ドリーム小説
あまとうおんな きたく
「さ、帰ろうかちゃん。」
日吉君に何故かテニスコート横での待機を命じられたため、大人しく圭ちゃん馨ちゃんと談笑していれば部室から出てきた忍足さん。
楽しそうに笑いながらにそんな言葉を投げかけてくる。
「・・・?」
確かに帰る方向は一緒だが、ここに来いと言ったのは日吉君だ。
どないしろと?
「お前ら全員帰る方向違っただろう。送ってもらえ。」
日吉君が運動後とは思えないさらりとした髪で部室から出てきながら言葉を発する。
そこでようやっとこの場所で待機を命じられた理由を悟る。
確かに考えてみたら学校を出た瞬間二人の友人とは別の道に行く。
この時間、確かに少々女の子一人で歩くというのは危険といえば危険で。
自分はよいけれど、友人二人は女の自分から見てもかわいらしい。
けれどもそれは日吉君の申し出により解決した。
二人もそれぞれに同じ方向の人に送ってもらうようで一安心。
どうやら赤い人も同じ方向らしく、忍足さんと共にを待ってくれていて。
そちらに向かって進もうとした瞬間、肩にかけていた鞄が不意に軽くなる。
何事かと思いそちらを見れば、さらりとした髪が揺れた。
「俺も方向同じだから。」
何この人、超紳士!!
まさか日吉君がそんなことをしてくれる性格だとは思っていなくて。
まさかかばんをもってくれるような優しさを兼ね備えているとは思っていなくて。
あまりの衝撃にかなり失礼なことをいっている自覚さえない。
「いくぞ。」
「あ、うん。」
二三歩先に進んで、こちらがついてきていないことに気がついたのう振り返って待ってくれる。
なんというか、それが非常にうれしかった。
「ちゃん。晩ご飯何がいい?」
忍足さんが問いかけてくるそれに頭の中くるくると考える。
何が食べたいか。
食べたいものはたくさんあるが、何が食べたいかと聞かれるとなかなかに困るものだ。
しかもこの男、どの料理も非常においしい。
「・・・」
「なあなあ侑士!俺も食べたい!」
答えあぐねていれば、赤い人がぴょこぴょこと跳ねながら精一杯主張してくる。
うおお、なんかかわいい人だな。
「岳人・・・別にええけど、ちゃんと家に連絡入れときや?」
いやいやいや、本当にお母さんですね。
「・・・どこの母だ。」
日吉君の言葉に思わずうなずく。
「もしかして、いつもあんな感じか・・・?」
「というか私はあの忍足さんしかしらないんやけど?」
「・・・ああ、あんまりいつもと変わらない気もするがな。」
「というか、日吉君。」
「なんだ。」
「あの赤い人は誰なんでしょうか。」
「・・・ああ。そりゃ知らないよな。」
日吉君と二人、前の親子のような姿を見ていれば(お菓子は一つまで、とかどんな会話ですか。)くるり、突然振り返った忍足さん。
「日吉も来る?」
何がだ。
「今更一人くらい増えたかて、作る手間は一緒やし。」
そこでようやっと晩ご飯のことだと把握。
「日吉君も一緒に食べんの?」
おお、それは非常に楽しそうだ。
そう思い見上げる。
「え・・・。」
どことなくいやそうな表情。
「いいじゃん、日吉も食べて帰れよ。」
赤い人が我が物顔で告げる。
「俺は遠慮___」
「ん、決定な。日吉、家に連絡入れときな。」
ほぼ、強制というだろうそれは。
ちょっとまて、と声を上げる前に歩き出した二人。
スーパーの中に揚々と足を踏み入れる。
かごを持つ姿とかもう、本当親子。
「ええと、日吉君、なんかどんまい。」
それ以外にかける言葉が見つからなかった。
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