ドリーム小説
この間、とある島で遭難している人を、船に乗せた。
凜、とした、とてもとてもきれいなお姉さん。
瞳に悲しみとやるせなさと、たくさんの後悔を潜ませた彼女は、誰に心を許すこともないのだろう。
でも、言わなきゃいけない。
伝えなきゃいけない。
倉庫の暗がり。
一人の船員にしなだれかかるのは、あのお姉さん。
金色の、太陽の色を宿した髪をふわあり、揺らして。
あきらめたような瞳で、とてもとてもきれいに笑う。
だから、とめた。
船員さんの足を払って、とある急所をたたきつけて。
あっさり地面に落ちた船員さんをそのままに、お姉さんに、告げる。
「だめ、だよ。」
「何よ、あんた。」
間髪入れず、鋭い声。
それに思わず笑みが漏れる。
お姉さんの表情はさらに厳しくなって。
「お姉さんは、お客様。」
ここにいることに、確かに対価は必要だけど、それは、そういうことじゃなくていい。
「お姉さんが望むんだったら、止めないけれど。」
でも、そんな悲しそうな瞳なら、止めるよ。
「あんたに何がわかるのよ。」
静かな声、でも、込められる怒りは強くて。
「なんにも、わかんないよ。」
大事に、大事にこの場所で甘やかされて育った私には、何にもわかんない。
「お姉さんが、あの場所に一人置き去りにされていた理由も」
「お姉さんが、今までしてきたことも」
「お姉さんが、この場所からおろされるのを怖がる理由も」
お姉さんの手が、私の頬に落ちる。
乾いた音とともに、私の頬に走る熱。
そっと、その柔らかな手をつかむ。
白魚のような手ではない。
傷が多くてささくれだった、手。
体にも、たくさんの傷がある。
お姉さんが、必死で生きてきた、証。
でも、でもね、私にもいえることは、ある。
「私は、お姉さんに会えてうれしい。」
一つ歯車が狂えばきっと会うことはなかった。
知ることはなかった、この人を。
この人と会わなかった未来でも、私はきっと変わらずに生きているのだろう。
それでも、この人と会えた今、私は確かに何かを得た。
お姉さん、気がついて。
周りの優しい視線に、気がついて。
ここには、あなたを傷つける人たちばっかりじゃない。
あなたを、みんながちゃんとみてるから。
「ねえ、お姉さん、笑って?」
私の言葉にお姉さんは、くしゃりと顔をゆがめて涙を流した。
「お姉さん、きれいなんだから、選り好みしてもいいんだよ。」
「相手に選ばれるんじゃなくて、自分で選んでいいんだよ。」
なきやんだお姉さんにそういえば、お姉さんはとてもとてもきれいに笑っていった。
「じゃあ、あなたがいいわ。」
お、女なんですが・・・。
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