ドリーム小説








5 たとえ相手が何であろうとこの手を放しはしない














「その子おいていってくれるかな。」


泣きつかれて眠りについた愛を背負い自分の取っている宿に向かって足を進めていればたちふさがるように現れた一つの陰。

顔についた傷。

リーゼントと呼ばれる髪型。

発せられる言葉は穏やかなのに、向けられる視線は鋭く。


どう頑張ってもお近づきになりたくはない人種。


「お断りさせていただきます」

さらに鋭くなる瞳に屈せぬようにまっすぐに相手を見据えて。

再び巡り会えた大事な家族をどうして他の人に渡したりできようか。

後ろに背負った愛を起こさぬように一歩足を下げる。

相手がどんな存在であれど、自分にとってようやっと見つけられた「存在意義」を、手放すつもりなどない。



あの世界と同じようにこの子を守る



それが今自分がここにいる意味だから。



自分の実力を見誤るほど考えなしではない。

目の前の人はどう頑張っても今の自分には勝てないであろう。

それでも、勝つ必要などないのだ。



逃げれれば。



ゆるり、踏み出した足で思い切り地面をけりあげた。







どうにか不意を衝いて戻った宿屋。


自分に与えられた部屋に戻って、ゆるり、その体をベッドに横たわらせる。

白い頬に残る涙の筋が痛々しい。

あのころの髪質に比べてあれたそれはこの世界での過酷さを表して。

元々細かったその体はよりいっそう細く今にもおれそうなものに。


一緒にいれなくてごめん

見つけるのが遅くなってごめん。


優しく頬を撫でてシーツを掛けて。



そうしてこの子の眠るベッドを背に立ち上がる。




「この子を渡すつもりはありません。どうぞお帰りください。」


窓の縁に座る存在に、出入り口を背にたつ人に、言葉を放つ。


窓のその人はなんというか、こう、大変奇抜な髪型で。

扉を背に立つ人は楽しそうに笑みを浮かべながら懐かしい着物を身にまとっていて。


「その子がお前にとってどんな存在かしらねえが」

「その子を渡すわけにはいけないねえ。」


向けられた銃口、向かってくる足や手


避けるために体を動かしはするけれど、こいつらの目的がわからない今あの子の前からのくわけにはいかなくて。



避けきれないそれにこの子を守るように腕に抱きしめて

体に走った重い重衝撃と、きれいな青い青い炎を最後に




ぷつりと目の前が真っ暗になった。















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