ドリーム小説












1

















元の世界に帰りたいのならば、五人の人を助けなさい。




知らない世界に放り出された私に告げられたのはそんな言葉。


それが神様なのか、悪魔なのか、そんなことわからないけれど、あの世界に反してくれる、そういうのであれば私はそうするよ。





たとえ日本の過去のような世界でも。

たとえ忍術を学ぶ学校に通っていても。







たとえ、私が救う人物が、私と同じ世界から来た人であったとしても。









たとえ、その方法が、相手のこの世界での生を奪うことであったとしても











一人目に助けたのは、自殺未遂をしたお姉さん。


意識は不明のまま病院に運ばれた体。


そしてその意識はこの世界で実態を得た。


この世界で生きていくか、それともあの世界に戻るか。


その選択肢は、あの世界で平穏に生きてきた人たちにとって選ぶべくもないもので。


あっさりとあの世界に戻ることを、彼女は選んだ。


私が振りかざした刃におびえ逃げまどいながら、赤い色をまき散らして彼女は消えた。



私をただ、置き去りにしたままで。









二人目に助けたのは、人生に疲れたサラリーマンの男性。


どうやら駅のホームで転落したらしい。


起きた瞬間どこかと視線をさまよわせて、わずか数分後に発狂した。


何かをがなりたてていたけれど、理解できる言葉ではなかったので、ただ問うた。



元の世界に戻りたいですか?



その問いに一も二もなくうなずいたその人に私も躊躇なく刃を振り下ろした。







私をたった一人残したままで











三人目は小さな子供


小学生ではあるだろうに、学び舎の一年生と比べると全然違う幼い子。


元の世界に帰りたいか、との問いに冒険がしたい、そう叫んで走り出して。


そして森に迷ってくたびれて、一人で勝手に泣き出した。


ママに会いたい、そう叫ぶ子供に再度問う。



元の世界に帰りたい?



今度こそ泣きながら大きくうなずいた子供。

こちらを見ないうちに大きく腕を振りかざして、そうして刃を突き立てた。



私だって、帰りたい


残された私の声を誰が聞いてくれるだろうか。












四人目は若い男性。


どうやらフリーターとやらをしているらしい。


元の世界に帰りたい?


そう問うそのまえにその人は楽しそうに笑った。


これを望んでいたんだ!


そう叫ぶと彼は私を見てそれはそれは愉しそうに顔をゆがめた。


格好はおかしいけれど、別にいいか。


そう呟いて私にとびかかってきた。


まがりなりにも忍の卵として過ごす私には簡単に見える動き。


あっさりとねじ伏せて、その肩に刃を突き立てて、そして聞いた。


このけがをなかったことにしたいならば元の世界に戻りなさい。


そういえば頭が落ちるくらいその人はうなずいて。


だから私はそのままその刃を横にスライドさせて肉をえぐった。




そうして、また私は残った、この世界に。
















そして、そして、最後の一人。

楽しみに待っていたその人物。

早く早く来ないかな、と

どうしてかループする世界の中、どうしてか変わらない学年の中、ただただひたすらにその5人目を待った。



でも、それが来た瞬間、理解できない出来事に、ただ、おびえた。




どうしてどうして。




私があの世界に戻るためには、五人の人を救わなければいけない。


それを言ったのは誰かわからないけれど、それは確かに条件だった。


けれど、その救う方法はその人のこの世界での生を奪うこと。




どうしてどうして







五人目に来たのは一人の少女でした。


とてもきれいな外見に、儚い笑み。


降ってきた瞬間天女と謳われ、ほめたたえられて。


その人は、



あの世界で同じ日同じとき、同じ母から生を受けた。



あの世界での私にとってかけがえのない片割れでした。


















あの世界に帰るには、あの愛しい片割れの生をこの世界で奪えと、そういうのですか。
















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