ドリーム小説
花嫁修業 遭遇
海楼石入りの船を白髭の領地である島に預けて。
そうして向かうは、ウォーターセブン。
少しでも軌道力の高い乗り物を得るために。
そのために乗せてもらっている商船は、物資だけでなく人も運ぶ船で。
今、その船が、現在進行形で、海賊におそわれている。
「非戦闘員は中へ!」
その声と同時に押し込まれた一つの船室。
中では商船の非戦闘員であるらしい女性や老人たちがいて。
記憶が正しければ、コックや医者、自分と同じ乗客だったはず。
がくがくとふるえる乗客をなれたようにコックたちが落ち着かせている。
まあ商船だもの、襲撃も結構あるんだろな。
そんなことを思いながらぼおっと体を休めていた。
ら、
ガタン
それはそれは大きな揺れが船体に走った。
びくり、ふるえた乗客たち。
そして、船員であるコックたちに走った緊張を、見逃すことはなくて。
扉が、ガンガンと音を立てて。
悲鳴を上げて皆が奥へと体をねじ込ませていく。
そうすればぼおっとしていた私が一人取り残されたわけで。
その状態でガァン、とひときわ激しい音を立てて扉が、開かれた。
大きな体、鈍く光る刃、不快な笑み
ひときわぎらぎらと輝く目が、部屋を見回して、愉しそうに輝く。
太い腕が、一番近くにいたからだろう、私に向けられて、手にもつ刃が降りおろされた。
逆らえばこうなると、はじめに恐怖を見せるのか。
うん。なかなか賢いやり方。
それが、私じゃなければだけど。
きゃあ、と誰かがあげた悲鳴。
逃げろ、と私を心配してくれる声。
ありがとう、でも、大丈夫。
目があったキャスケット帽の男の人に笑って見せた。
彼が、驚きで目を見開いたのを最後に、視界が変わる。
おろされる刃を簡単にかわしてみせる。
だってこんなの、いつもの訓練よりも遅い。
向けられる視線から逃げるように体をひねって、太い腕を軸にするように回る。
そのまま相手の後ろに回り込んで、そのままの勢いで、首をけり落とす。
そうすれば、相手は鈍い声を上げて昏倒するわけで。
手をぱたぱたとはたいて、少しだけ乱れた髪を整えて、一つ、ため息。
「・・・いい女って、どんなのだろ。」
しん、っとなっていた室内が一瞬の静寂の後、沸き上がる。
「嬢ちゃん、すげえな!!」
ばしばしと背中をたたかれて、よくやったと頭をなでられて。
ちょ、痛い。地味にいたい。
まだ上の方では剣劇が続いているというのに、暢気なものだ。
「けが、けがしてねえ!?」
先ほどのキャスケット帽が焦ったように私にふれる。
大丈夫、そういって返しても、なぜか非常に心配そうにみられて。
そうしていれば、上の方でしていた剣劇の音が、消えた。
あれ、と思い見上げれば、目の前のキャスケット帽も上を見ていて。
「きた。」
小さく、本当に小さく彼はつぶやいて、そして非常に愉しそうに、笑った。
その笑みは、いうなればまさに、”海賊”のような笑み。
ドカン
先ほどとは違う音。
それに私を囲んでいた人たちは今の状況を思い出したかのように体を揺らして。
仕方ない。
ここまで乗せてもらった恩もあるし、ご飯もおいしかったし。
いろいろ珍しいものも見せてもらえたし。
ちょっとだけ、微力だけれどもお手伝い、しようじゃないか。
「上のお手伝い、してきますね。どうぞこのままここでゆっくりしていてください。」
ゆっくりなんかできるか、そんな言葉を返された気がするけれど、気にしない。
さて、と男を見下ろす。
部屋の中にあった縄を使い、男の体をがんがらじめに縄で締めて、ひきず・・・れない。
重い。
想像以上に重かった。
いや、しかし、ここにおいていくのも彼らの精神衛生上よろしくはないだろう。
「・・・いや、あんたじゃ無理だろう。」
引きずろうとする私を見かねたのか、キャスケット帽が今にも笑い出しそうな表情で男を引き受けてくれた。
「上まで一緒に運ぶから。」
・・・キャスケット帽、しかしながらおまえも結構背が低い。
大丈夫か?
