ドリーム小説
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伍
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「おや、また逃げたの?」
ひょこり、生物委員会でかっている兎が草むらに現れた。
思わず見つけたそれに手を伸ばす。
が、なぜだろうか。
私は動物が好きだ。
生き物が好きだ。
生物委員会とか、もう本当に天職だと思っている。
だが、しかし。
「いたい・・・」
動物たちは私をどうやら好いてはいないようで。
差し出した手は可愛らしい兎だというのに全力で牙をむいていて。
「はあ・・・」
しかし、私は生物委員会の委員長。
ほおっておくなど選択肢にはないわけで。
「怖くないよ〜。」
茂みから全く出てこようとしない兎にちょいちょいと手を差し伸べるが、相も変わらず動く気配は見えなくて。
「先輩?」
困っていた私の後ろからよく知った気配。
それはひょこりと覗き込んできて。
「やあ、八左衛門」
そのぼさぼさの頭に手をやってぐしゃぐしゃと撫でてやれば動物のように気持ちよさそうに目を眇めて。
・・・なんだか顎の下まで撫でてみたくなるような。
「そういえば、なにしてるんですか?」
あ、と小さな声をあげてひょこり、首をかしげた八左衛門。
一つしか変わらないのに、可愛いなあこいつ。
「う〜ん。兎が逃げたみたいでね。」
頭をなでながら言葉を続ける。
「でも、私にはなついてくれてないから」
それにきょとりとした顔をした八左衛門は兎を抱いてにかり、眩しい笑みを見せた。
「先輩。こいつらみんな、先輩のこと大好きなんすよ。」
「ん〜毒虫たちに好かれている気はしてるけどなあ・・・」
「先輩に近寄るのが怖いんじゃなくて、恐れ多いとか思ってるんじゃないですかねえ。」
慰めなんだかよくわからない言葉をかけてきた八左衛門。
「あ、先輩、じゅんこ。」
「え、ぐえ、」
八左衛門の言葉にあったかい気持ちになっていれば、思い切り、首と背に衝撃。
どうやら木の上から降ってきた赤い彼女が私の首に巻きついたようで。
「くる、し、」
「ほら、じゅんこ。先輩のこと好きなのはわかるけど、それじゃ先輩が息できないぞ?」
どうにかこうにか八左衛門にはがしてもらったじゅんこ。
「はあ、さて、と。では君のご主人のところに向かおうか。」
「俺もついていきます。」
彼女の体をそっと支えながら八左衛門と一緒に孫兵の元へと向かった。
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生物委員と。
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