ドリーム小説
たった一人の主様
「滝様、滝様!」
入学して二年。
装束の色が水色から青に変わって、後輩も入ってくるということで心機一転。
もっともっと、たくさん学んで、知っていきたいと。
そんな願いを抱いていた私のもとにぱたぱたと走りよってきたのは幼い姿。
なぜここにいる?
家に帰ればいつもおかえりなさいとふわり、笑って出迎えてくれていた彼女が。
なぜそんな格好をしているのだ?
性別は女だというのに、なぜかその装束は水色。
つまり忍たまの新入生のもので。
「滝様、私も本日から滝様と同じようにこの場所で学ぶことを許されたのです。」
惚ける私に向かい、いつものように笑む彼女。
「滝様、私が絶対にあなた様をお守りいたします。」
平の家に仕えている彼女の家。
彼女は生涯私に使えると小さな頃から口にしていた。
そんな彼女はやはり私に使えるためこの場所にきて、ともに学ぶと言葉を発する。
いくら守るといわれても、私の方が男で、私の方が多くを知っているというのに。
それでもその気持ちはうれしいもので。
柔らかく笑う彼女の頭を優しくなでてやった。
そうして、それから二年。
私は青、黄緑と色を変え、ついに紫を身にまとって。
彼女も水色を脱ぎ去り、青を経て、黄緑に色づいていた。
もともとかわいかった彼女は年を経て、少しずつきれいになっていって。
そして、
あのかわいかった私の従者はどこにいったのか。
「滝夜叉丸様。平の家から便りが届いております。」
「・・・。私は読まぬと何度いえば?」
「私が仕えるのは平の家。あなた様に仕えてはいても、お家の意志に従うのです。」
甘ったるい幼い声は、堅く、使命じみたものに。
ふわり、笑みを浮かべていた彼女の表情は、ただただ無表情に。
元々両親の反対を押し切ってこの学園にきた私。
兄に家を継がせればいいものを、何かと優秀な私を気にかける両親。
私は兄が大好きであったから、兄に家を継いでほしくて。
同時に、私は兄の手となり足となり仕えることを望んだというのに。
そのためにここにいるというのに。
学園へお金は払ってくれていたが、何度も何度も繰り返される家への帰還。
断れど断れど、のれんに腕押し、糠に釘。
手紙を受け取らなくなれば、私に仕えるに手紙を送りつける始末。
その所為か、この学園にきた所為か。
彼女はどんどん昔の面影をなくしていって。
あのころのかわいい彼女はここにはもういないのだ。
滝様滝様。
気安く名を呼んで、ついて回ったその背中。
今では名を呼ぶにもおそれ多い尊い人。
努力を怠らず、自らを高めていくことに日々力を注いでいく。
私が屋敷でみていたこの方は、まるで偽物だったのではないかと想うほど、すばらしい人。
私を守ってくれた人、私が守っていきたい人。
大事な主。
大事な人。
私は平の家に仕えいるわけじゃない。
私が使えているのはたった一人、滝夜叉丸様だけ。
けれども、それを口にすればあなた様が困ってしまうことを知ってはいたから。
一歩後ろを付き従うように。
全ての危険からこの人を守れるように。
私にとって滝様は何よりも尊く誰よりも大切なお方。
この方に仕えられることを私は誇りに思っている。
この方のそばにいられることを私は何よりも喜ばしく思っている。
何があろうと私という存在は、滝様のためだけに。
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別に滝夢というわけではなくて、仕えるならば滝がいいなあ、と思っただけのお話。
気が向いたら続きを書くかもです。
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