ドリーム小説













16 存在意義は失われました











守ってほしい訳じゃない。

ずっと守ってきたから、守られる存在になりたかったんじゃないの。


ただ、あなたがいてよかったって、一度でいいからそういってほしかっただけで。


その理由づくりのために、あの子を利用していただけだから。

あの子を存在意義にして、そうやってどうにかして生きてきただけなの。





戦利品を掲げて宴を開くその自由な姿にあこがれて。

どんなに頑張っても自分がそこに存在し得ないことに泣きたくなって。

そんな中であの子がふわふわ笑っていてくれることは、うれしくて悲しい。


もう自分がいなくてもいいのだとそう実感させられて。


それでも、愛しい、そう思えて。





「どうしたよい。」


愛たちから距離をとって、一人空を見上げて酒を口にしていれば横から聞こえてきた声。


ふわり、香るのは目の前の海よりも濃い、潮のにおい。


ゆるりとそちらに目をやれば青い色がこちらをじいっと見ていて、眠たげなその目が、ふわりとゆるんだ。






小さく胸が音を立てた気がした。




「あの子のところにいなくてもいいんですか?」


もう一つ酒を口に運んで問えば、横で同じように飲む姿。


「たまにはゆっくりと飲みたいよい。」


それに少しだけ笑えばくしゃり、頭に乗せられる手。

めったにされないそれにびっくりして顔を見上げればこちらに向けられることのない視線。


「なあ、。」


驚きを隠しながら問えばぐっと顔を俯けさせられて。


「・・・なんでしょうか。」


「俺らとしてはお前がこのまま乗ってくれても構わねえよい。」



受け入れてやると、その言葉。

でも、それはきっとあの子がいるから。



私を必要として、ではない。


ぎゅっと手を握り締めて首を振る。



「・・・ありがとうございます」



うなずくことはしない。

ただ一つうなずいて。



うつむかされたままそっとひかれた手。

手に持っていたお酒が下に落ちる。

ぎゅう、とやさしく抱きしめられて、なだめるように背を撫でられる。



「すまないよい。」



小さなその言葉は何に対してなのか。



「お前の大事な家族を、俺らがとっちまって。」


ああ、そんなことはない、その言葉は口の中で小さく消えて。


「あの子が、いたから、私は、生きれて、」


代わりにこぼれたのは、まるで弱音のようなもの。


「だから、あの子を、私の代わりに守ってくれる、そんな人ができちゃったら、」





「もう、私はいらないの?」





ただそのぬくもりに縋り付いた。
















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