ドリーム小説















4

















どうして誰もいない。

こういう時に限って、皆、役には立たない。



目の前でどこかのお城の忍によって連れて行かれそうになっているのは間違うことなく私の片割れ。


連れて行かせてなるものか。


私からこの子を奪うものを許しておけるものか。


いつもであればだれかしらがそばにいた。


誰もいないその時をねらったそれは、確かに計画的なもので。




この子の前に現れたくはなかった。



この子がこの世界で生きたいと、そういうのであれば、私はそっとしておくつもりだった。


だってあの世界に戻る意味をなくしてしまうことになったんだから。







「どう、して、」





この子に触れた汚らわしい忍びたちの腕を、刃で落とす。

こちらに向かってくるくないを軽くいなして、この子を守るそのことに全力を注いで。



そうして、最後の一人がそこから崩れ落ちた瞬間、彼女の口からは言葉が落とされた。



どうして、それは疑問の言葉。

何に向けられたのか、誰に向けられたものなのか。

まだそれは分からない。

だってまだこの子に顔を見られてはいないから。



「どうして簡単に人を殺せるの、」




それは、つまり、正義の言葉。




人を殺してはいけない。

あの世界での常識。

人を傷つけてはいけない。

あの世界での当然。



けれども、ここは、そんな世界じゃ、ないの。



守るためには傷つけなくちゃ。

死なないためには殺さなくちゃ。



きれいごとなんて、いってられない。



生きるために、殺めるの。

自分を生かすために、相手の命を奪うの。




でも、この子がそれを知る必要はない。



「ひどい人」

「殺しておきながら手を合わせもしないなんて」

「かわいそうな人」

「それがいけないことだとも知らないで」

「残念な人」

「傷つけることでしかいきれないなんて。」




ああ、でも、この子の口からききたくはなかった。




私はあなたにもう一度会いたいがためだけに、ただ、この世界で生きていた。


あの世界にもう一度戻るそのためだけに、この手を殺めてきた。




だというのに。



あなたが私を否定するならば、私は何のために生きればいいの。


あなたが私を認めてくれないのならば、私はどうやって生きていけばいいの。









「人を傷つけることでしかいきれない人なんて、大嫌い」









あなたが私を嫌いだというのならば、私はもう生きている意味はないわ。












戻る