ドリーム小説
「!」
私の名前を呼んで、私に触れる。
大きなそのからだとは裏腹に、私に触れる手はやさしくて。
褒美として与えられたその先のことなど想像していたのに。
それは思っていたものとは全く違って。
慈しむように、私の名前を呼ぶ。
壊さないように、そっと触れる。
宝物を隠すかのように、私を抱きしめる。
「小平太様」
名前を呼び返せば、まるで太陽みたいに笑う。
やさしい、とても優しい陽だまりのような、ぬくもりを持つ人。
皆がうわさするその姿を私は知らない。
だからこそ、ここにいるこの人が、私が知るこの人のすべて。
「不都合はないか?」
私を貰い受けたとき、彼は忍び用に与えられていた宿舎から出た。
私の足では随分と時間がかかる、それでも彼の足だとすぐについてしまう、そんな城との距離。
彼は、私をそこに連れて行ってふんわりと笑った。
「私は至らぬところばかりだと思う。それでも、この場所で私の帰りを待ってくれるなら嬉しい。」
それは、単なる言葉であるはずだった。
けれども、私の心の中、じわりじわりとしみこんでいって。
忍びという存在である彼が、私に帰りを待っていてほしいと、願った。
私に存在意義を与えるかのように。
私にこの場所にいてもいい理由を与えるかのように。
「小平太様。私はこの場所であなたの帰りをお待ちいたします。」
私を必要だと、望んでくれるのであれば、これからの私をすべて、小平太様あなた様のためだけに。
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