相互リンク、有難うございます!



























「あ、若長、小平太先輩!どちらへ行かれるのですか?」


里の中、連れ立ってどこかへ行こうとしていると小平太の姿を見つけ、滝夜叉丸は2人に駆け寄った。
2人は滝夜叉丸の姿を見て、足を止め、彼が駆け寄ってくるのを待つ。


「今から若長に鍛錬つけてもらうんだ!」


にこにこ笑いながら小平太が答えれば、そんな彼を羨ましそうに滝夜叉丸が見上げた。
自分も稽古をつけて貰いたいが、昨日、相手をしてもらったばかり。
流石に昨日の今日でまた頼むような図太さも滝夜叉丸は持ち合わせておらず、けれど、やはり気になるものは気になるので、
小平太からへと視線を移す。


「あ、あの、もし、よろしければ、見学…しても大丈夫でしょうか…?」
「ああ。構わない。」
「あ、有難うございます!」


自分の頭をぽすぽすなでるにぱあ、と輝かんばかりの笑みを返し、滝夜叉丸はうれしそうに目を細めた。

「若長、滝、行こう!時間が惜しい!」
「そうだな。」
「はい!」

うずうずしている小平太に苦笑し、たちは鍛錬場へと歩き出した。
















3人がやってきたのは里の一番外れにある、特定の人物たち以外は使用しないということが暗黙の了解としてある鍛錬場。
そこは幼いが作り、三郎、小太郎と共に3人で使っていた場所。
今ではそこに若長の側近となった小平太や滝夜叉丸、伊太も入ることが許され、使用している場所。
大雑把に切り開かれた場所には数多の傷跡が刻まれていて、どれほど使い込まれているかを物語っていた。


その中央、一番開けた場所にと小平太は立ち、互いに向かい合い、小さく頭を下げる。
滝夜叉丸はそこから少し離れた場所でじっと様子を伺っていた。



「よろしくお願いします!」
「ああ。」



元気良く小平太が返事をした後、さっと構えを取り、2人とも一気に纏う空気を鋭くさせる。



「2割」
「はい!」


の言葉と共に小平太が躍り出た。

繰り出される拳を全て手のひらで受け、たまに繰り出される蹴りは全て流しつつ、もたまに攻撃を仕掛けていく。
小平太はから繰り出される攻撃を避けたり、受身を取ったりしながら隙を見てはまたへと攻撃を仕掛けていく。


「3割」
「はい!」


先ほどからが言っているのは、どうやら力の開放の割合なのだろう。
滝夜叉丸が見守る中、その言葉に合わせて小平太の攻撃の威力が変化していってる。
ただ、変則的に言われる割合に時折、小平太が苦しそうにしているのは、彼の表情から見て取れる。




「6割」
「はい!」


その言葉と共に小平太が拳を振りかざした。
しかし、はその拳を手のひらで受けず、ひらりと身をかわしてよけた。


「わっ!」

小平太はそのままの勢いで地面を殴りつけた。


ごっ


と音がして彼の周りに小さなクレーターが出来上がった。


「あ…。」



「力の解放が8割、といったところか。」

「ご、ごめんなさい…。」


地面から拳を引っこ抜き、傍にやってきたへと小平太は頭を下げた。


「変則的になればなるほど、制御が甘くなる。それと、全ての攻撃を俺が受け止めると信じ込むな。避けることもある。
敵と向かい合うときなどは特に、相手の出方がわからない。それを読むことにより、こちらが有利になることもある…。
修行だ、稽古だ、鍛錬だと、敵と向かい合うときと区別をつけるな。いつだって目の前には敵がいると思え。」

「はい!もう一度お願いします!」


ぱっと顔を上げ、背筋を伸ばした小平太へ向かってうなずき、構えを取る。


「もう一度、6割」
「はい!」










再び開始された稽古を見ながら、滝夜叉丸は首をひねった。

彼自身も、良くに稽古はつけて貰うけれど、なんだか、自分の時と小平太の時とではなんだか、違うように思えたのだ。
その違和感はわかるのだが、理由がわからず、クレーターの中で手合わせしている2人を見つめながら、
滝夜叉丸は何度も首を傾げ続けた。





「有難うございました!」

小平太がに頭を下げているのが見え、いつの間にやら鍛錬が終わったことに気づき、滝夜叉丸は慌てて2人の下へと駆け寄った。


「お疲れ様です!」
「ああ。」
「づが、れだぁああああ…。」

へろへろとその場に座り込んだ小平太を見て、は苦笑をもらす。


「あの、若長。お聞きしてもよいでしょうか?」
「何だ?」

おずおずと話しかけてきた滝夜叉丸を見て、は首をかしげる。





「あの、私と小平太先輩とで、稽古つけてくださるのに、なんだか違うな、と感じたのですが…。」

「ああ、それか。」

自分の横で座り込んでいる小平太を見て、はうなずく。



「接し方が違うからそれを違和感と取ったのだろう?」
「あ、はい。」


こくり、とうなずき、滝夜叉丸はついに大の字になって仰向けになった小平太を見た。


「小平太は鍛錬の最中に褒めると、気を緩ませる傾向にある。逆にお前は叱れば、萎縮して動きを硬くする。」

そこまで言っては滝夜叉丸と小平太とを見比べ、そしてもう一度口を開いた。


「小平太は飴と鞭の使い分け次第で伸び、お前は褒められて伸びるタイプだというだけのこと。」

「え、私は褒められて伸びるタイプなのですか!?」


初めて知ったとばかりに滝夜叉丸が驚きの声を上げるとは苦笑して彼の頭をなでた。


「まあ、そういうことだ。小平太、帰るぞ………って、大丈夫か?」


ごろごろと地面を転がっている小平太を見て思わず声をかけるの横で滝夜叉丸が苦笑している。


「地面冷たくて、気持ちいい〜〜。」
「こら小平太。傷に殺菌が入るだろうが。」

「はぁい。」


に軽く叱られ、小平太はよっと声を上げてぴょんと立ち上がった。


「さて、傷口を洗って翁のところへ行くぞ。」

「え゛。」


翁と聞いたとたん、顔を引きつらせた小平太の腕をつかみ、が問答無用で歩き出した。


「わ、若長!許して!許して!ごめんなさい!ごめんなさい!じいちゃんとこだけはやだ!」

「怪我を放っておくと膿み、その毒が体を回ってしまうことだってあるんだ。だめだ。」

「やだぁああああ!!だって、じいちゃんったら「戦場以外で怪我をこさえるとはいい度胸じゃの。」とか言って、
滅茶苦茶沁みる消毒液ぶっ掛けてくるんだぞ!?いさっくん思い出す笑顔浮かべて容赦なく治療してくるんだぞ!?」


「自業自得だ。」

「うわぁああああああんん!若長の鬼畜!鬼畜!」

「俺が手当てしようか?」

「ごめんなさい!若長の治療はいさっくん思い出すからごめんなさい!」



ぎゃあぎゃあ言いながらに引き摺られていく小平太を見て、滝夜叉丸は思わず合掌した。


(ご愁傷様です、小平太先輩)














後書き

煌那蔵様に捧げます!

とても楽しんで書かせていただきました!

こんな物でよろしければ、どうぞ、お持ち帰りください!

相互リンク、有難うございます!



※※※
『獏の観る夢』の飛駆さまからいただきました!
若長がかっこよすぎます!
素敵過ぎます!
こちらこそ相互感謝でございます。