ドリーム小説







1.ミニスカートは好きですよ、脚が見えますし。
ミニスカートは好きだっちゃ、脚がよう見えるち






スカートが嫌いなわけじゃない。

クラスの女の子が、道行く女性が、ふわふわとなびかせながら歩む様は可愛らしいと思うから。

ただ、私には似合わないものである。

と、いうことで、今日も今日とて私はスカートの下にジャージをはきながら一日を過ごす。

毎日毎日これを貫く私に、教師も注意をするのをあきらめて。

クラスメイトも友人も、もう何一つ言ってこない。


「・・・」


たった一人を除いては。


「・・・何だ?千歳。」


放課後、教室で、家に帰ってやる気にならない宿題をこなす。

かりかりとその音だけが響くその場所。

だが、それ以外にじいっと私を見つめてくる一つの視線。

しばらく放置していたが耐えきれなくなって、一つため息。

そしてそちらを向いて、問いかける。


「・・・はあ。」


大げさなまでのため息。

それにどうしたのか、再度答えを促せば、なんとも言えない微妙な顔を返されて。


「・・・なんね?ミニスカートとちがうっちゃ?」

しょんもりとした表情の割に、発された言葉はそれに似合わず不適切。



「・・・へ?」


思わず聞き返せば、その端正な顔がまっすぐと私に向けられて。


「俺、ミニスカートの方が好いとう。・・・お前の生足がみえんっちゃ。」


とりあえずその言葉に彼を殴らなかった私をほめたたえたくなった。








2 興奮しますね、もちろんそう言う意味で。
興奮するっちゃ、だぎゃんそげん意味で






「千歳?」

自分よりもずっと大きな手が、私の手をなでる。

人差し指で甲をなぞり、そのまま薬指に、小指に、掌に。

擽ったいそれに、小さく声を漏らせば、ちらり、よこされた視線。

どことなく熱をはらんで見えるそれ。

どくんと音を立てた心臓を放置して、不自然に見えないように視線をそらした。


「楽しい?」


問えば無言の肯定。

別に嫌ではないのでそのまま放置すれば、それはもう片方の手にも飛び火して。

するりするり、手をなでる指。

柔らかなそれに、時折心臓を握られながら、焦りを見せないように息を整える。

と、ぬるり、

生ぬるい何かが手を這う。

驚いてそちらを見れば、千歳の赤い口からちろりと舌が見え隠れ。

どくん、ひときわ大きな心臓音に比例して千歳の顔が愉快に歪む。


くつくつと喉で笑う声が指を伝って響く。


「興奮するっちゃ、だぎゃんそげん意味で」


私も興奮してるとか、返せるわけないだろうが。























3そんなに泣かないでください、理性が保てなくなる。
そんなに泣かんで、理性が保てなくなるきに。







保健室。

先ほどのサッカーにて、思いきりすったひざ。

非常に痛い。

それゆえ、次の授業をさぼり保健室で手当てを受ける、はずだったのに。

目の前にはクラスメイト。

私の前に跪いて、手に消毒液を持っている。

事の発端は数分前。

治療を頼みに来た私を尻目に、保険医の先生は急用が、といいながら保健室を出ていく。

その手に持ったセブンスターの箱を、私はばっちり見た。

まあ、ばんそうこうだけでももらおうかと踏み入ったそこでは右手に消毒液。

左手にガーゼを持ったクラスメイトの千歳千里がスタンバイしていて。


「座るっちゃ。治療すぎゃんね、じっとしときなっせ。」


反論許されず、座らさせられた椅子。

そうして彼は私の膝に薬をつける。


「っ、」


思ったよりも派手に転んでいたそのひざは、傷が深いようで鈍い痛みが広がる。

多少の痛みであれば耐えれるが、さすがに少し痛くて、涙目になる。

と、目の前の千歳の動きが突如停止した。

どうしたのかと見下ろせば、まっすぐにこちらを見る鋭い瞳に出会って、同時にこちらも動けなくなる。


「そんなに泣かんで。・・・理性が保てなくなるきに・・・」


