小説
!!アテンション!!
いつものごとく趣味だけに走った拍手。
NOT夢。
NOT腐。
今回は「出会い」というか「再会」
すべてが現ぱろ。
記憶があったりなかったり、そんな彼らの再会です。
基本的にどれも話の展開一緒になった。
ちょっと調子乗ってほおずきとかIBとかある。
あ、むり、と思った方は瞬時にバックステップでの逃走をおすすめします。
!!目次!!
1 ここ
2 婆沙羅(記憶あり幸村と記憶なし佐助)
3 婆沙羅(記憶あり政宗と記憶なし小十郎)
4 忍卵(五年生 忘れてほしい三郎と忘れたくない尾浜)
5 忍卵(四年生 覚えている四年生たち)
6 海賊(記憶ありマリモとコックと記憶なし船長)
7 海賊(記憶あり杯兄弟 ↑の続き。)
8 TOA (記憶ありアニスとみどりっこたち)
9 鬼灯 (記憶あり白澤様と記憶なし鬼灯様)
10 Ib (生まれ変わってもう一回出会った話。)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
佐助と幸村
ずうっと、昔から、足りないものがある
・・・気がする。
それは、いつからなのか。
まったくもってわからない。
それでも、ずっと、何かが、足りない。
道を歩いているとき
食事をしているとき
勉強をしているとき
テレビを見ているとき
一人でいるとき
ふと、思い出す。
この傍らにあったはずの温もりを。
暑苦しいほどの、紅を
時折、浮かぶ情景。
赤い、赤い、色が。
世界に舞う。
俺様の先を行くように
俺様の道を示すように
その紅は、俺をみて笑うのだ。
そう、目の前の、この男のように___
「俺は、真田幸村だ!よろしく頼む!」
熱血、と称すのがふさわしいであろう、その男。
茶色の髪はぼさぼさとしながらも、不清潔な感じは与えない。
にかり、笑う表情は、それはそれは楽しそうで。
差し出された手は、がっしりとして見えて。
「ほら、手を。」
促されて、思わず手を出したけれど、どこか不相応に感じて。
捕まれそうになった手を、思わず引いた。
そうすれば、目の前の男は、少しだけ不思議そうに首を傾げて。
「なぜ、ためらう?」
俺ですらわからないその理由を知っているとばかりに、男は笑む。
「おまえの手は、汚れてなどいない。」
だから、大丈夫だとでもいうように、男は俺の手をつかんだ。
瞬間、体に走った違和感。
俺のものなのに、俺はすべて俺様のもののはずなのに、目の前の男にひざをつきたくなるような感覚。
男に手を捕まれていなければ、きっと体は勝手に動いていただろう。
「今度こそ、よろしくな、佐助。」
名前を呼ばれたことに、動揺が走るよりも、ようやっと、見つけたと感じた方が大きくて。
「よろしく、旦那。」
勝手に漏れでた言葉に満足そうに男は笑った。
大学の入学式
何の変化もないまま訪れると思っていたそれ。
しかしながら、その予感は大きくはずれて。
式場で目があった瞬間、何の躊躇もためらいもなく、男は俺に近づいてきて。
他の誰に目をくれることもなく、ただ楽しそうに俺の前で笑った。
始めてみたはずなのに、そんな気がしない。
ずっと、自分の内側で足りなかったものが、補われていくような違和感。
無条件で信じてもいいと、そう思いそうになる錯覚。
目の前の男によって、俺のこれからは、大きく変化していくと。
ただ漠然とそう思った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「俺の右目、みーつけた。」
突然俺の前に現れたその少年は、それはそれは楽しそうに口角をつり上げて。
俺をまっすぐに指さして、
謎の単語をはきやがった。
右目を眼帯で隠したその子供は、まだ小学生だろう。
しかしながら、その瞳の鋭さは、達観したように見せる表情は、決して子供の持つものではなくて。
「お前は何がしたいんだ。」
「ちげえよ。お前が、右目が俺の前に現れるんだろうが。」
俺の言葉に対して、子供は笑う。
俺を見つけた宣言をしてから、その子供は俺の行く先々に現れた。
人相、言動が悪いのもあり、異様に暴力団やら悪ガキ共に巻き込まれる。
喧嘩に負けることはほとんどないが、人を巻き込むのは面倒で。
だからこそ、この年まで、連れといえるような友人を作ることもなかった。
だというのに。
この子共はどこであろうと遠慮なく現れる。
俺が喧嘩してようが、何をしてようが。
そのため、この結果も当たり前だろう。
俺に勝てずに卑怯な手にでる輩。
自分の半分にも満たない子供を捕まえて、これ見よがしに見せびらかす。
お前のよく知る子供だろうが?
