ドリーム小説



















9 触れるたびに浮き彫りになるのは自分の醜さ















「自分でやれると思う仕事を見つけりゃいいよい。」



まあ見事に突き放すようなものではあったけれど、それはつまり自由に動けばいいとの許可だと自分で判断して。



「ああ、ついでに寝るところは大部屋だ。場所は後で案内させる。」

「!?・・・マルコ。」


それにうなずこうとした瞬間そばで静かに酒を傾けていたイゾウがむせた。


「なんだい、イゾウ。なんか問題でもあるのかい?」

けほけほと咳を繰り返すイゾウの背を撫でてやりながら落ち着くのを待つ。

「っ、愛と同じ部屋でいいんじゃないのか・・・?」


ようやっと落ち着いたのか私に礼を言いながら言葉を紡ぐ。

「あいつの部屋は結構狭いんだよい。二人は無理だ。」

それに対してマルコはあっさりと返事を返して。


イゾウにちらりと視線を向けられたがなぜ彼がこうなったのか意味が分かっていないためなんとも返せない。


「あー・・・、俺の部屋で寝起きしろ。」


「へ?」

「はあ?」


まあ反論をする暇もなくそれは決定してしまったのだが。




イゾウと会話をしながら酒を傾けていればひょい、と目の前に出された色とりどりの料理。


「食べてるか?」


何事かと顔を見ればそこにはリーゼント。


一度見たら忘れることなどできないそれ。


どうして忘れることなどできようか。


思わず固まった私ににかり、まぶしいまでの笑みを返してくれたのはあの時あの子を背負って逃げていた相手。


「あの時は悪かったな。人さらいに連れて行かれたかと思っていたから。」


結果的にはうまく逃げおおせたため大きなけがなどはしなかったが、結局自分はあの子を傷つけるものと傷つけないものの見分けすらつけられずに無駄に逃げ回っていただけで。

そう実感した瞬間ぐつりと胸の中からやるせない感情があふれそうになった。


「甘いもの、好き?」


うつむいてしまった私にやさしい声がかけられる。

小さくうなずけば笑う声。

「じゃ、これ。」

差し出されたのはパフェのようなもの。


「俺が作ったんだ。食べてくれるとうれしいな。」

やさしい言葉に、口に入れたその甘さに、ぎゅう、と心臓が痛くなった。


「俺はサッチ。君___」

「なあお前!」


言葉を続けようとしたサッチを遮ったのはオレンジ色のテンガロンハット。


きらきらとした瞳が印象的な黒髪そばかす少年。

「エース、」

咎めるように声を上げたサッチをそのままにずい、と距離を詰められて。


「愛を泣かしたら怒るからな!」


その口から出たのはそんな言葉。



ここでも、あの子が愛されていたことがわかる言葉。


「おいエース!」

「っ!?」


サッチの痛そうなこぶしがエースへと落とされる。


それに悶絶するエースを思わず凝視していれば困ったようなサッチの笑顔。

「初めは自己紹介だろう、エース。」

それにあわてたようにピシリ、体制を整えて、とてもとてもまぶしい笑顔で彼は言った。


「俺はエース!よろしくな!」




それはまるでこちらの醜さを際立たせるような





















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