ドリーム小説
あまとうおんな だんしょう
「。忍足さんになにもされてないな?」
日吉君につれていってもらった移動教室先。
ついたときには人がたくさんで日吉君と二人して後ろの方の席に座っていればそんな不思議なことを問われた。
何のことかと日吉君をみれば、どこか困ったような、苦虫を噛みつぶしたような、微妙な顔をしていた。
「何か、ってよくわからへんけど、でもよくしてくれるで?」
日吉君の何ともいえない表情がなんだかかわいい。
「晩ご飯作ってくれるし、朝起こしてくれたし、朝ご飯だけじゃなくてお弁当も作ってくれたし。」
「は?」
私の言葉に今度は絶句している。
「私の東京のお母さんだからね」
その言葉を発した後の何ともいえない日吉君の表情はひどくおもしろかった。
「いや、人気はあるのはあるんだけどね・・・」
「どっちかというとあの二人は鑑賞用だよねえ。」
「え?いじめ?大丈夫大丈夫。そんなのする人いないし。」
放課後、圭ちゃんを中心にクラスメイトと会話をしている最中だった。
「ちゃん、日吉だけじゃなくて、あの二人ともふつうに話せるんだねぇ。」
ふわふわした雰囲気の馨ちゃんがすごいねえ、と笑ってそういった。
それに首を傾げていれば上記の会話になったわけで。
「確かにかっこいいし、すてきだとは思うけど、あの二人の横に並びたい、そう心から思える人はあんまりいないと思うよ。それに生徒会長はなんだかんだいって跡部財閥の跡取りだしね。つきあいだなんて、おそれ多い!って。」
なんとも不思議なものだ。
脳裏に浮かぶのは前の学校。
顔がよい通称聖書と呼ばれたあれはひどくもてて、それを理解しながらも私に近づいて遊ぶ人物であったから。
それによるいじめというのはなかったけれど、やっぱり一部の女の子たちからはひどく冷たい目で見られていたから。
まあだいたい光が横にいたのでなにもされなかっただけなきもするけれど。
ついでに言うと、私によくしてくれた友人たちはその聖書の性格をよく理解していたのでどんまいと哀れみの目をくれたがな!
顔がよい、頭がよい、運動できる=もてる=関わると面倒。
なんてことだ。彼らを避ける理由がなくなってしまった。
といっても、その中の一人である忍足さんはどうにもこうにも世話を焼いてくれるため、離れようにも離れられないのだが。
「ちゃん、部活は入らないの?」
そういえば、そんな感じで問われたそれに、きょとりと首を傾げる。
「え、もしかして入るの必須だったりするん?」
「ちがうよ〜。この学校は財閥の子供も多いからね、放課後を縛ることはできないんだ〜」
「でもまあ普通の子はだいたい入ってるかな。で、どうするの?」
部活動。
別に前の学校でも入っていなかったし、(バイトをしていたので。)今現在も必要性も感じてないのでいいかな、と考える。
これからバイトも探す予定だったので、結論=はいらない。
「はいらへんかな。」
そっかあ、と柔らかい馨ちゃんの返事。
「二人はなんかやってるん?」
「私は___」
楽しい時間というのは光のごとく。
気がつけば時間は過ぎ去り___
「・・・おまえ等こんな時間まで何してるんだ?」
からりとあいた扉の向こう水色のユニフォームに身を包んだ日吉君があきれたような声で問いかけてくるまで三人で談笑に励んでいた。
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