中沸き上がる、ドスグロい感情。

逃げるその腕をつかみ、引き寄せて、柔らかなベッドの上に押し倒して、その上に乗りかかり、俺しかみないようにして。

唇をふさぎ、呼吸を奪い、唾液を送り込んで、舌で余すことなく蹂躙して、白い肌にふれて、ふるえる体を押さえ込んで、耳に、目尻に、頬に、首に、舌で触れて、すべてを、味わって、色を付けて、俺で染めて。

俺という存在をその体に、心に、彼女すべてに、刻みつけてしまおうか。


一瞬で浮かんだその考え。

それを理性で押さえつけて、それでも、逃がさないように、腕をつかむために、玄関から飛び出した。

だというのに。


目の前、俺が想う少女は、その小さな体をめい一杯広げて、俺ではない、男に、必死で抱きついていて。



だれだ、その、おとこは




目があった瞬間、浮かんだ嫌悪感。

おれも同じものをうかべたのだろう。



鋭くなる視線、低い声。


俺の視線から、声から逃げるように、その男にすがりつく。




離れろ。


それは、俺のだ。


でそうになった言葉を押さえて、へと手を伸ばす、その瞬間、ポケットの中でけたたましい音を立てる仕事用の携帯。

こんな時に。

思いながらも無視をすることなどできなくて。


携帯を手に取った瞬間、目の前でが抱き上げられて。

その男によって連れて行かれそうになって。


上げた声は、聞き遂げられることなどなく。


愛しい、そう想う少女は、俺の言葉が原因で、お礼外の男の手によって、姿を、消した。








その日から約一週間。

俺は一度も彼女に会えてはいない。

































戻る