嫌に艶やかなその瞳に思わず視線をそらした私は悪くない、はずだ。











4誘ってるように見えたので、つい。
 誘ってるように見えたっちゃ、つい




駅前、なぜか隣にはクラスメイトの千歳。

おかしい、最近こんなパターンが増えてきた気がする。

「今暇ね?俺とデートせん?」

帰ろうと学校を出た瞬間に捕まった。

イエスと答えてなどいないのに、気がつけばあれよあれよと手を引っ張られていて。

駅前のゲームセンターやら本屋さんやら、おもちゃ屋さんやら。

くるくるくるくる。

さすがに疲れてきて、少し、足の速さを弱めれば、慌てたように千歳が私を覗き込んできた。

「つかれたんね?」

大きな体で体を縮こめる様は、こう、ちょっと可愛い。

「ちょっとまっちょって!」

近くのベンチに誘導されて、座るように促されて。

そうして千歳はそのままどこかへ走り去って行った。

はてさて、どうしようかと考えていれば、走っていった時と同じような速度で走って帰ってくる姿。

「食べなっせ」

差し出されたのはアイスクリーム。

白いそれがそこはかとなく、甘い誘惑を醸し出すので、遠慮なく口に運ぶ。

はむはむと一口二口、食べていればほおがゆるむ。

「千歳は?」

一つしか買ってこなかった千歳に問うように首を傾げれば、一度ぴたり動きを止めた彼。

何事かと唇に着いたクリームを舌でぬぐう。

すぐ後に、ふわり、柔らかな笑みが返されて。

「っ、」

ぐっと突然頭に回された手が、引かれる。

その動きについて体が引き寄せられて。

気がついた時には唇が生温かい何かに包まれていて。

「・・・ん」

甘い甘いそれは、柔らかな名残とほのかな温もりを残して離れていった。

「っ、なんっ!?」

思わず驚いた声をあげればふわり、どこも悪くなさそうに千歳が笑った。

「誘ってるように見えたっちゃ、つい。」


赤くなった顔を隠すために、買ってきてくれたアイスに視線を落とした。




















5.好きなんです貴方のことが。だから、いいですよね?
好いとうよお前のこと、やけん、よかね?






図書室。

委員会が同じ財前に、一つ二つ、質問をしながら作業をこなす。

今日は当番の日、ということで貸し出し作業をこなしつつ、本を元の棚に戻していた。

「まったく、しゃーないっすわ。」

カウンターでカチカチと作業をせずに携帯をいじっていた財前が突如あげた声。

どうしたのかと振り向けば、無表情な瞳がこちらに向けられていて。

「ええ、と?」

その視線に縫いとめられるように動けなくなる。

「先輩。」

ゆっくりと立ち上がった財前が私に歩み寄る。

あまり背が高くないと思っていた後輩だが、並んで見ればやはりそれなりの差があって。

かたり、思わず後ずさっていた背が、本棚にぶちあたる。

「どうしたん?財前君。」

思わずすくみそうになる足を叱咤して、問いかければ、至近距離でため息。

「本間、鈍いっすわ。」

呟かれたその次の瞬間、がらり、開かれた扉。

そちらをみれば、最近おなじみ千歳。

「千歳、」

名前を呼ぼうとした瞬間、腕を掴まれてその逞しい胸に抱き寄せられた。

「え?ちょ、」

驚いて顔をあげれば唇に温もり。

柔らかな何かが唇を辿って、その奥をたたく。

「っ、」

思わずもれた声に、さらにその口付けは深くなって。

「ふっ、は、・・・」

ようやっと離れた時には目の前至近距離に千歳の顔。

後ろにいたはずの財前君は姿をくらましていて。

「ちと、なに、」

回らないろれつを四苦八苦して押しだせば、にやり、今までのほわほわした笑みとは違う、艶やかな笑み。


「好いとうよ、お前のこと。やけん、よかね?」



返事は聞かないとばかりに、再び唇が熱で覆われた。












千歳君でやらねば、と思った御題
何気に御題初挑戦
ぶっちゃけ方言わからなさ過ぎて落ち込みそうになった。


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