ドリーム小説
変換なし。某薬売りさんを学園に投下してみた。
とある場所、緑生い茂る奥深く。
そこにはがっしりとした門が構えられていた。
__忍術学園__
そのように記された表札の前、とある男が一人、たたずんでいた。
年はいかほどか。
見た目ではなんともとらえにくいその男。
色とりどりの衣装に身を包むその姿。
だがしかし、華美すぎるということはなく、見たものには好意的な印象を与えるであろう鮮やかな装束。
背に背負うは身の丈にも近い木の葛籠。
顔に施された色がどことなく不思議な雰囲気を醸し出す。
その男がゆっくりと手を動かした。
するり、撫でるようにその門へと手をあてる。
ゆるり、何かを辿るように指を這わせて、そして楽しげに口元を緩めた。
「これは これは おもしろい。」
小さくつぶやかれた言葉は誰が聞くこともなく風の中に溶けていった。
「あ、伊作く〜ん!」
全6年対象の実習が終わり、汗を流して午後からの休息を存分に楽しもうとしていれば不意に聞こえてきた声。
呼ばれた伊作はきょとりとして声の方を見る。
するとそこには入門票を手にした秀作がいて、その秀作が輝かしいばかりの笑顔で伊作を手招いているのが目に入る。
「?なんだろう。」
「さあな。」
伊作と共にいた留三郎がそう答える。
「呼ばれているのだ。さっさと行って来い。」
仙蔵の言葉に後押しされるように伊作は秀作の元へと走って行った。
「小松田さん、どうしました?」
走り寄って尋ねるが、目線は彼の横に立つ一人の人物にくぎ付けになる。
整った顔、そして赤く彩られたその色は美しく。
綺麗な銀色の髪はふわりとしながらもその秀麗な表情を際立たせる。
背に背負うは彼の身長ほどもあるだろう。
木でできた葛籠。
小松田さんよりもずっと高い背。
そして何よりも印象的なのはその瞳。
まっすぐなその鋭い瞳は心の奥底まで見通すようで。
光があたりきらきらと輝くくせに、その奥には暗いくらい闇が見えて。
「ごめんね、伊作君。この人を学園長先生のところまで連れて行ってあげてくれるかな?
僕先生に頼まれた用事がまだあって・・・。」
入門票を持ちながらあははと笑いながら伊作にそう言うと、じゃあ、よろしく!そんな言葉だけを残して秀作は姿を消した。
「・・・ええ、と・・・」
いなくなった秀作にぽかんとする。
と、ぐん、と彼が突然顔を近づけてきた。
目の前に近づいた端正な顔に思わずぎょっとする。
「これはこれは、」
ぽそり、つぶやかれたそれ。
なんだろうと思い首を傾げれば、くつり、とても愉しげにその口元が歪められた。
「大変面白い、体質をお持ちのようで。」
ぞくり
目の前の彼の手が、ゆっくりと伸ばされて、伊作の喉元へと向けられ、て。
「伊作っ!」
がっと後ろから体を引かれ、その手が伊作に触れることはなかった。
「何ぼおっとしてんだ?!」
慌てたような声は留三郎のもの。
振り向けば焦ったような表情をしていて。
「・・・なんか、動けなかった。」
ぽかんと、した表情をした伊作に留三郎はため息を返した。
「伊作。こちらの方は?」
「お前の知り合いか?」
伊作を庇うかのように前にたった仙蔵と文次郎が伊作に、問う。
とはいっても、その質問の答えを伊作は持っていないのだが。
「おや おや。」
愉しげに表情を緩めたまま、彼はくつり、再び笑い声を洩らす。
「さすが、忍びを育てる学校、ですね。」
その声は朗々と柔らかく響くくせに、心臓をひどく鋭い刃で撫でられているようなそんな感覚に陥る。
「ええ、と小松田さんのかわりに学園長先生のところに連れて行ってほしいと言われたんだけど・・・」
得体のしれないよくわからないこの人物を学園長先生のところに連れて行ってもウうものだろうか。
その場にいた皆の気持ちが重なった。
と、その時。
「いっけいっけ、どんど〜ん!!」
その掛け声と同時に降ってくる影。
それは何の躊躇もなく、彼へと向かう。
素早いそれに、反応をみせない彼に思わず文次郎たちが動こうとした瞬間
ふわあり
それはそれは軽く、まるで重さを感じさせないように、彼は身をひるがえした。
先ほどまで彼がいた場所に、小平太のこぶしが落とされた大きなクレーターのようなものができる。
ゆっくりとあげられた小平太の顔がにやあり、それはそれは楽しげなものに変わって。
ぺろり、舌でその唇を濡らして、再び足を踏み出した、
瞬間
「小平太。」
まるで飼い主のように、現れた長次の言葉にぴたりと動きを止めた。
「長次、なんで止めるんだよう!」
むう、とした表情を見せるのに動かないそれは長次の教育のたわ者だろう。
「なかなかの身のこなしだな。」
「その服でよくそんだけ動けるなあ!」
「もそ」
「なあなあ!あんた強いな!」
「怪我とかはしてませんか!?」
仙蔵、留三郎、長次、小平太、そして伊作。
それぞれが言葉を紡ぐ。
そして
「貴様、いったい何者だ?」
「しがない 薬売り ですよ」
文次郎の言葉に、ふわり、笑みを見せて彼、薬売りはそう言った。
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