ドリーム小説
あおいとりがわらう 9
「マルコ部長!この間は本当にすみませんでした!!」
鳴らされたベル。
なにも思わずまるで自分の家の扉を開けるようにあけてしまった玄関。
開いた先、そこにいたのはあまやかな髪をなびかせる一人の女性だった。
「・・・あれ?部長、じゃない??」
びしり、九十度見事に頭を下げていた彼女は帰ってこない返事にそっと頭を上げて、そして私をみてきょとりとした表情を見せた。
どうみても彼女が用があるのはこの家の家主であるマルコさんで。
マルコさんが不在な今、私にいったいなにができるだろうか。
「妹さん、ですか?」
ふんわり、華がほころぶような笑み。
思わず息をのまずにはいられないくらいの鮮やかさ。
かてない
小さく浮かんだ言葉をそっと胸の奥に押し込める。
元々つりあうとは思っていなかった。
それでもあの日、共に出かけてからは少しだけ期待するようになってしまった。
むりだよ
こんなことなら期待なんてさせないでほしかった。
妹にしかみられないくらいの年齢差
この女の人からしたら私は子供で、幼くて。
ふわり、すごくきれいにわらうひとにたいして、わたしはあまりにもみにくすぎる
じわり、浮かびそうになる涙をぐっと、こらえて。
「?」
部屋のある階のエレベーターが開かれて、そこから姿を現したのはマルコさん。
振り向いた女の人が、それはそれは艶やかに笑う。
「部長!」
甘い声
鼻腔をくすぐる香水
柔らかな髪が、彼女の存在を強めて
マルコさんの視線が、彼女に、むけられる。
その瞬間、こらえていた涙が、じわり、ゆるんだ。
「」
呼ばれた名前。
私の名前。
それは一度もあなたに呼ばれたことのない下の名前。
思わずにじんでいた涙がほろり、頬を伝うくらいに、驚いて。
「。なにがあった?」
目の前の女の人には目もくれず、一目散に私をめがけてマルコさんは駆けてきて。
目の前の女の人を押し退けて、私の頬に、滴にふれた。
「もう、大丈夫だよい。」
ふわり
温もりに包まれて、目の前がマルコさんが着ていた服でいっぱいになって。
ぎゅう、と抱きしめられたことが、どうしようもなくうれしくなって。
そっと、その体に腕を回した。
「すみません、部長、私妹さんに何か・・・?」
マルコさんの向こうから聞こえてきた声。
妹だと認識されたそれも、今のこの状況じゃ、仕方がないかもしれなくて。
だけど
「妹じゃ、ねえよい。」
少し低い、どこか怒ったような声。
直接ふれる肌から伝わる振動
「俺の大事な女だ。」
告げられた言葉、それは、ねえ、信じていいの?
マルコさん
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