ドリーム小説
17 お兄ちゃんと呼ぶ権利はないけれど
あと数日で島に着く。
そう教えてくれたのはイゾウ。
それに何も言わずにうなずいて今日の仕事に励む。
あと数日で、この場所から出ていける。
逃げることができるんだと、感じた。
「ちゃん」
笑って名前を呼ぶ。
あと数日すぎればこれを見ることができなくなる。
それはとても悲しいことのようで、とてもうれしいことのようで。
「一緒にお買いものしようね」
ふわふわと楽しそうに私の手を握って笑う。
それに答えずに笑って見せた。
「やっぱり、船を降りるのか?」
明日には船が着く。
そう聞いたため寝起きしていたイゾウの部屋にて簡単に荷物をまとめて。
そうしていれば後ろから聞こえてきた声。
ゆるり、視線を向ければこの部屋の主であるイゾウの姿。
小さく笑って返せばため息を返されて。
「俺としてはぜひともお前に家族として一緒にいてほしいんだがな。」
そっと手をとられて、そのまま引き寄せられて。
「ここの皆さんは、とてもやさしいですね。」
ぽんぽん、ってずっと前兄にされたみたいにやさしく背中を撫でられる。
「ん?」
先を促すようなそれに笑う。
「ここにいればいいって、マルコさんにも言われました」
そういえば、ぴたり、撫でる手が止まって。
「イゾウさん?」
見上げればくつくつとなぜか笑っていて
「そうか、マルコが、ね。」
それはそれは楽しそうに、面白そうに。
「なら、あいつに期待でもしておこうかねえ。」
小さくつぶやかれたそれは聞き取れず。
ごまかすようにぎゅうぎゅうと抱きしめられて、思わず笑った。
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