ドリーム小説











3














「おい」


呼ばれたことに、何の苦労もないみたいにふわふわ笑って振り返る。

周りに不快感を与えないようにただ、笑って。


今私が浮かべるのはあの子をまねた笑み。

あの子が常に浮かべていた笑み。

似てはいない私たちだったけれど、それでも面影はあるわけで。

この世界では出会えないはずだったあの子の面影を少しでも感じるそのために。


「鉢屋さん。何か御用かしら?」


紡ぐ丁寧な言葉は、あの子と同じ声。

聞く人すべてを虜にする、そんな美しい声ではないけれど。

それでもあの子に似た声で、あの子に思いをはせることができるように。



「・・・相変わらずだな」


鉢屋の言葉になんのことかと首をかしげて見せる。

あの子がいつもやっていたように。

相手の警戒心をなくすように。

この世界で何も疑われぬように。




私と同じ仮面をかぶったこの男。

この場所で私の本性に気付いている数少ない人物。


常に仮面を張り続ける私を常に疑い続ける。

自分の、仲間の妨げとなるのであればいつでも刃を振り下ろす準備をしている。



私にとって厄介で、それでいて、


この世界で私が一番信用できる相手。





「鉢屋さんは、彼女のところに行かなくてよろしいので?」



ふわり、微笑んで指差す先には、ここから見えねどもあの子がいて。

綺麗でかわいくて素直なあの子は、この世界でももちろん皆にかまわれる。


どうかどうか、あの子が、大事なあの子がこの場所で悲しまないように、さみしがらないように。




「___そっくりだな。」



答えではないその言葉。

何のことかと再び笑ってみせれば、まっすぐに向けられる鋭い瞳。



「あの女と、お前と。」



開かれた口から紡がれる言葉



「笑い方も、」



この男は本当に、この世界で一番



「話し方も」



油断がならなくて




「動作も」






私を見ていてくれる人だ。









ただ笑って見せた私を、鉢屋三郎は見ているだけだった。





























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