ドリーム小説






花嫁修業 興味

















ただ、不思議に思っていた。

白髭の船に乗っていることは、それだけで庇護されている、ということで。

強いけれど、どこか抜けたこの少女を船から離れさせた真意が、なんだったのかと。


この少女を動かしたのは、何だったのかと。


修行、だとこいつは言った。

ゆるり、口元にかすかな笑みを浮かべて。


大事な家族の役に立つために、と。


嘘も偽りも感じられない言葉達。


こいつは、何一つ嘘を語ることはなく。

料理を生み出す腕で、相手の息の根を止める。

笑うそばから、陰を宿す。



矛盾で満ちたこいつの、その先が、みたい。



そして、こいつは、は、笑った。


「愛しい人に、認めてもらうために。」

先ほどまでの慈愛に満ちた、優しい表情ではなく。

ただただ、愛しい人を思う、艶やかな表情で。


もっといい女になれば、相手してやる、など、なんて自分本位な相手。

でも、それがいいのだと、女は笑う。



「俺なら、今のままのおまえでいいと言ってやるが?」

興味本位で向けた言葉。


そうすれば、きょとりと一瞬だけ瞳を瞬かせて、そうしてこいつは笑った。


「”これから”がんばる私をみてくれない男なんかに、私はもったいないですよ。」


今までみたどの表情よりも海賊らしく強欲に。

今までみたどんな女よりも女らしく魅力的に。




ああ、これが、ほしい。



じわり浮かんだ感情は、偽りではなく。


手を伸ばし、その無防備な頬にふれる。


俺の行動をただ、みているだけの少女は、先を促すようにつぶらな瞳をこちらに向けて。





「いつか、その瞳を俺に向けさせてやるよ。」


俺が愛しいと、全力で叫ばせてやる。



「そんなときがくることは一生ないでしょうね。私の愛しい蒼い人に勝てる人なんて、どこにもいやしないもの。」


その言葉で、女が想う男がわかってしまった。



だからといって、それがあきらめる要素になるはずはなく。


「楽しみにしておけ。」


くつり、笑みをかみ殺して、頬に当てていた手を、髪にやる。

するり、陸の女よりも痛んだ髪にふれて、一つ、そこに唇をおとす。

彼女の目を見つめながらしたそれに、かすかに動揺するのを見て取って。

にやり、笑って見せた。
















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