ドリーム小説
「ゾロさん、お話があります。」
正座をしながらぺしぺしと自分の前の座布団を叩く。
こっちに来て一緒に座ってください、その意思表示はちらりとこちらに目線をやっただけであっけなく砕かれる。
彼の手には相変わらずのダンベル。
汗が噴き出す肉体美はほれぼれするほどすばらしいもので。
「・・・ゾロさん。」
もうそのままでいいや。
ちっとも動いてくれない彼の代わりに自分がそちらに近づいて。
「ええと、ですね、ゾロさん。」
少しだけ緊張しながら言葉を紡ぐ。
「先日から、お、おつきあい、というものを、させていただいているわけですが・・・」
告白、というのをされたのは初めてで、しかもそれが想い人、であるならば受けないわけがなくて。
こちらこそ、よろしくお願いします。
そう告げたのは記憶に新しい。
彼氏ができるのも初めてで、おつきあいしだしてから、何が変わるのか、どきどきしながらずっと過ごしていたのに。
「お、おつきあいって、普通、こんな感じ、なんでしょうか・・・ね?」
手をつなぐことも、一緒にどこかに出かけることもなく。
この人は、私に何をするでもなく。
おつきあいするのがはじめてであろうと、なんだか、これは、普通じゃないんじゃないだろうか、と思わなくもなくて。
今日だって、家に来るかと誘われたからすごく緊張していたというのに。
彼は自分の部屋で何を話すこともなく、ダンベルでトレーニングをしだすわけで。
「私たち、本当に、おつきあい、してる、んです、か・・・?」
勢いよく話だしはしたけれど、どんどん言葉は小さくなっていく。
面倒だ、とか、うっとうしい、とか、言われたら、と思うと、やっぱり言わなきゃよかったと後悔が生まれて。
「___つまり、お前は何かして欲しい、と?」
緩やかな重音。
黙っていた彼が、ゆっくりと言葉を発する。
耳になじむその声に、じわり、好きだなあ、という気持ちが加速して。
その言葉の意味を理解するのがワンテンポ、遅れた。
「っ、そ、うじゃなくて、ですね!」
何かして欲しいか、して欲しくないか、と問われれば、それはして欲しいに決まってるけれど。
あわててあげた視線の先、いつもはぶっちょうずらをしている彼が、愉しそうに口角をあげていて。
どくり、また一つ、好きが、あふれそうになる。
「じゃあ、どうして欲しい?」
言葉に、つまる。
いっぱい、して欲しいこと、してみたいことはある。
「手を、つないでみたい」
そう言えば、そっと分厚い手が、私の手をつかむ。
「もっと、たくさんお話したい。」
彼の目元が優しくゆるむ。
それから?
促すような、目線に、呼吸があがる。
「ぎゅう、って、して欲しい。」
いつの間にか、ダンベルは地面に落とされて。
少しだけあった距離は詰められて。
捕まれた手が、沸騰するように、熱い。
向けられる視線が、身を焦がすように、鮮やかで。
「なあ、」
ぐ、と頭を抱き抱えるように引き寄せられて、耳元で彼の声が響く。
「せっかく、恋愛初心者のお前のためになにもしないでいてやったのに」
直接脳にたたき込まれるみたいに甘い声
「お前が、たがをはずしたんだからな。」
※※※
そういえば、ちゃんとした恋愛っぽい麦一味の話、書いたことないな、と。
だれかかっこいいゾロください。
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