ドリーム小説
8 笑って付く嘘ほど悲しいものはない
宴と名の付くそれはどうやら自分の歓迎会に似たものらしい。
とはいってもただのみたいだけのような、そんな様子も見れるが。
周りから向けられる視線はほとんどがマイナス感情。
それでも少しの我慢だと自分に言い聞かす。
「ちゃん」
ぎゅうぎゅうとしがみついてくるその柔らかな子。
ぽんぽんと背をなだめるようにすればさらにその力は強くなる。
「どこにも行かないよね?」
必死で縋り付くそれは、もう二度と離れたくないという意思表示。
昼にこの子に告げた言葉が原因だろう。
離れないよ、そばにいると、表面だけで笑って返す。
「愛!こっちで一緒にのもうぜ!」
遠くから聞こえてきたそれにどうしようかと迷う子の背中をそっと押し出して、自分の目の前にある酒に口を付ける。
「悪い子だね」
ゆるり、穏やかな艶やかな声。
ぞくりと震えた体を隠して声の方向を見れば、着物を身にまとう男の姿。
それはあの宿屋にいたもので。
「島に着いたら船を降りるんだろう?」
すべてを見透かすような瞳にいたたまれない気分になりそっと目をそらす。
「あの子にはほかに家族ができたので。」
ぐっと自分でそそいだ酒を一気に飲み干す。
「そうか。」
責めるでもなく咎めるでもなく。
ただの相槌。
それにささくれ立っていた気持ちが少しだけ落ち着く。
「・・・着物。」
外していた視線を戻してその色鮮やかな装いに目をやる。
懐かしいそれに目を眇めてぽつり呟けば目の前のその男はつややかに笑う。
「愛も言っていたな。この装いが懐かしい、と。」
まるで子供をあやすかのように伸ばされた手。
触れてもいいよというかのように目の前に出された着物にそっと触れる。
懐かしい、遠い過去のことのようになってしまったそれをやらかく撫でて。
「16番隊隊長のイゾウだ。よしなに」
「、です。よろしくお願いします。」
クツリ、喉の奥で笑うのはこの人の癖なのか。
いまだに触れたままの着物を怒ることなく。
「、お前さん皆に男だと、そう思われているよ。」
初めに感じた鋭い視線はそのせいだったのか、少々酔った頭で考える。
「一人で女だと思われるといいことがありませんでしたので。」
別に隠しているわけではない、ただ女に見えないような恰好はしているが。
「それよりもひとつお願いがあるのですが。」
「ん?」
ゆるりお猪口を傾けて酒を飲むその姿は大変色っぽい。
それにちょっと性別間違えて生まれてきたんじゃないかと思いながらも言葉を続ける
「この船に乗っている間の仕事をいただけますか。」
ただ乗っているだけ、というのは大変心苦しい、というか借りを作りたくはない。
「ああ、それならマルコに聞いたほうがいい。」
「俺がなんだよい。」
イゾウの言葉にこたえるように後ろから声が聞こえた。
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