バカなことを言うんじゃねえ。
そんな子供のこと、俺は全く知らねえよ。
放っておくつもりだった。
俺には関係ねえと。
これにこりたら近づくことをしないだろうと。
だというのに。
「はっ、弱い奴ほど卑怯な手を使いやがる。」
簡単に輩を挑発して。
怒りの矛先を自分に向けさせて。
そうして、子供に向けられる拳。
ふつうであれば、それにおびえるものだろうに。
その子供は、ふつうではないわけで。
向けられた拳には目もくれず、
子供の目は、ただ、まっすぐに俺をみて。
楽しそうに、笑った。
俺が、助けないはずはないとわかっているかのように
「くそっ!」
その瞳に答えるのは癪で、でも答えないでいられるほど冷静ではなくて。
気づけば子供の前に体をねじ込み、その拳を受け止めていた。
「ほら、やっぱりお前は俺の右目だろ?」
Are you ready?
そんな言葉をはきながら、俺を見下ろすその子供。
一つだけの瞳が俺をまっすぐに射ぬいて
楽しげに笑みを漏らす。
それに、いらだちを感じたのは確かで。
でも、それに対して仕方がないというあきらめの気持ちも存在していて。
このお方にならば、仕方がないと、納得してしまう俺が、ここにいた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あれは、いったい、誰なんだろうか。
記憶の奥底。
ふとしたときに浮かび上がる、誰か。
知らないはずなのに、俺にとってのすべての理解者のように、わらう。
誰だったっけ。
その想いのまま記憶をたどろうとすれば、簡単にそれは記憶に埋もれていく。
思い出せない、というよりも、思い出してはおけないと、そういうかのように。
誰かが、言うんだ。
思い出さないで、と______
ねえ、でも、出会ってしまったら、どうすればいいの?
見た瞬間、ぞわりとしたんだ。
彼らが、彼らだって。
始めに、思い出した瞬間は、さいごのとき。
俺の、手が、刃が、大好きな友達を、かけがえのない親友を、
この手で、うばった、そのしゅんかん
あ、あ、あ、あああああああああああああああああ
手が、あかい
腕に走る重たさ
心臓を貫くその感覚
知っている、知っていた、しっている!!
この手が人の命を奪うときの衝撃を、そのあっけなさを
だって、おれは、何人も、なんにんも、
あかくあかく、くろくくろく、せかいが、きおくが、おれが、
きえていく
「勘右衛門、忘れろ。」
真っ暗な世界で、耳元で響く声。
その声は、俺の大事な友の一人のはずで、
穏やかな声は、優しく心臓を包むように。
「勘右衛門、もう、覚えていなくてもいいんだ。」
すべての罪を、洗い流すかのように。
「あの世界を、今にひきずる必要はない。」
優しくすべてを許すように
「全部私がもらうから、」
緩やかな、忘却。
「だから、安心して休めばいい、勘右衛門。」
うっすらと薄れていく記憶の中、ただ、思う。
でも、じゃあ、君は、君の記憶は、いったい誰が忘れさせてくれるの?
君は、この世界でも独りきりになってしまう。
どんどん消えるせかいのなか、たった一つの名前を必死で拾い上げて、叫ぶ。
「三郎___」
あのころの記憶は、苦しくてつらいけれど、でも、それだけじゃなかったでしょう___?
くたり、腕の中で力をなくした勘右衛門。
そっとそのからだを近くのベンチへと横たえて。
さらり、不思議な手触りの髪を、なでる。
「覚えていなくていいんだ。罪を、咎を、覚えるのは私だけでいい。」
記憶を、生まれたそのときから記憶を引きずる私。
そんな”私”に”鉢屋三郎”に出会ったことによって引き起こされる記憶の揺り返し。
そんなものはなくていい。
今までこの世界を生きてきたことを、否定するような、そんな記憶はいらない。
「本当に、おまえは優しいよ勘右衛門」
どんどん崩れていく記憶の中、たった一つ、私だけの名前を拾い上げて、叫んだ。
確かに、私の名前を。
すべて、忘れてくれればいいのに。
私を目にして、ただぼとぼとと涙を流した兵助のように。
私を目にして、不安と絶望に押しつぶされるように黙り込んだ八のように。
私を目にして、ただただ、怒り叫んだ雷蔵のように。
彼らの目をふさいで、耳元でただ、忘れてしまえとつぶやいて。
持っていた知識から調合した薬を使って、彼らの記憶を取り払って。
そうして、すべてをあっさりと忘れてしまってくれればよかったのに。
最後の最後、後一人、ただおまえだけだったのに。
すべての記憶と共に消えてしまうはずだったのに。
__三郎___
おまえが、俺を呼んだりするから。
私の中の、俺の中の決心が揺らいでしまうじゃないか。
どうか忘れて生きてほしい。
あのときを完全に忘れて。
たくさんたくさん、最後に裏切った俺を、すべて忘れてほしかったのに。
勘右衛門、最後におまえが俺の名前を拾い上げたりするものだから、惜しくなってしまったじゃないか。
