ドリーム小説














あまとうおんな ごほうもん









「このクラスにはいるか。」

昼休み終了まで後10分を切って。

もってきた和菓子もあらかたみんなのおなかに収まり、皆が皆次の授業までの鋭気を養っていた。

そんなときだった。

それが現れたのは。

ざわりと空気が変わったのだ。

皆が出入り口を見つめぽかんとした顔をして。

今まで談笑でにぎやかだった教室は一瞬で静寂と緊張に包まれる。

茶色がかった髪色は、かすかな光にでもきらきらと輝いて。

右目の下のなきぼくろがそこはかとなく艶やかな雰囲気を生み出し。

鋭い青みがかった瞳がこちらの心臓を射ぬく。


「跡部さん?」


不思議そうな声色でその人の名であろうものを呼んだのは日吉君。


「ああ、日吉。このクラスにっていう転校生がきただろう?」


一斉にこちらに向けられる視線。

全力でそれらから目線をそらした私は悪くないはずだ。


「・・・、おまえなんかしたのか?」


ひどい、日吉君!なんて言いがかり!

逆に聞こう、私がなにをしたというのか!

と思えどもこんな状況で言葉を発することができるほど図太くはなく。

必死でだれとも目を合わせないように、というか、必死で生徒会長と目を合わせないようにうろうろと目線をさまよわせる。


「おい、こっち向きやがれ。」


そのままどうにかそれらを流せないかと、無駄な努力を試していたがあっさり、破られ目の前からのお言葉。

非常に怖い。

ゆっくりとそちらを見ればどことなく怒気をはらんだ表情。

私がなにをしたと!?


「__昨日」


きょどる私にかけられた言葉。

昨日?

揺れる思考の中から該当するものをさがしだそうとして___


「あ。」


そういえば道を案内してくれようとしたのを全力で振り切った記憶が・・・


「昨日は無事に帰れたんだな。」


発された言葉は思っていたよりもずっとずっと優しくて。


「へ?」


思わず漏れた気の抜けた言葉に返されるのはため息。


「転校して初日で迷わねえ奴なんていねえよ。特にこの氷帝ではな。」


どうやらこの生徒会長様は私が昨日無事に帰宅できたのか、それを気にしてきてくれたらしく。

ふにゃり、暖かくなる胸に頬がゆるむ。


「ありがとう、会長さん。おかげさまで無事に帰宅できました。」

「そうか。」


のばされた会長の綺麗な手が頭をふわり、優しくなでる。

想いもしなかったそれに驚いたのは私だけではないようで。

クラスメイトがざわりと揺らめき不気味なほどに無言になった。

視線のはしに引っかかった日吉が驚愕の表情を浮かべている。


「ええと、会長さーん?」


なんだか至極満足そうな表情で言葉を発することはなく、頭をなでられる。

いったい何事だ。


「跡部。チャイムなるで?」


そんな空気を壊してくれたのは、昨日も今日も、私をお世話してくれる人の声だった。


















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