White day


<バレンタインデー> 3世紀のローマ皇帝クラウディウスが出した恋愛による結婚禁止令に違反した男女を救うため、
2月14日に殉死した聖バレンタインを記念して設けられたもの。

<ホワイトデー> それからひと月後の3月14日、その男女はあらためて二人の永遠の愛を誓い合ったらしい。
    この日を記念したのが<ホワイトデー>で、 ヨーロッパをはじめ世界中の多くの人々に語り継がれて
きた。



       ホワイトデー






俺様にとって、ホワイトデーとは、ほしくもないものを押しつけられた上、お返しにいらない出費を要する厄介かつ、面倒なもの。
だった。・・・去年までは。



成績優秀、バスケット部エース、身長176(この間178になったらしい。)加えて無口で無愛想。
そんな彼女は、甘いものを与えると、たらしになり、その形のいい唇から、きざな言葉をぽんぽんと発する。
そうしていつもは、無表情な顔をうれしさでいっぱいの笑みに変える。

そして、俺様は彼女のそんな笑顔にやられてしまったようだ。
その表情を始めてみた日、つまりバレンタインの日だ。
その日から俺たちの微妙な関係が始まった。

今日も今日とて俺様は可愛いあのこのためにお菓子を作る
。 彼女は俺のお菓子を気に入ってくれたらしく、持っていくたびに幸せそうな表情を浮かべる。
それを見るたび俺の心はきゅん(というか動悸が激しくなる。)とする。

ただ、なぜか今日は違った。
「おはよ〜。」
朝一番、可愛いあの子に挨拶をする。
「・・・おはよ。」
いつもどうり無愛想な返事。
だがどこか違和感を感じる。
「?・・・どうかした?」

身をかがめてそこまで大きくない身長差を覗き込む。 と、いつもは大して動じないそれにどことなく慌てて目線をそらし、なぜか手を体の後ろに隠した。
「・・・。」
じっと顔を見つめる俺様と顔を背ける彼女。
沈黙が走る。


「おはよー。・・・何してるのよ?」
その沈黙を破ったのは彼女の友人だった。
その声に彼女は救いが来たかのごとく、その友人の後ろに隠れた。
15cm近くある身長差で、隠れ切れていないのだがそれさえもなんだかかわいらしく。
「・・・!?・・・。・・・・・・!」
その友人と彼女がこちらに聞こえないような声で会話をする。
と、
キッとその友人に睨まれた。
「えっ、ちょっ、何で睨んだの?」
「・・・あんたがむかつくから。」
「えっ!?」
「私の可愛いこの子が・・・。」
「えっ、ちょっ、よくわかんないんだけど!?」
「・・・はっ。」
最後に鼻で笑うと後ろの彼女を押し出し、
  
    突き飛ばした。

「っ!?」
「はへっ」
奇妙な声と共に飛んできた彼女を受け止める。
状況を判断できていないであろう彼女は俺の腕の中でぱちくりと目を瞬かせる。
突き飛ばした友人に顔を向けると、手をはたきながらぶつぶつと、手が焼けるんだからもう、などと呟き席に戻っていく。
(えっ、これってどういう状態?俺様どうするべき?)

状況を理解したのであろう彼女はがばりと身をはなし、うっすらと赤い顔でこちらを見上げる。
(・・・なんていうか、可愛いんですけど!?この子!)
必然的に上目遣いで見てくる彼女に、随分この子にやられてしまっていることを改めて実感する。

ふ、と先ほど彼女が隠した指へと目が行った。

「!!どうしたのこれ!?何で指が包帯と絆創膏だらけなの!?」

そう。彼女の綺麗な指は白と茶色のコントラストがすばらしく、肌色の見える部分はほんのわずかで。
俺の声に驚いたのかびくりと肩を震わせ縮こまる。
(あ〜可愛い・・・。じゃなくて!)
保健室行くよ!そういって彼女の腕を引っ張って、教室を出た。
が、保健室に行く道ではない方向に彼女は俺を引っ張る。
「こっち、保健室じゃな「・・・一緒に、来て・・・。」・・・はい。」
慌てて軌道修正をしようとした俺様の声を遮ると、彼女はこちらを向かないで小さく言った。