「なあ、勘右衛門」
瞳を閉じたままのおまえに、答えをねだる。
「縋ってしまうよ?おまえが覚えていてもいいのだというならば、私はおまえに願ってしまう。」
返事がないのはわかっているのに。
「この世界では、独りになりたくないと。」
願って、しまう。
頭をなでていた手を引いて、立ち上がる。
さようなら、の言葉を小さくつぶやいて、ゆっくりと勘右衛門に背中を向けて。
未練もすべて断ち切るように、足を、一歩、踏み出したのに。
「縋っていいよ、願えばいいよ。」
勘右衛門の声が、響く。
ただ、事実を告げるかのように緩やかに。
私を許すように、ゆるやかに。
「ねえ、三郎。ずるいよ、あんなに楽しかった記憶を全部一人で持ってくなんてさ。」
少しだけおどけたように、勘右衛門はつぶやく。
ゆっくりと振り返れば、泣きそうに笑う彼がいて。
「俺にも一緒に、抱えさせてよ。」
笑って伸ばされた手を、こばめるはずなんて、なかった。
※※※
たった一人記憶あり三郎。
と、それ以外。
記憶はないけど、三郎をきっかけに思い出す。
最後にみんなを裏切った三郎からすると思い出してほしくないので、思い出すたびに記憶を奪う。
が、勘右衛門にあたって、あえなく玉砕。
これからたぶんみんなで思い出して、三郎と一緒に生きていけばいいと思う。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
覚えている
緑豊かなあの時代を
生きる術を手に入れるために入った学び舎を
そこで得たかけがえのない仲間たちを
そして失った大切な感情を
今でも鮮明に思い出せる
この手が切り裂く人の体を
生きとし生けるものが持つ紅い色の軌跡を
自らを生かすための代償を
そう、あの時代で、あの場所で、
私は確かに
”しのび”
であった
この時代では、不必要なそれら。
けれども私は確かにそれを覚えていて。
「この手は、もう何も奪わなくてもいいんだよ。」
喜八郎が、呟く。
こてり、私の背中に背を預けながら。
「自由に、未来を選んでいいんだ。」
三木ヱ門が、紡ぐ。
もう鮮やかな色をしていない掌をじいっと見つめながら。
「過去にとらわれる必要は、ないはずなんだ。」
小さく小さく言葉を放てど、いまだに過去にとらわれ続ける私たち。
助けて、助けて
幼いころは何度も記憶に引きずられて、泣き叫んだ。
でも、今、そんなことができるほど子供ではない。
すべてを割り切って、笑って過ごせるようになれればいい。
でも、今、そんなことができるほど大人にもなりきれていなくて。
助けて、助けて
何度も何度も繰り返す、言葉にならない言葉たち。
それを、拾ってくれるのは___
「滝ちゃん、三木ちゃん、喜八郎。」
金の色。
迷いのない、道標。
柔らかな色。
穏やかな微笑。
私たちの太陽が、そこにあった。
「タカ丸さん」
呼べば、返事があって。
手を伸ばせば、握ってくれて。
泣き出しそうになれば、頭を撫でてくれて。
タカ丸さん
私たちは、心から思う。
あなたがおぼえていなくてよかった、と。
私たちにとって、かけがえのない仲間で、友。
同学年だったけれども、年上で、私たちよりも長く生きていて。
技術は、能力は、私たちのほうが上だったのに、
いつだって、気が付けば守られていた。
かばわれていた。
「タカ丸さん。」
この世界でもあなたの存在は私たちにとっての支えです。
あなたに紅は似合わない。
どうか、思い出さないでいてください。
あなたは、綺麗な色のままで。
滝夜叉丸が、三木ヱ門が、喜八郎が、僕を見て泣きそうに笑うから。
僕はまた一つ、嘘をつく。
僕が覚えていることを、彼らは知らない。
あの世界のこと。
すべてを鮮明に記憶し続けていることを。
君たちは、知らない。
でもね、いつだって守ってくれていた君たちが、僕が覚えていないことを望むならば、
君たちの望むとおりに。
でもね、覚えておいて。
やっぱり君たちは僕にとって守るべき存在なんだ。
大事な友で、仲間で、戦友で。
そして、大切な存在。
君たちにこの世界で出会えなければ、僕はきっと壊れていた。
この記憶に押しつぶされて、飲み込まれて。
そうならなかったのは、君たちのおかげ。
僕の名前を呼んで、僕に触れて、僕に笑ってくれた。
それがどんなに奇跡だったのか、君たちはきっと知らないね。
だから、僕は今日も嘘をつくよ。
※※※
覚えている四年生。
タカ丸が覚えていることを知らない三人。
覚えていてほしくないのでどうか、そのままでいて、と願う。
覚えていることを隠しているタカ丸。
君たちが望むなら君たちのために。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
その色を見た瞬間に思ったんだ。
「なんっか、始めて会った気がしねえなあ!」
俺の言葉に、緑色は、黄色は、どこか疲れたようにため息をはいた。
