Valentine's Day
2月4日 269年に殉教死したローマの司祭、聖バレンタインの記念日。
この日に愛するものに贈り物をする。
日本では、1958年頃から流行。
ちなみにこの日にチョコレートをあげるという習慣は日本のものである。
お菓子メーカーの策略による。
そう。
今日は2月4日。
いわゆるバレンタインデーという日だ。
といっても、あげる人もいない上、料理音痴の私にはまったく関係のない日。
だが、嫌いではない、否むしろ大好きな日だ。
何故なら、この日はいつもは自腹で買わなくてはいけない大好物のお菓子類がただで手に入る日だから。
「先輩っ!これ頑張って作ったんです!・・・食べてくれます?」
そう言って首を傾げ不安そうに傾げ見上げてくる後輩の女の子。
その子に私は微笑み答える。
「ありがとね。あんたが頑張って作ってくれたんだ。もらわないわけないだろ?」
そう言って差し出されていた、かわいくラッピングされていた箱を受け取る。
中からは甘いにおいが漂ってくる。
受け取ってもらったことに安心したのかふわり、まるで甘い甘いデザートのように微笑みその後輩は帰っていった。
「・・・たらし。」
席に戻った、私にかけられるは冷たい声とじとりとした目線。
「何故?かわいい後輩があんなふうにわざわざもって来てくれたのに受け取るなと?」
むっとしたように淡々と返した私に友人は大きく溜息をついた。
そして私をきっとにらみつけると指を指していった。
「成績優秀なうえバスケット部エース、加えて176センチの身長!さらにはいつもはとことん無表情なくせにお菓子をもらうという条件により発動する、その笑顔にくさい言葉!!あんたをたらしと呼ばずして誰をたらしと呼ぶ!!」
「・・・すごい息ついてないよ今の。」
「そんなことはどうでもいい!!」
ぱちぱちと手をたたいて言うがすぐさま切り捨てられる。
「・・・あと、私身長178になった。」
「それもどうでも、・・・たかっ!あんたまた高くなったの?!」
「成長期だからね。」
「悔しい!!あたしは160しかないのに!って、だから、それはどうでも良いんだって!」
「それと、人を指差すのは駄目だ。」
「〜〜〜〜っだぁかぁらぁ・・・・・・はぁ・・。」
思ったことを話しているだけなのに友人は溜息をつく。
・・・なぜだ?
と、
「え、身長177もあるの?俺様追いつかれないかなぁ・・・。」
二人の会話に割り込むは一人の声。
ええと、確か名は
「・・・さるとぶ?」
「いや違うから!俺様さるとびだよ!?猿飛佐助!!」
友人が口元に手をやり、肩を震わせているのが目に入る。
すぐさま訂正されたそれにそういえばと思う。
「・・・ああ。猿飛。」
肩を震わしたまま、それと同じ震える声が友人から発せられる。
「さるとぶなんか用?」
「さるとぶじゃないよ!?」
とてもいい笑顔で言った友人に、猿飛は反論する。
「ああ。はいはい。んで何?さるとぶ。」
が、それすらも聞く気はないのか友人は受け流す。
「俺様、へこみそう・・・。」
「安心してあなたがへこんでもこっちには何の害もないから。」
目の前で繰り広げられる友人と猿飛の言い合いを、ぼっとしながら見つめる。
ぴこぴこと揺れる橙色の髪は柔らかそうで、
「・・・猿飛の髪っておいしそう・・・。」
思わず呟いた。
その言葉を聞いた瞬間二人は動きを止めた。
「・・・俺様食べ物じゃないんだけど?」
「やめときなさい。こんなの食べたらおなか壊すわ。」
「だから、食べ物じゃないって!!」
再び始まった言い合いを見てるときゅるりとおなかがなる。
さっきの猿飛の頭のせいだ。
「・・・おなか減った。」
ぽつりこぼれた言葉に友人は溜息をつく。
・・・なんで?
対照的に猿飛はくすくすと笑ってかばんのなかから何かを取り出した。
「そんな君に・・はい。」
「・・・?」
そういって差し出されたのはお弁当箱。
それに首を傾げた私に微笑み猿飛は言った。
「あげるよ〜。」
開けたそこにあったのは
「っ、お菓子っ!」
「うんそうだよ〜」
大好物の甘いもの。
もらっていいのという気持ちを込めて見上げたそこにはふわりと笑っている猿飛がいて。
なんだか胸がきゅんとなった。
「どうぞどうぞ。」
言わなかったそれに気づいたのかそう返してきた彼におもわずこちらも頬が緩む。
「ありがとう、猿飛。あんたいいやつ」
なんだか猿飛はこちらに目を向けず、あさっての方向を向いてたけどそんなの気にも留めず、それをほおばる。
「・・・おいしい・・・。」
そう呟くとお菓子に向けていた目をがばりと目の前にいる人物に向けた。
そしてとてつもなく真剣に言った。
「猿飛。私の嫁になれ。」
それに目の前の友人がくわっと目を見開いた。
「あんたな「俺様プロポーズされちゃった?というか俺が嫁・・・そっちが旦那さん?」・・・」
かぶった言葉も気にしない。
「幸せにしてやる。」
「うわっ!どうしよう!俺様なんかきゅんとしちゃったんだけど?!」
手を握りふっと微笑んで言ってみせると猿飛は口元を押さえそう言った。
きゅん・・・?
「・・・そうか猿飛もきゅんってしたのか、おそろいだ。」
そう言って見上げた顔には驚きがあって。
「?」
首を傾げた私に彼は目を細め、身をかがめ私の耳元で囁いた。
「俺様が幸せにしてあげるからさ、俺様のお嫁さんになってよ。」
さっき私が言ったのと同じことのはずなのに、なぜか体温が上昇する。
「えっ、ぇあ・・・?!」
熱くなる顔に、自分の変化に驚いて、ちゃんとした声が出ない。
それに彼はさらに笑みを深めて、再び囁く。
「いつでも甘いもの、作ってあげるよ?」
「なる。」
即答した私に猿飛はたいそう綺麗に微笑んだ。
甘いお菓子をくれる君
「これからよろしくね?」
「うん。甘いものなら何でも食べれるよ。」
「猿飛!あんた何、この子たぶらかしてんのよ!」
「たぶらかしてなんかいないよ〜。」
(明日からお菓子代がかからないや。)
後書き
バレンタイン夢です。
フリーです。
こんなのでよかったらもらってやってください。
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