ドリーム小説
あまとうおんな ばんごはん
校内探検、それに続いて電話をしていたこともあり帰る時間はひどく遅くなってしまって。
しかも帰りに買い物をしようと思っていたのをあっさり忘れて帰宅した所為で冷蔵庫の中にはあまり材料がなく。
「・・・ケーキにしよう。」
なんだか昨晩も聞いたような言葉が彼女の口から飛び出した。
てきぱきと迷いなく作られていくケーキ。
ほのかに甘い匂いが漂いだして、皿やコップの準備のため甘い匂いをそのままにテーブルにそれらを並べていく。
と、
パリン
「わっ、」
乾いた音と共に割れたお皿。思わず何の準備もしないままそれにふれて、持ち上げるために力を入れて。
「いっ、」
思い切り切った。じわり、広がる痛みと赤色にあーあ、とつぶやきながら、救急箱などを持ってないことに気がつく。
「どないしよう・・・」
ぼたぼた出血する手を眺めながらしばし、悩む。
と、
ピンポン
呼び鈴の音。
この手ででていくのはと思いながら、急ぎのようなら悪いとも感じ立ち上がり、ドアを開ける。
そこにはばつの悪そうな、どうすればいいのかわからないような、そんな表情のお隣さん。
話を聞けば心配してくれたようで。
同郷だからとかそういうのもあるとは思うが、それでもその優しさが嬉しくて、へらり、笑う。
困ったように笑い返してくる忍足が突如、固まった。
何事かと思えばどうやら手を怪我していることがばれたようで。
いや、別にばらすつもりがなかったとかそんなんではないのだが。
人の怪我をみるのはよい気分ではないだろうとそっと隠そうとすればあっさり、掴まれた手。
そして何か言うまでもなくあれよあれよと室内に放り込まれて、忍足が持ってきた救急セットによって手は治療されていた。
「女の子なんやから、怪我には注意せなあかんで?」
綺麗に巻かれた包帯にほお、と感心しながら手を眺めていればそんな言葉。
お母さんみたいだ。
思った感情はそっと胸にしまった。
「その手じゃ洗いもんもあんまり無理でけへんやろ。」
うわ、マジお母さん。
「んん、無理せんようにほどほどに頑張りますし。」
の言葉に相変わらずため息。
なんだかバカにされているわけではないのだが気になる。
「今日の晩ご飯はどないすんの?」
困ったようにめがねをかちゃり、はずして目元を押さえながら問われる。
「あ、さっき作り終わりました。」
立ち上がりぱたぱたとオーブンに向かう。取り出したほかほかのスポンジをみて満足気に笑う。
「あれ?どないしたんですか?忍足さん」
ほら、と見せるつもりで振り返ればなぜか脱力してうなだれる姿。
「お嬢ちゃん・・・」
どうでもいいが呼ばれ方はお嬢ちゃんで固定なのか。
「はい?」
「・・・・・・・・・まさかとは思うけれどそれ晩ご飯?」
「はい。」
問いかけに頷けばさらに脱力。
「・・・まさか昨日の晩も今日のお昼もケーキやったりは・・・」
「よくごぞんんじで。え、忍足さんエスパーですか?!」
ぴしり、固まったままだった忍足がゆっくりと立ち上がりふらり、に近づく。
それを何事かとみていればがしり、両肩を掴まれて。
うつむいたままじわりじわり、低温ボイスが響いた。
「あかん、あかんで、お嬢ちゃん・・・!」
ぐわりっうつむいていた顔が上げられて、至近距離でその整った顔がこちらを見つめていることに、気がつく。
「あかんで!百歩譲って昼はよしとしよう!やけどあかん!糖分の取りすぎは病気につながる!というか三食甘いもので栄養なんかとれるかいな!」
がっこんがっこん前後に体を揺すられて、はなされるがまま。
というかせりふがもうただのおかんだおかん。
三食きちんと栄養とりなさい!そんなおかんがみえる。
「ああ、もう!お嬢ちゃん!俺の家に来い!」
揺すられるのが止まったかと思えばぐい、と引っ張られる腕。そのままあれよあれよとつれていかれたのは隣の家で。
気がつけば目の前にえらく栄養満点の食事が並べられていた。
「おお・・・」
思わず感嘆の声をあげれば、お茶を湯呑みに乗せて目の前にやってきた忍足がため息。
「せめて晩ご飯くらいはきちんとしたもん食べなもたへんで・・・」
思わず、叫んだ。
「・・・お母さん!」
「だれがや。」
見事な切り替えしだ。
ちなみにさきほどまでが作っていたケーキは、ずっと彼女の手にあったためこの部屋に共にある。
「ええと、食べてもいいん?」
「どうぞ、召し上がり。」
「いただきます。」
久しぶりのきちんとした食事は、それも一人ではない食事はひどくおいしと感じた。
※※※※
ぶっちゃけあまとうおんなでかきたかったのはお母さんな忍足。
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