ドリーム小説
15 戦闘態勢整いました
女だとばれてからも前と変わらずイゾウの部屋で。
といっても彼ははじめから自分のことを女だとわかっていた上で接してくれていた。
まあ女性にベッド以外で寝かせるわけにはいかない、しかしながら部屋の主である自分がベッド以外で寝る必要性を感じないと言う彼の不思議な理屈により毎夜毎夜同じベッドで睡眠をとっていたのだが。
だがまあ彼は自分のことを完全に妹扱い、自分もイゾウは亡くなった兄をおもいだすものだったからなにかあると言うことはないのだが。
変わったのは周りの態度。
しぶしぶではあれど訓練は全力で挑んでくれていたのに。
傷つけるのが怖いとか、今更すぎる。
ちなみに髪を切った隊員は全力で土下座してくれた。
べつにもう気にしてないと言ったのに去っていくその後ろ姿は哀愁漂っていて。
愛といることによって向けられていた敵意や嫉妬に近い視線は、なんというか、なんともいえないようなものに変わって。
ナースさんたちはなんだかこちらをじいっと見てくるし。
エースのスキンシップは激しくなって、サッチがご飯に何か着けてくれることが増えた。
なんというか、今まで道理でかまわなかったのに。
そして、決定的に変化したのは___
「敵襲!!」
響いた声。
この四皇である白髭が乗る船に敵襲をかけるのはそうそう多くはない。
だが零ではなくて。
自分が乗ってから今回で二回目だ。
それは粋がったルーキーが相手で、それほど苦戦などすることもなく。
自分も戦場にたつのを許されていた。
だというのに
「、お前もナースたちと一緒に親父のところにいろ!!」
非戦闘員が集められるそこに放り込まれて。
今現在乗せてもらっている身であることは間違いなく。
彼らの言葉に逆らうつもりもない。
それでも、今まで共に戦うことを許されていたそれが、変化するのはやるせなくて。
集められた船長の部屋。
ナースなどの非戦闘員が待機するそこにはあの子の姿もあって。
「ちゃん」
ぎゅう、と服を握られて頼るように名前を呼ばれればそれに答えずにいることなんて、できない。
上から聞こえてくる声に音に、震えるその姿は記憶の中と変わらず、守るべき存在だと示していて。
「安心しろ。息子たちは強い。万が一ここにたどり着いたところで俺がいるだろうが。」
ぐららら、と地面が震えるほどの笑い声。
それは絶対的な安心感をくれて。
それにナースたちはふわりと笑う。
だから、がたん、扉の向こうで響いた音にぞくりとした感情を抱いたのは自分一人だっだろう。
とっさに彼女たちを背にして低く構える。
懐に、腰に指したままの小刀に手を添えて。
小さくひねられていく扉の取っ手。
「船長さん。ここをお願いいたします。」
告げて足を踏み出して。
開いたそこに刃を突き立てた。
想像していたとおり、そこにはこの船の船員ではない存在。
身にまとうのは違う証。
手にもつのは人を殺めるためのもの。
えぐりとるように突き立てたそれを蹴りあげて、部屋の外へと吹っ飛ばす。
自分自身も部屋から出て今までいた空間と遮断する。
ぎらり、向けられる視線ににらみ返して。
向かってくる刃に銃口に意識をやって。
ただ、守るためと大義名分を掲げて刃をふるう。
傷一つつかずに、そんな器用なことは不可能で。
あがった息を整えながら体中に散らばる鈍い痛みをそのままにぐるり、周りを見渡して。
「。」
呼ばれた名前。
自分の名前。
ゆっくりとそちらを見ればきれいなきれいな、あお。
ふわり、触れる温もりは熱くはなくて。
ゆるり、優しく手を解されれば握りしめて固まっていた拳は簡単にゆるんで。
「守ってくれて、ありがとうよい。」
以前も聞いたそれに、ぎゅう、と胸が痛くてたまらなくなった。
でも、その後に告げられたそれに痛いよりもなによりも泣きたくてしかたがなくなった
「守れなくて悪かったよい」
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