エースとサボに勉強を教えてもらって、ようやっと入学することができた高校。
別にここじゃなくてもいけるところはあったけれど、ここが、絶対にいいって、俺の勘が告げて。
そして、割り当てられたクラスには行った瞬間、目に入ってきた色。
黄色と、緑。
そいつらは、俺を見た瞬間、大きく目を見開いて。
黄色はどことなく嬉しそうに
緑は安心したように目を細めた
「そうだよな、お前はそういう奴だよな・・・。」
いい匂いを身に纏う黄色がつぶやく。
きっとこの黄色の作る飯はうまいに違いない。
「知ってたけどよ・・・なんか腹立つな。」
緑があきれたように言葉を発する。
こいつはバカみたいに強いんだ。
「「なあ、ルフィ。」」
呼ばれた名前。
「あれ・・・?」
俺、いつ名前教えたっけ。
「俺らが知らねえはずねえだろうが」
ふわり、浮かんだ疑問は、彼らの言葉で一瞬で溶けて。
「ああ、そうだったな。」
代わりにああ、知られてて当たり前だった、との言葉が浮かぶ。
「俺らの名前も覚えてねえのか?」
意地悪そうに笑う緑。
知らない、そう答えるはずだったのに。
「・・・ぞ、ろ?」
簡単に言葉は口をついてでて。
「じゃあ、俺もわかんだろ?」
黄色がくしゃり、笑う。
「、さん、じ・・・」
しらない、はずだったのに
少なくとも、こいつ等二人に会うまでは、知らなかったというのに。
今までが、錯覚かのように。
なんで、こいつらは俺を知っていて
なんで、俺はこいつらをしっている?
でも、それは疑問へと昇華することなく、俺の中にとどまった。
ゾロ、お前は、
すごく強くて、俺の背中をいつだって預けてた。
俺の間違いにいち早く気づいて、それが間違いにならないように修正してくれていて。
サンジ、お前は、
すごく上手だった、料理にかぎらず、いろんな事に対して。
器用で、いつだって、俺の後を整えるように歩いてくれていた。
ああ、なぜ、知っているのかだって?
ちがう、そうじゃない。
俺が、知らないはず、ないんだ
俺の、大事な、掛け替えのない、仲間たち。
そう、知らないはずが、なかったんだ。
「思い出したか?船長。」
ゾロが、両目に俺をしっかりと写したゾロが、にやりと笑う。
「クルーの顔、忘れてるとかひどいんじゃねえの?」
サンジが、ぐるぐる眉のサンジが俺の頭をなで回す。
あふれていく、記憶たち
ゾロ
一番に仲間になってくれた頼れる俺の右腕。
ナミ
強くて怖くてもろい俺の航海士
ウソップ
うそつきで弱虫でお調子者の俺の狙撃手
サンジ
気が利いて何でも作れる俺のコック
チョッパー
動物も人の気持ちも分かる優しい俺の医者
ロビン
訳ありで物知りで意地っ張りな俺の考古学者
ブルック
骨だけどいろんなことを知っている俺の音楽家
フランキー
かっこよくてスーパーな俺の船大工
それからほかにもいっぱいいっぱい
俺の大事な仲間たち。
思い出した今ならわかる。
どうして忘れていられたのか。
それは、きっと、
こいつらがいない世界で生きていけるほど俺は強くなかったから。
「「ルフィ。」」
再度呼ばれて促されるように手を、のばされて。
答えずにいられるわけがない。
「ゾロ、サンジ!」
手をのばして、掲げて。
あのときのように仲間だと示すように。
「また、よろしく」
それだけを口にして、ただ笑いあった。
同時に蘇った、エースが死んだときのこと
守りたかったのに、守れなかった。
俺がまた、足手まといになってしまった
あのときの記憶を___
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
知らなかったはずの弟が、
すべてを忘れていたはずの弟が、
俺をずっと兄だと、兄ちゃんと呼んでいた弟が、
俺を見て、確かに言ったんだ。
「エース!」
って。
突然、本当に突然。
朝家を出るときはふつうで。
俺とサボで見送って。
そして、帰ってきた瞬間に、泣きそうになりながら叫んだんだ。
「どうした、ルフィ。」
思わず問えば、近寄ってきた弟が、俺の服をぐっとつかんでほとんどなきかけで言葉を紡ぐ。
「エース」
「エース」
何度も何度も俺の名前だけを繰り返す。
この時代では呼ばれたことのなかった呼び方。
それは、じわじわと昔を思い起こさせて。
「俺を、守ってくれてありがとう。」
いつ?その疑問は言葉になる前に、ルフィ自信の言葉でかき消された。
「エースが、あのときエースが守ってくれなかったら、俺は死んでた。」
まさか、その感情につきる。
だって、どうして、覚えていなかっただろう、おまえは。
頭によぎる、最後の瞬間。
腕に抱きしめた、こいつの温もり。
すがりつく腕。
俺の名前を必死で呼ぶ声。
「ルフィ、」
思い出してほしくなんてなかったよ。
俺が死んだときのことなんて。
そんなつらい記憶のことなんて。
「でも、エース」
