ドリーム小説














「 どうして 」


つぶやいたはずの声は、誰に拾われることもなく。

重たい空気の中に、ごとり、音を立てて沈んでいく。


_そこは私の場所だったのに。_


言いたかった言葉は、彼らからの視線を受けた瞬間、淡くのどの奥ではじけて消える。





盲目的までに、私は彼らを信じていた。

突然現れた私を、疑いながらも受け入れてくれて。

弱い、何もできない私をいつだって守ってくれていた。

仲間という存在を何よりも大事にしていた彼らだから。


だから、ずっと探してくれていると思っていたんだ。


戦闘の時に、誰にも気づかれず船から落ちてしまった私を。


彼らに、見つけてもらえるまで、私は生きなきゃってがんばってきたんだ。




たとえ彼らの敵である海軍の制服を身にまとっていたとしても。






引きこもりの私の腕を引っ張っていろんなところにつれていってくれた船長さん

ため息をつきながらもトレーニングにつきあってくれた剣士さん

いろんなものを作って私を楽しませてくれた狙撃手さん

落ち込む私を慰めるようにすてきなお料理を出してくれたコックさん

女の子の友達ができてうれしいと、恥ずかしそうに笑った航海士さん

私の話を目をきらきらさせながら聞いてくれた船医さん

穏やかな声でいろんなことを教えてくれた考古学者さん




ねえ、あなたたちの後ろにいる女の子は、だあれ?


くるくるの甘い色の髪。

大きな瞳は幾度となく瞬かれて。

守られるように、たっている彼女。


「どうしたの?みんな。」


発せられる声だって、とてもきれい。



・・・」


船長さんの声が、響く。

そこに含まれる驚愕に気づけないほど子供じゃなくて。


「知ってる人?」


ふわり、彼女が首を傾げれば、甘い甘い香りが漂う。


「あ、もしかして、いなくなっちゃった、っていう女の子?」


シン、とした空気の中、彼女の声だけが響く。



「ルフィ、」

、海軍だったのか・・・?」


船長さんの名前を呼んで、話をしようとすれば、遮るように言葉が発せられて。


「俺たちを、だましてたのか・・・?」


狙撃手さんの言葉に続いて、船医さんの言葉。

呆然と、その言葉がよく似合う。


そんなことない、そう続けようとしたのに。

それはあっさり遮られる。


「・・・ルフィくんたち、だまされてたの?その女の子に?」


あなたが口を出さないで。

私の場所をとった、あなたが、言葉を発さないで。


き、っとその瞳をにらみ付ければ、かすかに彼女はおびえて。

でも気丈に睨み返してきて。


そっと、その視線を遮るようにゾロが体勢を変える。


どちらを守ったのか。

それは一目瞭然で。


「全部、嘘だったのかい・・・?」


コックさんのつぶやき。

違う。

そうじゃないの。



「違うっ」


叫んだ言葉は、もうすでに遅い。

気づいてしまった。

気がついて、しまった。


彼らの瞳に写る色に。

信じられないという驚愕

だましていたのかという怒り

うそつきと、糾弾するかのような、視線の数々。



「ちがう、違う!私はっ、」


「私たちの船に乗ったのは、海軍の仕事としてだったの?」



疑問のはずの航海士さんの言葉。


理解してしまった。



彼らが、もう、私の言葉を何一つ信じてくれないと言うことを。



「あのときの襲撃は、おまえが逃げるためだったんだな。」

船長さんが笑う。

今まで見たことがないくらいつらそうに。

違うの、そんな顔をさせたかったんじゃないの。

いつもまぶしいくらいに笑う、船長さんの、そんな顔、見たくないのに。



「下がってろ、桜。」



優しい、花の名前。


私の故郷を象徴する名前。


それは、きっと、彼女のもの。





ぴい、と、後ろの方で聞こえてきた音。


それは、警報。


海賊を見つけたと、海軍が知らせるための音。


私がならした訳じゃない。


私が知らせたわけじゃない。




でも、そんな事実、きっと彼らには必要ない。





彼らは私がスパイとして潜り込んだと錯覚して。

これから来る海軍を私が呼んだと信じていて。



私がいたはずの場所には別の子が入り込んでいて。

私がいたはずの場所はもうどこにも残ってなくて。





嫌いになれたら楽だったのに。


残念ながら、私はみんなが大好きで。



「はやく、行って。」


笑って彼らに声をかける。

海軍に出会ってしまえば戦闘が始まる。

私が戦わないわけには行かなくなる。



だから、いまなら、間に合うから。





去っていく背中をただただ見送る。

彼らに会うためだけに生きた私は、もういなくなった。

後ろから走ってくる海兵たち。


私にとって、彼らは敵ではなくて。


この世界に放り出された私に居場所をくれたのは、麦藁の海賊マーク。

優しい日溜まりのような場所。

でも、それはもう、過去の場所。


、海賊たちはこっちにきたのか?!」


海に落ちた私を助けてくれたのは、カモメをかたどる海兵さん。

帰り方がわからないとつぶやいた私に、それまでは、と共にあることを許してくれた。

あの場所に帰るまでは、と仮宿にしたのがいけなかったのか。



求めていた場所に、戻るすべを私はなくした。



、」


私を呼ぶ声。

彼らではなく、正義を貫く強い人たち。


「ごめんなさい。こっちでは見ていないです。」


嘘をつくことには、未だになれない。


それでも、もう、慣れていくしかないのだろう。



大好きだった彼らを憎むふりをして

彼らの敵になってしまったことをなんでもないふりをして



もしも、彼らに、この組織が害をなすことがあるならば、

そのとき、私が何かをできるように。




「・・・正式に、海軍にいれてくださいませんか?」






上り詰められるところまで、やってみようじゃないか。







生きる意味を見失って、

    そうして新たに意味を得る


















トリップ→麦船に拾われる→海軍との戦闘で船から落ちる→海軍に拾われる。
→あいたいから生きるために海軍に所属→再会→勘違い。

この後海軍でなんだかんだ出世。
結果として頂上決戦くらいで再会。
ルフィの兄なら。とエースを助けようとして死亡というルートをたどると思われる。


















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