ドリーム小説
「大事な人たちなんです。手、ださないでもらえますか?」
降り立った陸地。
治安はあまりよくないと話には聞いていた。
それでも物資の補給はしなければいけないわけで。
ナースのお姉さんたちと一緒に買い出し。
いつもであればだれかしら隊長各が護衛につくのだけれど、ナースさんたちが入り用のものはちょっと男性にはお願いしにくい、ということで。
護衛兼、役に立たない荷物持ち、といったところか。
ついでに自分の物も買おうかとナースさん達から少しだけ別行動をして。
待ち合わせの場所へと向かうと、案の定、絡まれてた。
「さわらないでください。」
穏やかに返してみせるけれど、瞳にはかすかに涙を浮かべて。
「待ち合わせしてるんです!!」
噛みつくような言い方だって、相手をさらにあおるだけ。
捕まれた腕が痛そうだ。
「ごめん、遅くなっちゃいました。」
そっと彼らの間に入って、笑う。
ナースたちに向かって穏やかにほほえんでみせる。
「!」
泣きそうな声。
ああ、ごめん。
もっとはやく気づけばよかったね。
後ろからの怒声に一つ、ため息。
そして、ゆるり、振り向いて告げる。
「大事な人たちなんです。手、ださないでもらえますか?」
そうすればもちろん相手は逆上するわけで。
目つきが悪い。
結構怖いけれど、お姉さんを守らなければ。
身長はこっちのほうがでかい。
体格は向こうの方がいい。
それでも、負けなくは、ない。
捕まれた胸ぐらをひねってはずして、すぐさま逆につかみなおして。
一人、二人、地面に落とす。
でも、基本的に私の戦い方は複数人相手にするには不利で。
優しくお姉さんたちを外へと押しやる。
「先に家に戻っててください。」
そうすれば、彼女たちは素早く動いてくれて。
誰かよんできてくれるとうれしいなあ。
と、思いながら、あっさり、頭を殴られて意識を失った。
「馬鹿!!」
気づいたらベッドの上。
周りには怒った顔のお姉さんたち。
ぽろぽろと、きれいな瞳には滴があふれて。
ごめんなさい、ごめんなさい
言葉で告げようとするけれど、大事なお姉さんたちを傷つけてしまったのが、苦しくて、申し訳なくて、口からでてこない。
代わりにそっと手を伸ばして、そのふわふわの髪に触れて、そおっとなでる。
そうすれば、さらにお姉さんたちの瞳は潤むわけで。
こつり、頭に衝撃。
そちらを向けば不機嫌そうな隊長の姿。
「大事な家族を心配させるんじゃないよい。」
言葉は雑だけれど、それがこの人の優しさだって、知ってもいるから。
「・・・ごめんなさい」
ようやっと口からでた言葉は力無く、弱々しい。
それでも彼女たちに安心をもたらしてくれて。
「馬鹿。あなたが私たちに傷ついてほしくないように、私たちだってあなたに傷ついてほしくなんて、ないのよ。」
ぎゅう、と柔らかなその体にすがりつくように抱きついた。
夜が訪れた医務室
ベッドで眠るのはかすかに顔を腫らした。
幾人かのナースと何人かの隊長の姿。
ナースたちは慈しむようにの頬をなでていて。
「は強いのか?」
不意に部屋に落とされた末っ子の言葉。
それに対して兄たちは正確な答えを持っていなくて。
「・・・弱くはねえよい」
ため息とともに落とされた言葉。
弱さを否定する、それでいて強さを肯定はしない言葉。
「つまり?」
先を促す四番隊隊長。
「__は人間の急所を熟知しているわ。」
答えたのは沈黙を守り続けていたナースたち。
「強いか弱いかで問われれば、強いわよ。・・・でも」
ゆるり、ナースの一人がまっすぐにサッチを見つめた。
「大人数には、勝てない。」
ささやくような声で落とされた言葉、それはナースたちの心を現すようにはかなく。
横たわるの頬。
腫れた理由も原因も、ナースたちが一番よくわかっていて。
「それでも、」
「こうなるってわかってても、あのときの私たちにはこれ以外の選択肢を選ばなかったわ。」
ベッドで静かに眠るを眺めながら、一人のナースは呟いた。
「だって、私たちがあの場所に残っても足手まといにしかならない。」
悔しそうに、手を握りしめて。
「を守りたいという想いはみんなもってるけれども。」
切なそうにほほえんで。
「私たちじゃ力不足だもの。」
「そんな私たちができることは一つ。」
「この子の願いを守ること、よ。」
そう告げたナースの瞳は、母のようにやさしかった。
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