つれてこられたのは屋上。
青空がすばらしく綺麗だ。

俺を引っ張ってきたまま手も離さない彼女。不思議には思ったが、彼女が自分から言い出すのを待つ。
「・・・。」
「・・・。」
こちらを向こうとしない彼女。
彼女の背中を見つめる俺。

沈黙の中遠くチャイムの音が響く。
(あ。授業始まった。・・・この子さぼる様な子じゃないのにね。)
そんなことを考えていると彼女の小さな声が聞こえた。

「ゆっ、友人に、今日、は、もらったお菓子を返す日、だと聞いた・・・。」

「・・・え?」

聞き取れなかったわけじゃなくて、その言葉に意味をなんとなくわかってしまったからもらした言葉。
彼女には、聞き取れなかったように聞こえたのだろう。
ぐるりとこちらに向き直り、赤い顔で今度は叫んだ。

「今日は、お菓子をもらったら、返す日だと聞いた!!だっ、だからこれ!」

そう言って彼女はどこからともなく

  タッパーを取り出した。

驚いて声が出ない俺様に彼女は近づいてきて手の上にそのタッパーを乗せた。

「私、料理できないから、おいしくない、けど・・・。」
そう言いながら俯いていく彼女が可愛くて、思わず頬がほころぶ。
「開けて、いい?」
そっと尋ねればこくんと頷く彼女。
それにタッパーの入れ物を開く。
香ばしいにおいと共にそこには

  クッキーと思われしものがあった。

彼女は以前に料理音痴だと言っていた。
食べる専門だと。
そして、今日の彼女の手の怪我。

それにどうしようもない愛しさがあふれ出す。

そのクッキーを一つ手に取り、口に運ぶ。

さくり

その音に反応したのだろう。
彼女は恐る恐るこちらを見てきた。
「それ、でも、ましなのもってきたん、だけど・・・。初めて作った、から、よくわかんなく、て・・・。」
そう言う彼女は不安そうにこちらをじっと見る。
つまりそれは、何度も作ってくれたということ。
(ぱっと見は焦げてるけど、俺あんま甘すぎるの嫌いだから、丁度いい。)

ごくんと飲み込んで何も言わない俺に、彼女の顔はさぁと青くなった。

「ご、ごめん。やっぱおいしくない、よね?」
そう言ってタッパーに手を伸ばす。
伸びてきた手を避けるように、ひょいと手を上に上げる。

「おいしいよ?俺様好みでほろ苦いところとか、大好き。」

その言葉に一瞬ぽかんとした顔になる。
そして次第に赤くなっていく。

「それに、君の初めて(作ったお菓子)、もらえてすごく嬉しい。」

そう言ってふわりと笑うと彼女も赤い顔のまま笑い返してくれた。
「・・・ああもう!可愛い!!」
それに耐え切れなくなり思わず彼女の体をぎゅっと抱きしめた。

「わっ」

驚きの声さえも可愛くてさらに強く抱きしめる。

「さっ、猿飛・・。」
「あ〜も〜っ大好きっ!!」

それに驚いたように体がびくりとはねる。

そしておそるおそる俺様の後ろに彼女の手が回る。

「私、も猿飛、好き・・・かも。」

「!!」

あ〜も〜!!何て可愛いんだろうこの子は!!




     <h2> 甘い気持ちをくれる君




「ところで、今までにホワイトデーにお返ししたことなかったの?」

「・・・ホワイトデーもお菓子もらえる日だと思ってた。」






後書き
バレンタインフリーの続編&佐助サイドです。
フリーですのでよければお持ち帰りください。
(3/14〜4/13まで)





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