ドリーム小説
あおいとりがわらう 17
「な、んで・・・」
「あら、すごい高級車」
大学が終わって。
友人のナミと共に外にでようと門へと足を進めれば、そこにはみたことのある高級車があって。
まさか、と思いながらゆっくりと来た道を戻ろうとすれば捕まれた腕。
「まつよい、。」
低い、耳に響く声。
焦がれた声。
それは今は恐怖の対象にしかなり得なくて。
「ちょっと、あなたがだれかは知りませんけれど、になんのご用ですか。」
ナミが少しとげのある声でマルコさんをいさめてくれて。
「・・・ああ、あんたが”ナミ”かい?」
「・・・何で知ってんのよ。」
「がいつも大好きな友達だって話してくれたもんでね。」
「・・・、これがあんたの?」
好きな人なの?
きっとそう続くはずだった言葉はナミの配慮によって表にはでず。
視線で問われたそれに、小さくうなずく。
そうすればじろじろとナミがなんの遠慮もなくマルコさんをみて。
「のこと、次はないと思いなさい。」
泣かせるなんて、許さない。
そう告げる強い瞳に、泣きたくなる。
「。ちゃんと話してらっしゃい。」
そうしてこちらをみたナミが、ふわり、きれいに笑って私に言った。
「、いくよい。」
捕まれた腕。
そのまま引かれて、彼の車の助手席へと乗せられて。
何も返さない私に何をいうでもなく、ただマルコさんは私を連れてどこかへと向かいだして。
思い返す、あの日のこと。
完璧に私の逆ギレだったあれ。
あの日から顔を合わすのが怖くて、すべて放って、ローの家に転がり込んで。
本当に、子供だ
自分の思い通りに行かないことに、苛立って。
逃げ出して。
私が動かなければいけなかったのに、それなのに、この人は迎えに来てくれた。
ごめんなさい
口に出したいその言葉、それは簡単にはでてくれなくて。
「悪かった。」
無言が続く車内に唐突に放たれた言葉。
思わずマルコさんへと視線を向ければ、そのまっすぐな瞳が私を射ぬいてきて。
「かえって誰もいねえのが寂しいんだよい」
「温もりがねえのが、がいねえのが、苦しい」
ああ、ほら、そんなことをいったらやっぱり勘違いしちゃうよ、だめだよ、マルコさん。
でも、その先に続く言葉を、私はひどく熱望していて
ね、マルコ、さん
「あー・・・。言いたいことが、あるんだよい。」
車をどこかにとめて、困ったようにまゆをひそめながら、照れたように頭をかいて。
視線をあちこちうろうろさせて、
そして、覚悟を決めたように、こちらをみた。
「好きだ」
始めてみる表情で、あなたはそう言った。
「言葉にしないと、わかってもらえないってわかってはいたんだがな。年をとると臆病になって困るもんだな。」
ふにゃり、少しだけ頬をゆるめて、笑う。
「返事は、くれねえのかい?」
夢じゃ、ないんだよね?
「私なんかで、いいんですか?」
声が、ふるえた。
みっともないくらいに。
「お前がいいんだよい」
真剣な声。
響く音。
「だって、同じ視線でものをみれない」
「それがどうした。」
そんなもの、なんの生涯にもならないとばかりに。
「年だって離れてるし、まだ子供で___」
続きの言葉は、マルコさんの口の中に吸い込まれた。
目の前に広がる蒼い瞳が、ただ、まっすぐに私をとらえて
唇にひろがる、ねつが、からだじゅうに、でんせんしていく。
そっと、一度離れたそれが、もう一度、もう二度、と幾度かついばむように触れてくる。
「っ、はっ」
息が続かなくて、あわてて距離をとろうとしても、いつのまにか回されたうでにこうそくされていて
大きく開いた口の中に、ぬるり、と柔らかな感触が、広がって。
じん、と胸が、からだが、こころが、ふるえた
すき
すき
だいすきなの、まるこさん
口づけの間に必死で言葉を紡ぐのに、それさえも、飲み込まれていく。
「頼むから、もういなくなんねえでくれよい。」
あまくあまく、とろけるように、ことばが、みみもとでつげられる
すき
だいすき
なんかいいっても、伝えきれる気がしない、それ。
でも、本当に好きなの
まだ大人になれていないけれど
きっと子供っぽいことたくさんするけど
知らないことばっかりだけど
すき
それは本当なの
まるこさん、まるこさん
あのね、私これからもご飯作っていいですか?
鍵、もう一回もらっていいですか?
夜、お泊まりとかしても許してくれますか?
言いたいこと、聞きたいこと、たくさんあるの。
でも、今は、もう少しだけ。
この甘い甘いキスに酔いしれていたいの。
戻る