ドリーム小説



























たまっていた書類作業を終えて、一人、台所でいれたコーヒーを飲む。

誰もいない深夜のこの時間、くつろげるひととき。

香りを楽しみながらまた一口、口に入れて。


ゆるり、現れた気配。

慣れ親しんだそれに目を向けることはなく。


「なあ、マルコ。」


呼ばれたそれに、ようやっとちらり、そちらを向く。

そこにはシャワーの後だろう。

自慢のリーゼントをあっさりとおろしたままのサッチがいて。

「珍しいねい。」

おまえがこの時間にこんなところにいるなんて。

先ほどお持ち帰りしたナースはどうしたんだ。

いわなくても伝わったのだろう。

その言葉たちに苦笑が返されて。

「先約が、ベッドの中にいたんだよ。」

こぽこぽと、コーヒーを作りながらサッチは答えた。

「先約?」

先を促せば相変わらず困ったような顔が返される。


「んー、・・・マルコ、知ってるか?」

なにをだ?

「ひょろっとした長髪黒髪の男。」

その言葉に頭に浮かんだのは、一人の姿。


小さな時からこの船に乗っている、知られていない、秘蔵の子。

愛することにも愛されることにも不器用な、少女。

図体ばかりがでかくなったあいつは、ナースたちを必死で守ろうとしていて。


しかしながら、男では、ない。


さらに情報を促せば、いいあぐねるようにサッチが視線をさまよわせた。


「・・・ナースが言うには、親父の次にナースたちが愛してる相手、だってよ。」




ああ、やっぱり。

曖昧だった姿が、明確に頭によみがえる。

不器用な笑みを浮かべるあいつが。

珍しい。

ナースや親父、ドクターたちの前以外でほとんど姿を現さないあいつが、サッチと会ったのか。

否、サッチの言い方からすれば、寝ていたところを見られた、という感じなのだろう。



「あきらめろい、サッチ。」

俺の言葉にサッチが怪訝そうな表情を浮かべる。

「ナースたちは親父の次にあいつを、優先するよい」


「知ってるのか?」


ちらり、サッチを見れば、目がきらきらと輝いている。

興味があるにもほどがあるだろい。



「ナースたちの秘蔵っ子、だよい。」




俺の言葉にサッチはそれはそれは楽しそうに笑った。


















戻る