ドリーム小説
7 ここは新たなあの子の居場所
この世界に来て、この場所に落ちて、この人たちに助けられた、この子はそういった。
愛の言葉はどれをとっても信じられないけれど、自分自身も確かに体験したことでもあって。
それならば礼を述べねばと頼んでつれていってもらったのは大きな部屋。
そして、中にいたのはこの世界のことに疎い自分ですらわかる人物。
エドワード・ニューゲート
通称白髭
この広い世界中で大きな意味を持つ海賊の名前。
「愛を、あの子を助けていただき心の底より感謝を申し上げます。」
「ですが、あの子とともにこの船を下りたいと思っております。」
嘘偽りのない言葉ではあった。
それでも、この子を海賊などというところにいさせるわけにはいかなくて。
嫌だ、と声を張り上げる愛を外に出してもらい改めて目の前の人物と向かい合う。
何か思うところがあったのか、白髭は他の人も皆その場所から追い出した。
ぐららら、と地面が大きく揺れるような笑い声をあげて、それはそれは楽しそうにこちらを見る。
「名はなんだ?」
「・・・、」
響く声で問われたそれに震えそうになる体を叱咤して言葉を紡ぐ。
「そうか、、か。お前にとって愛はどんな存在だ?」
「大事なたった一人の家族、守らなきゃいけない大切な子。」
敬語すら忘れて、ただ淡々と口に出す。
「そうか、家族か。」
ふわりと目尻を下げて柔らかな表情。
愛しくて愛しくてどうしようもない、そんな表情。
「」
呼ばれる名前が体に響く。
低く低く、自分の中の醜いものを全部全部さらけ出されるようなそんな錯覚に陥りそうになる。
「愛は俺たちにとっても大事な家族なんだ」
じわり、広がるのは痛みで苦しさで
私にはあの子しかいなくて、あの子にも私しかいない
ずっと思っていたそれはあっさりと打ち砕かれて、
生まれたのはどすぐろいまでの醜い感情。
「なら、あの子にとって私はもう不必要、か。」
言葉に出した瞬間今まで張りつめたものが、きれた
「あの子を、よろしくお願いします。」
笑顔などにはとうていなっていないであろう表情を向けて、目の前の人物から逃げるように扉に向かう。
「どこに行く?」
問われたそれは責めるではなく、ただ純粋な質問で。
だからこそ、素直に返せたのであろう。
「あの子には、もうここがある。ならば私がここにいる必要などはないでしょう?」
見つけた存在意義は一瞬にして崩れさった。
自分がここにいる必要がないのであれば、あの子を代わりに守る存在がたくさんあるのであれば、さっさと姿を消すのが一番いいのだろう。
「今は海の上だ。次の島に着くまでは乗ってればいいだろう。」
海の上。
ああ、だからかすかに地面は揺れているのだろう。
そんなわけはないのに、逃げ道をふさがれたようなそんな感覚に陥る。
「俺の大事な娘の大事な存在ならば、いつまで乗ってくれてもかまわねえがな。」
聞こえてきたそれをあえて聞かぬふりをして頭を下げる。
「船長さん。次の島までお世話になります。」
はやく次の島に着くことをただ願って。
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