ドリーム小説
5
「天女さん!!」
もう遅い。
上級生の登場に、この子はふわり笑って見せる。
それでも青ざめた顔は消えることはなく。
知っていた。
彼らがこの子の前では人を傷つけぬようにしていたこと。
知っていた。
彼らがこの子を狙う様々な組織を秘密裏に処理してきたこと。
知っていた。
慣れないこの子が傷つかぬように、やわらかく包み込んでいたこと。
そして、あなたたちも知っていたでしょう。
このままではこの子がここで生きていくことはできないということを。
ならば私が教えましょう。
この子がいないあの世界に未練などない。
この子が嫌う私などに意味はない。
ならば最後に私がこの子に残せるものは、
この世界で生きていくにはなくてはいけない心構え。
「生きるために、忘れないで。」
「生きるためには殺さなきゃいけないの。」
「傷つけないためには、傷つけなきゃいけないの。」
「いつまでもあなたを守れればよかったけれど、嫌いと言われてしまったから。」
「もうあなたのそばにはいれないわ。」
この子の瞳が驚きで、見開かれていく。
外した頭巾で顔がよく見えるようになったから。
この子の口から私の名前が紡がれること、とてもうれしく思うわ。
だから、
あなたのために命を落とせるそのことだって、
私はとてもうれしいの。
「私はそれでも、大好きだったわ。」
あなたの後ろ、最後の力を振り絞る侵入者。
それが放つ刃から、ただあなたをかばって。
深く体にねじ込まれる刃。
痛いというよりも熱いそれ。
きっと毒でも含まれていたのでしょう。
私はあなたが生きていてくれればいいの。
あなたがいない世界に興味などはないから。
倒れ行く視界の中で、こちらを驚きの表情で見つめる鉢屋がただ、印象的だった。
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