ドリーム小説
お前は、主人公じゃない 1 マルコ視点
あいつが、空が大切に思う子なのだから、守ってやらないといけないとは思っていた。
それでも、彼女がその子を理由にしたのが、そうやって俺の手を拒んだのはひどく屈辱的で。
あの世界で食べた料理がこの世界ででてきたときは、空の味付けと似通いすぎていたそれは、俺のたがをはずすには十分すぎて。
どうして空をおいていったか、だと?
おまえの存在が、空をあの世界に縛り付けたのだろうが。
それなのに、なぜおまえがここにいる。
どうして空は、ここにいない。
サッチにとめられるまで、俺の手は力を弱めることはなく。
細い首を、小さな体を、衝動に任せて壊してしまいたかった。
思いとどまった理由は二つ。
空が悲しむのは嫌で。
空へのきっかけを手放すのは怖かった。
彼女にあえるかもしれない可能性を、むざむざと失ってやるほど俺は甘くはない。
一度はあきらめた彼女だけれど、彼女の心残りがここにあるのであれば。
もう手放してやる気など、ない。
この手の中に、可能性を手に入れた。
彼女を手に入れることができる、可能性を。
はじめに出会ったのは確かにこいつだった。
けれど、俺を受け入れてくれたのは、俺を慈しんでくれたのは、おまえじゃ、ないんだよい。
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