ドリーム小説














19 引き留める腕は暖かく















がらん、と蹴り倒された椅子。

ひかれた体。

気が付けば目の前には背の高い背中。

特徴的な金色の髪。


気だるげな口調は船の上と変わらないもので。




「不死鳥マルコ、ね。」


椅子に座ったままのクザンがぽつりと漏らしたそれ。



「海軍大将さまがこんなとこでなにしてるんだよい。」


ぐっと回された腕の力が強くなる。

が、それよりも気になるのは海軍大将という言葉。

確かそれは海軍に三人しかいない存在のはずで。


「ただの散歩だよ。」


「散歩、ねえ。」


交わされる会話をよそにめぐらす考え。

自分は海軍に誘われていたということで。

気づかぬうちにあの子の敵となる存在になるかもしれなかったということにぞくりとした。



「でも、ま、」


ゆるり、気だるげに立ち上がってクザンはひやりとした何かをまとわせて。



「見つけたならば相手をしないわけにはいかないでしょうが。」


そのままこちらにも視線を向けて。


ちゃんも、一緒に連れて行く予定だからね。」


向けられたその瞳は今までのやさしいものではなく。


氷のように鋭いもので。


ぞくりと震えた背。

それをなだめるように腕は強まって。



回っていた腕がふわり、感覚が変わったかと思えば青い色が広がって。


理解するよりも先に音は響いて、気が付いた時には青い色に囲われて店の外に出ていた。


それを追うようにひやりとした冷気が広がって。

しかしながらそれを引き離すように体は浮き上がり。


すさまじい速さに思わず目を閉じて、次に気が付いた時にはクザンどころか先ほどいた場所が見えなくなっていた







「マルコ、さん。」


青い空に青い鳥とともに飛び上がっていることに気が付いて、思わずその名前を呼ぶ。


ふわり、どこかの木の上に降り立って、そっと青がいつもの色に変わる。



「なあ、。」


そっと頬を撫でられて、柔らかな声色で呼ばれて。



ぐっと近づいた青い瞳の色。


至近距離でまっすぐに見つめられて、呼吸が止まるかと思った。






「存在意義がほしいなら俺にしとけよい」






言葉の意味が理解できず目を見開けば目の前の彼はやさしく、それでいて愉しげに笑む。







「俺はお前が欲しいよい、あいつにやるくらいなら俺にくれ。」





答えなどは必要がないとばかりに言葉ごと呼吸を奪われた。


















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