ドリーム小説
















疑似恋愛
























ロー。

それはどうかと思うんだ。

そう思いながらも口には出せない私はどんなにバカなのだろうか。

目の前、私が見えているのをわかっているだろうその位置で。

他の女の手を取り、腰にふれて、いかにも今かららぶらぶします、そんな状態で。


私を、何だと思ってるんだ。

ロー。

確かに私はあなたが好きで、あなたが、大好きで。

あなたは私を好きだと一度も言ったことはない。

私とつきあってくれている、その理由すらわからない。


それでも、私はあなたの彼女でしょう?

まだ、おつきあい、してるんでしょう?


なら、どうして?


私の視線に気がつきながら、私と視線を合わせながら、どうしてその女ときす、するの?



それならもういっそ、お願い、嫌いって言ってくれた方が、幸せなのに


とてもとても、すてきで、かっこうよくて、それでいて


とてもとても


ひどいひと







私が蒼に見入られたって、知らないんだから。

















俺が一番好きな彼女の表情は、嫉妬している顔で。

その表情をみたのはたまたまだった。

俺が他の女と話しているのを見た、その表情が、俺のすべてを掻き立てた。

俺にしては珍しくまだ清い関係。

それは同時に欲求がたまるわけで。

それでも、彼女のペースにあわせるつもり、だった。


だというのに、見てしまったから。


いつもは穏やかな、ふわりとした表情を浮かべる彼女が、その瞳を嫉妬という名の炎に変えて。

今にも相手を殺さんばかりの表情を浮かべた。



ひどい高揚感。



違う女と唇をあわせながら、視線ではあいつを射ぬく。

ああ、その表情だけでイケル自信があるくらいに。

その表情を浮かべながら俺に犯されればいいのにとか、そんなことを思うくらいに。


愛しい


俺のものだと、そう主張し続けながら、

決して手を出すことはせずに。


滑稽だと?

なんとでもいえばいい。


あいつのあの表情が見れるうちは、俺はこのやり方を貫くだろう。




もちろんあいつが離れそうになるたびにやさしく甘く、真綿でくるむように愛してやる。











だから、決して手放すつもりはねえ。






あいつの後ろ、愉しげに、愉快げに、こっちを見てくる蒼い鳥。

あいつは俺のだ。

おまえになんか、やりはしねえ。













釣った魚に餌をやらねえ、ということではなく。

持て余す熱を、他人で発散しなければ、彼女を壊してしまうのだと。

無意識の中、奴は理解していて。






だが、それは俺にとってはただの隙だ。




「ほら、あんま見るんじゃねえよい。」


俺よりもずっと小さな背丈の彼女。

そっとあいつを見る瞳を俺の掌でかくして。


「あんな奴、やめとけよい。」


耳元で吐息を贈るように囁けば、小さく彼女は身を震わせて。

ああ、ほら、もうこちらに傾いてきているだろう。


「お前みたいないい女、あいつにはもったいねえ」


掌に感じる湿った感覚をそっと無視しながら、もう片方の腕で、こいつを拘束する。


柔らかな体。

鼻腔をくすぐる甘い匂い




ああ、喰いたい。




その衝動を隠すように、そっと反転させた体をすっぽりと俺の体で包みこんで。




囁く言葉は決めている。






「俺じゃ、だめかい?」




ほら、さっさと俺に落ちて来いよい。














びくりと震えたからだ


ひしひしと感じる視線




ああ、すべてがすべて、面白いもんだ。

















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