ドリーム小説
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ちっちゃい彼女 壱
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温かなお日様が降り注ぐ気持ちの良い春の日。
うららかな昼下がり。
うとうとと睡眠を誘われるようなそんな時間。
とある学校のなかのとある図書室。
そこには道行く人をぎょっとさせるような不思議な声が響いていた。
「うぎぎぎぎっ・・・」
必死に背伸びをしながら目的の本に手を伸ばす一人の女子生徒。
名前はといい、この高校に通う三年生だ。
「うぐぐぐぐぐっ、と、どかないっ、」
その本はまるでを笑うように、あと一歩のところで届かない。
本人はいたって真剣、まじめなのだが、はたから見れば必死で背伸びをしながら奇声を発しているあほの子である。
「こんのっ、ちくしょうっ!ただの本のくせにっ、この、私、をっ、おちょくるとはっ!」
いささか口も悪いようだ。
息も切れ切れに必死な様は、なんというか、こう、笑える。
口を開くくらいであれば図書室に一つは必ずおいてあるであろう踏み台をとってこればいいのに。
と、思うが残念ながらの足元にはすでにそれが存在していて。
「くそうっ、なんっで、背が伸びないんだっ!」
もう何に怒っているのかわからない。
ちなみにその身長、140センチ台という高校生にしては少しばかりちまっこい。
そしてとりたい本はこれまた一番上の段。
図書委員の陰謀か、とかなんとかつぶやいているが、図書委員にそんなことする利点はない。
「っ、あーもー!」
いい加減堪忍袋の緒が切れそうだ。
と、その時
「これか?」
ひょい
そんな軽い効果音と共に、後ろから伸びてきた手によって目的の本はあっさりとの手の中に収まる。
きょとり
「え、あれ?」
その一瞬の出来事に理解がついていけずぽかんとした声を出せば、くつりくつり後ろから笑い声。
慌てて振り向けば目に入る銀色の髪。
そして楽しそうに笑む顔。
踏み台を使っているにもかかわらず、ほとんど変わらない背丈。
というかの方が若干低い。
「それでいいんだろ?」
楽しそうに、改めて確かめるように聞かれてようやく後ろの彼がその本をとってくれたことに気づく。
「あ、ありがとうございます。」
謝りながらそっとお辞儀すれば、ふ、と目に入ってくる上履きの色。
この学校では上履きの色で学年を判断するのだ。
の上履きは三年生の深緑。
そして目の前の彼の色は紺色。
つまり一つ下の色だ。
「・・・うえっ!?年下?うそ!?でかっ!!」
思っただけのはずの言葉はあっさりと口から出ていて。
やばい、がそう思った時にはもうすでに目の前の彼は大爆笑。
「くっ、ははははっ」
おなかに手をやりひいひいいいながら笑う。
目じりには涙が見える。
「…そんなに笑わないでよ。」
むっとしながら返す。
と、
「八ちゃん。ここは図書室なんだけど?」
ゆらり、本棚の影から現れた一人の少年。
にっこりと笑いながらその顔は笑っていない。
「図書室で、さわぐな、しゃべるな、わらうな。」
そんな少年を見た瞬間、ぴしり、固まった彼は
「わ、悪かった。もう出ていくから!」
それだけいい置くと走って出て行った。
それが彼、竹谷八左エ門との始めての接触だった。
友人、樹リクエスト。竹谷現パロ。
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