ドリーム小説











2 海水浴ではありません











「あらま、こんなところで海水浴?」




体に触れる青。

目の前に広がる青。


これが終わりの世界だというのならば、それはなんて美しいのだろうか。


そんなことを思いながらただ流れるままに身を任せていれば聞こえてきた声。

ぱしゃり、水音をたてながらそちらをみれば、自転車。

そのまま視線をあげていけば不思議そうにこちらを見る背の高い人物。

広がる髪は黒く、向けられる視線はどこか鋭くて。

自転車が海の上に存在するという不思議な現象のはずのそれは、しかしながら自分にはもうどうでも良いことで。

「背、高い・・・」

思わず口に出した感想に目を瞬かせた後その人は困ったように笑った。


「乗ってく?」


ちりん、と自転車のベルを鳴らして、その人は自転車の後ろを指さした。

なんとも軽いお言葉だったがここにいてもどうすればいいのか不明だったのであっさりとうなずく。

つかんだその手は、思った以上に暖かくて。

水面が凍っていたから自転車は走行できていたということにそこでようやっと気がつく。

どこからともなく取り出されたタオルで水気をとられて、後ろに乗せられる。

近くで見るとさらに大きい。


「しっかり掴まってな。」


サドルにそっと手をかければそんな言葉をかけられて。
かと思えば腕をくいと引かれて彼の腹に回された。


「とりあえず、近くの島まで行こっか。」


ぐっと目の前の彼の体に力が入ったかと思えば周りの景色は飛ぶように動き出す。

髪を走らせる潮風が、目の前のぬるい体温を発する体が、まるで今までのすべてを遮断するかのように、自分の生を否定した。


死んだ世界の温もりは本当か嘘か、はたまた幻か。
















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