と思っていたがあっさりと男をかつぎ上げて彼はひょいひょいと足を進めていった。
・・・というか、この動き、絶対戦えるだろおまえ。
船の上は一方的な殺戮現場でした。
・・・そんな馬鹿な。
キャスケット帽と一緒に足を踏み入れた甲板。
そこにはごろごろと首や足が、出血のないまま転がっていた。
思わず足を止めた私をよそに、キャスケット帽はひょいひょいと進んでいく。
__まるですべて知っていたかのように。
ゆっくりとキャスケット帽から距離をとりながら、周りの状況を把握する。
首も腕も、切られているのは見慣れない顔たち。
つまり、海賊だろう。
でも時々商船の人たちの顔もあって。
敵味方、関係ないというよりも、これはつまり第三者か・・・
キャスケット帽を視界の中心にとらえ直せば、彼の足は淀みなく、一人の人物へと向かっていて。
もこもこ帽子・・・?
黄色の長いシャツにその背中にあるのは、
「死の、外科医・・・?」
私の言葉が聞こえたかのように、彼はゆるり、視線をこちらに向けて。
同時にキャスケット帽は彼の元にたどり着いて、かちゃり、どこからかとりだしたサングラスをかけた。
そして、___
「キャプテン、あれすっげえおもしろい。」
とんでもない発言をしやがった。
ほほう、そんな感じでもふもふ帽子はこちらをぎん、っとにらみつけてきた。
あ、だめだ、この人怖い。
怒ったときのサッチ隊長なみにこわい。
「__ROOM_」
静かな、低い声があたりに響く。
同時に広がる何か。
ぞくり、本能が示すままに、全力でそれを回避すれば、男の瞳はたのしそうにゆがめられて。
「おお、避けた。」
額に手を当てて、こちらを見上げるキャスケット帽。
てめえ、後で覚えてろ。
くつり、小さな笑い声。
もふもふ帽子が、それはそれはもう”いいおもちゃ見つけた”そんな顔で見上げてくる。
「ペンギン」
その男が何かをいった、その瞬間。
反射的に体が動いた。
一瞬前、体があった場所には、一つのナイフ。
誰が、そう思う間もなく、いつの間に後ろにいた男からの攻撃を避ける。
キャスケット帽よりも長い手足、目元を隠す淵の深い帽子。
そして、なにより、
「っ、はやい、」
思わず漏れた声に、にやり男は笑う。
かろうじて、その帽子にぺんぎん、とかかれているのが見えた。
・・・ペンギンなら地上でもっと遅いだろうが!!
そんなつっこみを入れられるはずもなく、必死で逃げる。
自分の攻撃は素早さと不意打ちの格闘。
獲物を使うのはあまり得意ではない。
___手加減が、わからなくなるから。
でも、今はそんなこといってられなくて。
カシャリ、手首のリストバンドに隠していた小さな刃を、向かう刃とあわせて、ぎりぎりと力を分けあう。
まあ、もちろん勝てるわけもないわけで。
不意に力を抜いてあえて後ろに倒れて、隙をついて、にげる。
が、
ダアン
そんな大きな音を響かせて、体が地面にたたきつけられる。
とっさに受け身は取ったけれど、痛みは軽減しきれなくて。
目の前に星が舞う。
なんだ、このペンギン男。
おまえ格闘の方が得意だろう。
痛みで動けないまま、目の前のペンギン男をにらみつけていれば、不意に視界に入る黄色。
「俺の船に、乗れよ。」
く、と顎を捕まれて、至近距離でみる深い色。
NO、といわせない強さが、そこにあった。
思わず笑みがもれる。
まるで親父さんと対面しているみたいだ。
でも、弱い。
親父さんには、まだまだ、遠い。
「・・・なにがいいたい?」
私の笑みに不快そうに眉を潜める男。
確か、名前は、
「トラファルガー」
く、っと身を引いて、その手から逃げ出して、笑う。
「私が、これでも?」
痛みを無視して立ち上がる。
下ろしていた髪を、ばさり、風に揺らして、相手からみて、右側。
自分にとっては左側のうなじをさらす。
ひやりとした風が、なでる。
十字は黄色
隊長の色
三日月の形
親父様の印
色は蒼
不死鳥の色
私の、想いの、誓いの、証。
キャスケット帽が、息をのんだ。
ペンギン帽子が、警戒を示した
トラファルガーが、ただ、笑った。
「おもしれえ。今ここにいるって事は、なにかしらの理由で船に乗ってねえんだろ?」
「なら、その間だけでいい。俺の船に、乗れよ。」
再度繰り返された言葉。
私が白髭海賊団だと告げても、ただおもしろいの一言で切り捨てた。
それどころか執着の色は増して。
そうだとしても、私が想うのは、あの人だけ。
「断る。」
その一言を述べた後、後悔するとは思っていなかった。
まさかの能力発動からの無断連行とは、想像してなかったです。
はい。
ルーキー、怖い。
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