ふるえる手でそのくしゃくしゃの髪をなでれば、どん、と胸をたたかれて。
「エース、ずるい。おれにはいつもまもらせてくれないのに。自分ばっかり!」
まるで幼い子供のように、ルフィは叫んだ。
あのころいえなかったことを、今、伝えようとするかのように。
「ずるいよ、エース!!」
何度も、何度も繰り返して胸がたたかれる。
痛い、そのことばすら生きている実感につながって。
「おいて逝かれる方が、どんなっ、気持ちかっ、エースは知ってたのに!!」
確かに、知っていたよ。
おいて逝かれるその気持ち。
でも、それ以上に、生きていほしかったんだよ。
俺の大事な大事な弟に。
俺の存在理由である存在に。
俺を必要と叫んでくれた小さな子に。
俺が生きてきてよかった、そう思わせてくれたルフィに
「でもっ」
ぴたり、叩かれていた拳が、止まる。
代わりに胸元のシャツをぐっと握られて。
「でも、生かしてくれてありがとう!」
悔しいけど、そんな感情が伝わってくる。
ああ、そう言ってもらえるならば本当によかった。
俺が果たせなかった夢を、ルフィがかなえてくれたのか。
それを聞こうとは思わないけれど。
それでも。
「おかげで、俺はかけがえのないものに、たくさんであえた。」
おまえが大事なものをもっとたくさん見つけられるそんな時間になれたならば。
うれしくないわけがない。
こちらを見上げた瞳はすがすがしく、少しだけ笑みを携えて。
「おかえり、エース!!」
否、満面の笑みでそう言った。
目の前がゆがむ。
あのとき守った存在が、俺が守った存在が目の前で笑うのが見える。
それだけで___
「ルフィ。」
がしり、組まれる肩。
重さと同時に安心できる温もりが広がって。
「俺にはないのか?」
サボが、俺を支えにしてルフィに笑って問いかける。
「サボ!」
ルフィが笑う。
俺とサボにむかって。
あのとき実現できなかった、三人でまた会える日。
それが、今
時代を、時間を超えて、今ここに____
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
アニスとオリジナルイオン様だけが記憶があるお話。
どうして、どうして、どうして。
その姿を見た瞬間、その言葉しか浮かばなかった。
どうしてあなたが、
あなたが、ここにいるの?
動揺してふるえるからだ。
それを隠すように必死に声を抑えて。
それでも、目が、はなせなくて。
じっと、ただただ、見つめてしまう。
そして、ゆるりと、目が、あった。
緑色のとてもとてもきれいな瞳。
私をみて不思議そうに瞬いた後、ふわり、とてもきれいに笑ったあなた。
その意味を知っている。
あなたは覚えてないのでしょう。
私が犯した罪を、あなたが救ってきた人たちを。
私があなたにしたことを
あの世界での、私のたった一人の主様
私が、命を懸けても守らなくてはいけなかった人。
そして、私が、
こ ろ し て し ま っ た、人。
どうして、どうして、どうして。
どうして、ここにいるの、ねえ。
”イオン、様・・・”
彼の向こう、彼と同じ色をした一人が、私をみてただわらった。
「覚えてるんだ?」
にこにこと、それはそれは愉しそうに、彼はそういった。
”イオン様”と同じ顔で、同じ声で、同じ姿で。
私の知っている、イオン様ではない人が。
「オリジナル、イオン様・・・」
つぶやけば、彼の笑みは深まって。
「そうだね、確かにそれが僕の名前。」
”イオン様”のオリジナル。
彼が本当の導師イオン。
同じ顔で、同じ声で、同じ姿で、
違う言葉を、違う笑みを、違う考えを見せる。
それは、確かに、イオン様だけれど、”イオン様”じゃない。
「でもね、その名前はもうレプリカの物だから。」
今の僕は違う名前。
そういって、彼は笑う。
「さて、君は?」
愉しそうに、あざけるように、彼は笑う。
その姿は”イオン様”よりも、”シンク”ににていて。
その表情は試すようで。
「元、信託盾騎士団導師守護役所属、アニス・タトリン。」
どくどくと音を立てる心臓をそのままにありのままの事実を告げる。
「導師守護役・・・そっか、君がアリエッタの後任だね。」
先ほどとは違い彼は柔らかな笑みを浮かべていて。
頭の中、浮かぶのは、桃色の少女。
見た目と言動は幼くて、それでも私よりも年上で。
大事な人をずっとずっと思い続けた一途な彼女。
そして、私が・・・
「そして、君がイオンを、アリエッタを、殺したんだね。」
彼が告げた真実に、ぞくりと、背中が凍る音がした。
がくがくとふるえ出す体。
何一つ間違いではないそれら。
だって、確かに、私が彼らを、
二人を____
「兄さま!」
響く声。
ずっとずっと望んでいた、たった一人の主の声。
今聞いていたのと同じで全く違う。
目の前にいる人と同じだけど全然違う。
だって、その声は、その人は、
私の、アニスの、イオン様。
笑って話して動いて、それは確かにイオン様。
