ドリーム小説













     主人公じゃない でも もうそれで構わない














蒼色は、消えた。

私を赤に、渡して。




「かわいそうなおまえに、俺が一つだけ願いをかなえてやろう。」


紅色をまとった片腕のその男はとてもとても愉しそうに笑う。


「何がいい?」


瞳はらんらんと輝いて、今の私の現状を楽しむよう。


「・・・何でもいいの?」


私の返事にかすかに瞳をすがめて、男は笑う。

先ほどとは違い、侮蔑するような、蔑む笑い。

興味が尽きたと、そう告げるような。

「おまえの身を保証しろ、でも、たくさんの金と共にどこかにおろせ、でも。なんでも好きなことを一つ、言ってみろ。」


その言葉に浮かんだのは、たった一つ。

私を助けて、でも、わたしをもとのせかいにかえして、でも、ない。


たったひとつ



「 あの人の、空姉のいない世界に、行きたい。 」




私の言葉に、男は一度きょとん、とした表情をして見せて。

そうして、じわじわとまた笑い出す。


「本当にそれでいいのか?」

おもしろいおもちゃを手に入れた、そんな様子で男は言葉を発する。

それにただただうなずけば、今度は大きな声で笑いだして。


「海賊相手におもしろい要求だな!自分の身の安全を願うでもなく、あの女を殺せと言うでもなく!」


男の瞳に輝きが、増す。


「もう、嫌なの。あの人に何かを期待するのも、あの人が私を煩わせるのも。もう、疲れた。」

空姉なら何かを変えてくれるんじゃないかっていう期待も。

空姉のせいで私がこの世界でこうなってしまったということも。


それでも


「お姉ちゃんを殺してなんて、いえない。」


私の言葉に男はぴたりと笑いを止める。


「偽善者め。」


そうして綴るのは、残酷な言葉。

それでいて真実の言の葉


私のせいで、あの人が死ぬのは嫌だ。

私が願ったからと、またあの人に恨まれるのは嫌だ。


どれも真実で。


でも、本当は


漏れる、笑い。

くつくつとのどから声を発する私を男は眺める。


「私の手を、あんなひとのためなんかに、汚したくない。」


黒く染まる思考。


「すべてを、私からすべてを盗っていったあの人なんかに」


私の本当の言葉。



大好きで、大好きで、大嫌いだった、あの人



「私を、あげない。」


もう二度と縛られてなんかやるものか。



「いいだろう。おまえが望むのならばそれをかなえてやろう。」



男は笑う。

満足そうに、愉しそうに。



手を伸ばして、男は私の頬を緩やかになでた。



「今からおまえのすべては俺のものだ」



慈しまれていると錯覚するような優しさで



「俺のために戦い、俺のために生きろ。思考のいっぺんたりとも俺以外のもののためにあるな。」


愛おしんでいると思わせるような柔らかさで


「おまえの望みを、かなえてやろう」


口づけを交わすような至近距離で、男の目に貫かれる


「だが、今すぐじゃあつまらない。」

その指が、私の唇を、なでる


「俺が飽きたとき、俺がおまえを望む世界につれていってやろう。」



”私”が飽きられるのが先か。

”あの人”がいなくなるのが先か。


どちらでもいい。


だって、結果は同じこと。



赤い色をまとった片腕の海賊。



私の願いを叶えてくれる。


代償は私のすべて。




でも、もう、なんだっていい。




「よろしくお願いします、シャンクスさん」



私のことばに答えるように、赤髪のシャンクスは私の唇にかみついた。









※※※



俺がおまえを気に入れば、おまえをこの世界に残してあいつを人知れず失わせてやろう。

だがおまえに向ける興味が失せたそのときには、おまえをこの世界から失わせてやろう。


結局どちらかを殺してやるよ、という赤髪。
たぶんもだもだする夢主を生殺しし続けるんじゃないかな。
この後姉は元の世界に、夢主はこの世界に残される。
理由としてはこの世界になじみすぎた夢主(赤髪のためにあろうとした結果人殺しやらなんやらいっぱいしそう。)
と、なじみきれなかった姉(不死鳥をはじめとする白髭たちに庇護されつづけて、この世界で手を汚すことはなかったため)

みたいな。




”私は主人公になれない”の続編もどき。

読みたいとのお言葉をいただいていたので。

















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