ドリーム小説
某薬売りさんの性格で火薬委員長とのリクエスト。
残念ながら管理人にはあの格好よさは書けなかった。
それでもよければどうぞ
空を彩るのは暁。
そろそろ闇が訪れるかという頃。
とある学園の硝煙蔵のすぐ横。
そこには一つの紙を覗き込む複数の影があった
「兵助先輩、これって・・・!」
小さな水色が茫然とその紙を見てつぶやく。
「こんな予算じゃやっていけませんよ!!」
青色は怒りをあらわにしていて
「これじゃあ、甘酒もかえないねえ・・・」
金色の髪を持った一番背の高い少年が言うと、最後に紺色がゆっくりと口を開いた。
「しかたない。あの人に、お願いしよう。」
闇色の帳が下りた時、その場所にはもう誰もいなかった。
某忍術学園
某6年長屋。
とある一室。
その部屋の前に黒い髪を持ち整った顔の少年の姿があった。
「・・・委員長。」
どことなく緊張した面持ちの彼はゆっくりとその部屋に向かって声をあげた。
「お入りなさい、久々知兵助さん。」
その言葉に一度深く深呼吸した兵助はこれまたゆっくりとした足取りでその部屋へと足を踏み入れた。
部屋へと足を踏み入れた瞬間、鼻につく濃い、におい。
それは常日頃会でいるにおいではあるけれど、どことなくあの硝煙蔵よりもきつく香っていて。
本来二人部屋のはずのその場所は、半分以上様々なもので溢れかえっていて。
そして部屋の中心にその人は鎮座していた。
ゆるりと物憂げな動作で顔にかかった銀色の髪をかきあげるとふわり、兵助を見て笑う。
昼であれば深緑をまとっているその体には、寝巻であろうか。
色とりどりの鮮やかさをふんだんに使った着物がまとわれている。
「お座りなさい、久々知兵助さん。」
ゆるり、これまた柔らかな動作で進められた先にはいつの間にか座布団が引いてあって、さらにはその前には湯気を立てた湯呑まである。
「甘いものはお好きですか?」
その言葉と同時に目の前に甘そうなお饅頭が置かれて。
「あ、ありがとうございます。」
慌ててお礼と共に頭を下げれば楽しそうな笑い声。
「ふふ、私は甘いものに目がないのですよ。」
見ればまふまふと美味しそうにお饅頭を頬張っている。
しばし無言の空間で静かにそのお饅頭を頬張る兵助。
最後に熱いお茶をのどに流し込めばふわり、甘美な緑茶が広がる。
ことり、目の前に湯呑を置いて彼をまっすぐに見つめる。
「さて、久々知兵助さん。何が、ありました?」
何かあった、ではなく何があった。
そう聞いてくるところがすでに最上級生の貫録を醸し出す。
先ほどまで美味しそうにお饅頭を頬張っていたにもかかわらず、その瞳は乾き、ただ冷徹な色を醸し出していて。
ぞくりと、背筋が凍りそうになる。
「これを、見ていただけますか。」
兵助がそう言ってだしたのは夕方、火薬委員の子たちと共に見ていた一枚の紙。
すっと差し出したそれを緩慢な動作で彼は手に取る。
「おやおや、これはまあ大変なことになりましたね。」
言葉とは裏腹に全然困ったように思えないその言葉。
でも、目だけは冷たくそこにあって。
「私だけじゃもうどうしようもないので、ぜひ委員長のお力をお借りできれば、と。」
ふわあり、それはそれは、とても綺麗にその人は
その服の色にも負けないくらい鮮やかに、
冷徹な目をしたためながら
笑って見せた。
「もちろん、任せてください。兵助さん。」
その瞬間、兵助はこの学園で何よりも強い後ろ盾を手に入れたのだった。
「そういえば、久々知兵助さんは甘いものより豆腐の方がお好きでしたか?」
暗い廊下。
歩いているのに無い音と気配は完全なる静寂を生み出す。
目の前の銀色について歩いていればそんなことを尋ねられて。
「え、いえ、確かに豆腐も好きですが、甘いものも好きです。」
突然の話題に驚きながらがも言葉を返せば目の前の彼は楽しそうに頷く。
「そうですか。では次は豆腐と、甘いもの、両方用意しておきましょうか。」
「あ、ありがとうございます。」
滅多に委員会に顔を出さないこの人に会うことは極端に少ない。
下級生の中にはこの先輩を知らない人だって多くはない。
火薬委員会の後輩たちも名前を知っていても見たことがないのではないだろうか。
ふわりふわり、楽しげに歩いていたその背中がぴたり、とある一室で止まる。
その瞬間、先ほどまでの楽しげな雰囲気は一転、背にぞくりとした感覚が広がる。
ゆるり
緩慢な動作でその部屋の襖に手をあてて、これまた音もなく開く。
「おや、どうした?お前がこの場所に来るとは珍しい。」
中にいた黒髪鮮やかな彼はくるり、振り向き首をかしげる。
「立花仙蔵さん。」
ふわり、笑みを浮かべているはずのその顔は、恐ろしいまでに艶やかで。
目の前に座っていた仙蔵をぞくりとさせる。
「探しているものが、あるのです。」
ゆっくりと一言一言をかみ砕くように言葉を紡ぐ。
その瞬間、仙蔵は彼が何を探しに来たのかを理解し、そして自分に被害及ばないようにとあっさりそれを放り出した。
「文次郎ならば会計室にいるぞ。」
ふわあり
まるで薔薇が開花するように、浮かべた、笑みは、あまりにも毒気が強い。
後ろにいる兵助ですらぞくりと恐怖が走る。
「ならば、さあ、行きましょうか。久々知兵助さん。」
くるり、兵助の正面に来たその表情は愉しげで、愉快気で。
「・・・。ほどほどにしてやってくれよ。」
仙蔵のそんな言葉に、兵助からだけ見えるその表情は艶やかに口の端をあげた。
「善処、いたしましょう。」
絶対に嘘だ。
兵助と仙蔵の頭の中でそんな言葉がよぎった。
「さてさて、非道な会計委員長にお灸でもすえに、行きますか。」
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