そう、私が殺した、イオン様。
あ、あ、あ、あ、あ、ああああ
預言を詠む後ろ姿
熱い熱い空間
手を伸ばしても届かなくて、仲間たちの行く手を遮らなくてはいけなくて。
とらわれたままの両親
そして、目の前で、笑って、
き え て い く
たったひとりのあるじさま
ふわり。笑んだ、彼が、私をみて、問いかける。
「あなたは?」
笑みが、最後の、記憶と、重なった。
ぼとぼととあふれる滴。
にじむ世界。
驚いたあなたの瞳がまんまるに開かれた。
少し焦ったように、言葉が紡がれる。
「僕が、何かしてしまいましたか・・・?」
心配そうにこちらをのぞき込むイオン様。
ちがう、ちがうの、あなたはなにも悪くないんです。
悪いのは、悪いのは全部、
「ごめんなさい、イオン様」
口から勝手にこぼれ出す言葉たち。
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
「っ、ごめんなさいっ、イオンさまっ、」
悪いのは、全部、私です。
「ぼくを、知っているんですか?」
穏やかなあなたの声。
とてもとても優しい人。
「しって、ますよ・・・。」
しっています、とてもよく。
柔らかな表情で笑うのも、
あきらめたようにほほえむのも
弱そうに見えて強い意志も
天然で、少しぼけていて、でもとても強い
真実を知るためにまっすぐに前を見つめることができる人だっていうことも。
「イオン様のこと、知っています・・・。」
きっとひどい顔だろう。
笑いながら泣いて。
ゆるり、イオン様の手が、私にのびる。
「覚えていなくて、ごめんなさい」
少しだけ寂しそうに彼は笑う。
そして、今日みた中で一番の笑みが、浮かべられた。
「僕を、覚えていてくれてありがとう」
その言葉は、私なんかに向けられていいものじゃないのに。
「あなたの、名前を教えてくださいますか?」
その問いかけに、また一つ、涙が落ちる。
もう一度、私の名前を呼んでくれるのならば。
私のことをみてくれるのならば。
ちゃんと、私を怒ってくれるなら、
「私は___っ」
口にしようとした言葉は、何かによって遮られる。
その何かは温もりを持っていて、後ろから抱きすくめるように口をふさがれて。
「イオン。それは自分で思いだしなよ。」
その声は、イオン様と同じ声、同じ色、同じ姿の、
違う人
「シンク・・・?」
ぽつり、つぶやけば上からため息。
そっと離されたから振り向けばあきれたような顔が一つ。
「バカだね。覚えているなんて。そんなつらい思いしなくていいだろうに。」
その言葉とは裏腹に、少しだけ困ったように彼は言う。
ぽてり、頭に温もりが乗せられて、ぐらぐらと揺らされて。
「全部忘れてたら楽だったのにね。」
小さく小さくつぶやかれたそれは、シンクもまた記憶にさいなまれていた証拠で。
思わず顔を見上げれば、仕方がなさそうに困ったように、悲しそうに、いろんな感情がない交ぜになった顔で、彼は笑った。
「イオン。気になるなら、知りたいなら、自分で全部、思いだせ。」
私から視線をはずして彼は言う。
まっすぐにイオン様を見つめて彼は告げる。
「この女は、あんたにとって大事な一人だったんだよ。」
シンクの言葉にイオン様は小さく息をのんで、そして、ゆっくりと私をみた。
「待っててください、絶対に思い出して見せますから。」
ふかんぜんねっしょうです。
途中からフェードアウトオリイオ。
オリジナルとアニスだけが覚えていると見せかけて、シンクも覚えていたっていうね。
シンクはオリイオの素直じゃない言動に疲れてイオンにいやされていればいい。
ごめん、フローリアン入れ忘れた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
鬼灯
NOT腐向け
鬼灯転生ネタ。
白澤さんとのからみ。
ゆるやかな忘却。
おまえは次に僕にあったとき、僕のことをかけらも覚えていないだろう。
それが、この世の真理で、理。
それを歪めることは、できなくはないけれど、その結果おまえはまた世界から切り離されるだろう。
神獣である僕。
僕の存在は奇跡。
だからこそ、人は僕を崇めたたえる。
そして、距離をとる。
こんなにも零距離で、しかも僕を敬うことなく拳をたたき込んでくる存在は、永く生きた中でもおまえが初めてだったよ。
好きではないし、どちらかといえば嫌いだったけれど、それでもおまえが存在してくれていた間は、充実した日々だった。
人を嫌うという感情すら、永い世界で失ってしまっていた僕だったから。
おまえの存在は僕にとっての大きな変化だったんだ
神獣たる僕は、いつだって、送り出す側。
決して見送られることはない。
知ってたよ。
理解してたよ。
でも、久しぶりに寂しいと、感じてしまったじゃないか。
おまえを見送ることが。
ねえ、鬼灯。
いつから、その体は不調を訴えるようになった?
