ドリーム小説
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ちっちゃな彼女 四
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真っ白な世界が目にまぶしい。
吹きつける風に身を縮めるようなそんな冬の日。
とある高校のとある場所で、一人の少女が相も変わらず小さな背丈で必死に背伸びをしていた。
「ううううっ、もうっ、まじでとどかない・・・」
学習しない子である。
「だって、あと、1ミリ、あれば・・・」
1ミリあったところでまったく状況がよくなるとは思えないが。
「あんの社会科教師・・・!」
放課後、帰るために廊下を歩いていれば社会科担当教員に捕まった。
『すまんが社会科準備室においてある赤い箱を教室に運んでおいてくれ。』
どうやら明日使うらしく、たまたま歩いていたに白羽の矢が立ったのだ。
「うぐぐぐぐっ、なんっで赤いんだよ箱っ。」
怒りが理不尽すぎる。
箱には何の罪もない。
ただ、社会科の先生の手によって高い棚の上に押し込まれただけだというのに。
「うがあああっ!!」
やってられるか!そんな意味を込めて叫んだ声は、やはりくつりとした声に遮られて。
ひょい。
三度目のその感覚にももう慣れた。
「・・・ありがとうございます。」
相も変わらず綺麗な銀髪はにっこり、笑っていて。
「どういたしまて。先輩。」
むすりとした表情のをみてさらに笑う。
笑われることによって、の機嫌は急降下。
もともと早く帰って再放送の昼どらを見る予定だったのにそれさえもできずもともと機嫌は悪かった。
つまり、はぶちりと何かが切れたようだ。
「っ!みてろ!いつか君よりずっとずっと大きくなって見返してやるからな!!」
よくわらかない方向に。
手伝ってもらっておいてそれはないだろう。
しかも残念ながら成長期はもう終了しているとみられる。
これから先、伸びることは身体測定での測り間違いしかないだろう。
が、しかし、目の前の男の何かに引っかかったらしい。
今まで笑っていた目がすっと細められ、彼は手に持っていた赤い箱を地べたに置く。
そして、一歩。
との距離を縮めた。
なんだ、やるのか?!
その一歩に驚き、びくりと体を震わせたはファインティングポーズをとって見せる。
一歩。
また彼は近づく。
は下がる。
近づく、
下がる
そして
「ひっ!」
背中が棚に激突した。
もともと距離はそんなになかったのだ。
目の前には彼の顔。
よく見れば綺麗な顔だ。
だが、それを思うと同時。
とんっ、と軽い音を立てての両側に腕が、おかれる。
つまり逃げられないように、腕ではさまれた。
しかも、掌でない。
肘から手首にかけてべったりと壁にくっつけておいたのだ。
必然的にぐんっ、とその端正な顔がより一層近づく。
「ちょ、まっ、」
よくわからないが近づくそれに、顔が、体が赤くなる。
上から覗き込むような顔。
見下ろされるそれは気分がよいわけでないが、もうそんなことどうすることもできなくて。
これまたよくわからない声を発するにくつり、目の前の彼は愉しげに笑む。
「背、そのまんまでいてくださいよ。」
近づいた顔。
唇に微かに感じる吐息。
もう、の頭のなかは、真っ白だ。
「背、高くなりたいんだったら俺が持ち上げてあげますから。」
もう何を言われているのかわからない。
「七松先輩じゃなくて、今度からは俺のとこに来てください。」
でも、焦って頭は真っ白で、その距離が離れることだけを望み必死に首を縦に振る。
「じゃないと___」
そっと、微かに触れた唇の熱。
それはそうだと理解する前に、彼の唇は耳元にあって。
「食べちゃいますよ?」
「っ、」
始め怒っていたはずの感情は、もう制御しきれず。
ただ、目の前にある熱に必死で首を振ることでしか反応できなくて。
くつくつ
耳元の笑い声も、もう、なんか、どうしようもなくて。
「それからそろそろ、俺のこと名前で呼べよ。___」
「失礼しま〜す。」
の頭が沸騰する。
その瞬間、がらり、開いた扉。
その先には黒髪の少年。
「っ!」
恥ずかしさのあまり全力で逃げだした。
驚いて、思わず手を緩めていた八左エ門。
「か〜ん〜え〜も〜ん〜!!??」
扉を開けた人物、勘右衛門は、ふにゃり笑っていった。
「邪魔してごめん。はっちゃん。でも、無理強いはいけないよ?」
「無理強いはしてねえよ。さて、と。じゃああの人俺の名前知らないままだろうから教えに行ってくる。」
そう言って八左エ門は彼女を追って走って行った
「ね、名前で呼んでくださいよ。」
「絶対嫌だ!」
それからしばらく、校内でそんなやり取りがよく目撃されたとか何とか。
おそまつ!
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