そこまで悪くなる前に、僕に一言でも言ってくれていれば、何か手を打てていたかもしれないのに。
おまえは確かに鬼神だった。
けれどもその前に、人間だったんだ。
この世界の誰とも違う。
鬼灯は、人間だったんだ。
たとえ鬼火によって鬼へと姿を変えたとしても、根本はかわらない。
長い年月の中、おまえの体はゆっくりと限界へと近づいていっていた。
なあ、鬼灯。
みたくなどなかったよ。
いつでも、僕を叩きのめすことのできるおまえが、ゆっくりと衰えていく姿なんて。
みたくなどなかった。
いつだって、僕を見下すような瞳が色を移さなくなっていく姿なんて。
見送りたくなどなかった。
鬼灯、おまえという存在を。
たとえ次、おまえにどこかで会えたとしても、それは僕の知らない___。
____知らないはずなのに、
「いっ・・・!!」
角のない、目つきの悪い男の前。
にこにこと笑ってみせれば、なぜか全力で頬をしばかれた。
おい、おまえ、なんで覚えてないのに出会い頭で僕をしばいた
「・・・いえ、条件反射?」
なんっで、しばいたおまえの方が不思議そうな顔をする!
「おまえなあ!」
思わず手が出そうになる、が、全力でよけられて、次はハイキック。
まじでいてえ。
「なんだかあなたを見た瞬間、全力でおとしめなければいけないような気になりまして。」
瞳はマジで真剣だ。
というか、僕を見下すような色。
おい、おまえ本当に覚えてないんだよな!?
痛みに耐えていれば、そっと、手を出される。
「・・・ありがと。」
その手をつかんでゆっくりと立ち上がった。その瞬間。
「バルス!」
「いたいいたいいたいいたいいい!!!」
全力で手をたたき落とす。
あまりの痛さに涙目だ。
でも、同時にじわじわと何かが沸き上がって。
僕の中では遠くない、昨日のことのように思い出すことができる、おまえとの記憶。
僕をおとしめる瞳
感情を表さない表情
ただ、そこにいるだけなのに感じる威圧感
どうして、
どうして、
どうして、
覚えていないのだろう?
知らないのだろう?
僕には、気づかないはずだったというのに。
コンマ数秒で、僕に気づいて。
まるで身に付いた条件反射のように、
あっさりと僕を地面にたたき落として。
知らないままでいてくれれば、あきらめがついたのに。
僕の永い世界に、良くも悪くも変化をくれた、大嫌いな奴。
僕はほかの奴らと同様に、否それ以下に扱ってきた唯一の相手。
お互いに認めたくはないのに、その知識は、仕事量はバカにできなくて。
まるでももう一人の自分をみているような、そんな錯覚に陥れられる。
僕にそっくりなのに、僕と正反対な存在。
鬼灯、おまえと、また、出会えてしまった。
相変わらず意地が悪くて
僕を見下すようにみてきて
言葉より先に体が動いて
ただ、僕を覚えていないだけの、鬼灯が、ここにいた。
たった一つ、僕を覚えていないだけ。
それ以外は全部があのときと同じ鬼灯。
ああ、もう、あきらめて、喜んでしまおうか。
おまえにまた、あえたこと、柄にもなくうれしいと感じてしまっていることを。
忘れているのは当たり前なのに、忘れられたことは悲しくて。
それでも、いつでも仕方がないってあきらめていた
僕のことをずっと覚えていてくれる存在はどこにもない。
そう思っていた。
それでも、僕へ対する行動が、言葉が、どんな姿になっても、何度記憶を失おうとも、変わらない存在があることを。
じわり、沸き上がる喚起を隠すことなく表情に表せば、相変わらずひどい瞳で見下ろされて。
それでも、ねえ。
鬼灯
おまえにまた会えたこと、しかたないから、喜んでやるよ。
※※※
鬼灯→なんだかんだで元人間、体がついて行かなくなる。閻魔さんによって転生させられる。
転生後、なぜか目の前に姿を現した白澤をみて、ただただぶちのめさねば、みたいな感覚に陥る。
白澤→神獣だから、人から忘れられない限り死なない。だからいつだって見送る側。
鬼灯は自分にとって一番嫌いな相手。でも自分にいつだって零距離で白澤として接してきてくれた唯一の相手。
その相手が自分のことを忘れるのは寂しいなあ、位の感覚。
たぶんこの後ちょくちょく白澤は鬼灯の元に姿を現しては暴力を振るわれる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
好きな色は、蒼い色。
海の色で、空の色で、それから
あのひとの、色___
イヴには紅色が似合うの!
そういって、黄色が似合う私の姉妹は笑う。
とてもとてもきれいな笑顔で、金色にまばゆい表情で。
くるくると、表情が変わる、とてもきれいでかわいい子。
好きで好きで、大好きだけど、少しだけ怖い。
どうしてか、聞かれると困る。
なぜなのか、問われても答えられない。
それでも、私に紅が似合うと笑う彼女が、私は少しだけ怖い。
ねえ、メアリー。
あなたはどうして蒼色を怖がるの?
メアリーに手を引かれて歩く。
いつだって私を導く手。
優しい声で私を呼ぶ声。
いつだって私を誘う道しるべ。
けれども、それはどうしてか、違和感。
私を引く手はもっと大きくなかったっけ?
私を導く声は、もっと低くはなかったっけ?
好きなの、大好きなの、この子が。
でもね、何かが、たりないの。
そして、十歳の誕生日。
あの人に出会った瞬間
私はすべてを理解した。
「なにかしら、お嬢さん?」
ふわり、ほほえむ長身の青年。
少しだけくたびれたコートは、それでも彼をきれいに彩る。
藍色のきれいな瞳を少しだけすがめて、まぶしそうに彼は私をみる。
蒼いバラ
紅のバラ
黄色のバラ
無個性たちが彩る美術館
きれいな女性が手招きする空間
蒼い人形たちが笑う世界
黄色のキャンディー
銀色のライター
鈍く光るパレットナイフ
私を導く手
私を手招く手
おいで、おいでと呼ぶ声
泣き叫ぶ黄色い少女
取り替えられたバラの色
苦しそうに笑う青色の青年
燃え落ちる金色の絵画
まいおちていくのは、蒼色の、バラ
ああ、そうだ、蒼は、蒼色は、
「ぎゃりー・・・」
この人の色、だ。
今、この時代ではない。
これは、私が生まれる前の記憶。
不思議な美術館での悲しい体験。
彼女が蒼を怖がるのは、それがかれのいろだから。
私が助けた青年は、私によって閉じこめられて。
私を望んだ金色は、私によって燃えてしまって。
そして、少しの違和感を胸に、私はすべてを忘れてしまって。
でも、今。
今、私は確かに思いだした。
前の世界では私が殺した彼女は、私の大事な家族に。
前の世界では私が閉じこめてしまった青年は、今確かにここにいて。
ほてほてと、流れる涙。
目の前の彼は少しだけ驚いて、そしてとてもきれいに笑った。
「泣いてはだめよ、お嬢さん。」
白い、すらりとした指が私の頬をなでる。
一度、二度、目尻に触れて、落ちる滴を受け止めて。
「かわいい子が泣くと、私まで悲しく泣っちゃうわ。」
ゆるやかに彼は言葉を紡ぐ。
「ぎゃりー、」
つぶやく声に、あなたの名前に彼は困ったように笑う。
「だめよ、イヴ。私を覚えてくれているんじゃないかと、錯覚、してしまうわ。」
その言葉に思わず彼の顔を凝視すれば、いたずらっ子のように愉しそうに笑う姿。
「っ、ぎゃりー!」
手を伸ばして、名前を呼んで、彼に飛びつけば、危なげもなくギャリーは私を受け止めてくれて。
「ぎゃりー、ぎゃりー!」
「ごめんなさいね、イヴ。追いつくのがすごく遅くなっちゃったわ。」
ぎゅうぎゅうとすがりつけば、同じように強い力で抱きしめ返してくれて。
「約束、果たしにきたのよ。」
あのころと変わらない笑みで、あのころとは違う場所で、
「ほら、メアリーもおいで。」
ギャリーの声に、びくり、小さくふるえた金色の陰。
おそるおそる近づく彼女に笑って手を伸ばす。
愛しい家族。
あの世界では一緒になれなかったけれど、この世界は、違うでしょう?
「もう、大丈夫よ。私はここにいるから。メアリー、もう怖がらないでいいのよ。」
ギャリーの言葉に、ぶわり、金色の彼女の瞳に涙がたまる。
「ごめんなさい、っギャリー!」
叫び声と一緒にメアリーはこちらに飛びついてきて。
何度も何度も謝る声が響いて。
ギャリーは困ったように、でもうれしそうに笑う。
ぎゅうぎゅうと抱きしめあって、すがりあって。
大きな月日を埋めるように、笑い会う。
「さ、三人でマカロン、食べにいきましょう!」
流れた年月は戻らない。
犯した罪は消えない。
それでも、今ここにいることがすべて。
今度こそ三人で一緒に
今度こそ三人で笑いあって
一緒に、生きていこう。