小説







童話パロディ。

 忍たま(アリス)
 バサラ(赤ずきん)


83パーセントくらい原作に沿わず。
ほぼねつ造。
童話を借りてみたが、はっきり言ってそれを舞台にしてオリジナルの話を作ったみたいになってます。
あと、無駄に長い。








「…ここはどこだ?」

その言葉に返事はなく、広い部屋の壁に吸い込まれていった。


記憶をたどればなぜここにいるのかはわかる。

だがなぜここなのかは分からない。


確か放課後、委員会もなかったから長次から借りている本を読んでしまおうと庭の木陰で本を開けていた。

ぺらりぺらり本を読み進めていれば目の端を白い物体がかすめて。

そちらを見ればなんだかいつもとは全く違う装束(強いて言うなら南蛮のもののような)を身にまとった小平太が見えて。

ちなみにそれはなぜか頭からひょこひょこと白い何かを生やしていて。

先ほど目をかすめたそれは小平太が腕に抱えている白い物体のようで。

いけいけどんどんと走っていく彼を茫然と見送っていたが途中で我に返り小平太が抱えていた小さな白いろの物体が目をまわしていたことに気づく。

たしか四郎兵衛とか呼ばれていたそれは小平太と同じものを頭につけ、手には文字盤のついた奇妙な何かを抱えていた。


小平太に後輩を連れまわすなというか、忍びの卵であればそれくらいで目を回すなというべきか、迷った末とりあえず追いかけてみることにしたのである。




そうして急に感じた落下する感覚。

それはあの作法の四年が掘ったものに類似していた。

だがそれよりもずっと長い穴で。


無事に着地することには成功したが、気づけばそんな場所にいたのだ。




「…どうにかしてここからでねえとな。」

周りを見渡せばそこには幾つものドア。

近寄り開けようと取っ手を動かすがそれはまったくもって開く気配を見せない。

「無理か。」

一つだめなら次だ。

そう思い何度も確かめるがどれもこれも開く様子は、ない。

「さて、どうすべきか…。」

どうやってもあかないそれをあっさりと諦めて文次郎はさらに辺りを見渡す。

くるり部屋を一周して見つけた卓に近づく。





”drink me”



そう書いた竹筒が目に入った。









「・・・こんなもの読めるかあ!」

それを手にとって顎に手をやって考えた後文次郎はそう言ってそれを放り投げた。

それはもう見事なくらいに。

円を描きながら宙を舞ったそれは乾いた音を立てて地面にたたきつけられた。

割れた瓶の中から溢れてくる薄ピンク色の液体に文次郎は一度眉をひそめてそれから目線を外した。

「さて、ここからどうやって外に出るかだが・・・」

そう言って一瞬考え込んだ後懐の中から焙烙火屋を取り出して壁に思い切り投げつけた。

それはすごい音を立てて粉じんを巻き上げ、さらには壁を破壊した。

「さすが仙蔵のだ…」

ぱらぱらと未だに粉じんを巻き上げるそれに感心した声をあげて文次郎はそのまま壊れた壁を潜り抜けた。


















「…なんだここは」

潜り抜けた先にはさらに不可思議な光景が広がっていた。

そこは森というかなんというかうっそうとした木が多く立ち並ぶ薄暗い場所で。

ゆっくりと気配を殺しながら進んでいけば聞こえてきたなにか。

「―――」

「―――」

それは小さな小さな声だったけれどもどこかとても近くから聞こえてきていて。

「誰だ」

文次郎は鋭い目で辺りを見回し懐に備え付けているくないに手を添える。

「なんていうか、あれだよね。」

「あ、俺も思った。」

それは後ろから聞こえてきて。

「そこかっ!」

「ひいっ!?」

「っ、伊作ううううう!!!」

聞こえてきた方向にくないを投げつければ当たったのか悲鳴を上げる何か。

そしてもう一つの声は何かの名前を呼んで___

「___というか、伊作、だと?」

聞こえてきた聞き覚えのありすぎる名前に近づいていけばそこには目を回す伊作とそれを介抱する留三郎が、華の上にうずくまっていた。

手のひらサイズで。

「・・・ちっちぇえ!?」

「何しやがんだ、文次郎!伊作が目え回しただろうが!」

「いや、その前にその大きさおかしいだろうが!?」

「何がおかしい?!可笑しいところなんて何一つ、ねえ!」

ぎん、とただでさえ鋭い眼を吊り上げて文次郎を睨む留三郎。

だが体が小さいせいで威力は半減だ。

「薬か?!伊作の薬なのか?!」

「何訳のわかんねえことを言ってやがる!って触んじゃねえ!!」

「ってえ!」

信じられないのか思わず手を伸ばした文次郎の手を留三郎は思い切り叩き落とした。

「留三郎お前っ」

「う〜ん痛かった・・・」

「伊作!」

「あ、留さん。怪我はない?」

「俺は大丈夫だ。伊作の方が怪我してるだろうが。」

「あはは。僕は日常茶飯事だから。」

そこまで言うと伊作はくるりと俺を見上げた。

「まったくもう!文次郎、こっちを確認しないでくないを投げたりしないでよね。また怪我するじゃないか。」

ぶつぶつと文句を垂れる伊作だが文次郎はやっぱりその大きさに納得がいかないようで。

「うわあ!」

「伊作!?」

「・・・どうなってんだ?」

伊作を持ち上げてひっくり返した。

「留さああん!」

「文次郎、その手を話せ!」

「伊作、これはお前の薬なのか?・・・これだけ小さければ偵察に役に立ちそうだ。」

「ちょ、マジで文次郎、目が回るから振り回さないで!」

文次郎はそれを聞き流しながらくるりくるり体の向きをかえ伊作を観察し続けた。





「と、こんなことをしているばやいではない。」

一通り観察し終えた文次郎は伊作をぽいと放り投げて先へと進みだした。

「伊作うううう!!」

留三郎のそんな声をバックミュージックにして。



















「おやおや。なんだかおかしなものが紛れ込んできたね。」

森の中突如響いた頭上からの声に文次郎ははっと見上げる。

気配も何もしなかったそれに、背中から汗が流れるのを感じた。

見上げたそこには木の上にだらり横たわる蒼色。

その頭には三角の耳が生えていて、それと同時に一本の長いしっぽがふらりふらりあちらこちらに行き来する。

「ねえ、ギンギン先輩。」

文次郎を呼んだのであろうその男はにやり口の端をあげて楽しげに笑う。

「・・・五年の雷蔵・・・否、三郎か。」

ふわりふわり同級をまねた顔がさらに楽しげに笑う。

「というか、なんで忍び装束のままなんです?先輩。せっかく始めの部屋にあなた用の装束を用意しておいたというのに。」

三郎は大げさなまでのため息をついて寝転ぶのをやめ木の上に座り込む。

その言葉に頭に思い浮かべる始めの部屋。

言われてみればあの部屋の端っこの方になんだか空色のひらひらしたものがあった気がする。

まあ、部屋を見渡した際に強制的に意識から排除したが。

「仙蔵先輩が。」

「あいつかあああ!」

この三郎ははっきりいってムカつくが、それでも後輩だからと突っかかるのは何とか理性で止めていた。

だが、それを用意したのが仙蔵となれば話は別で。

「ということは、これは全部仙蔵が仕組んだことだというのか!?」

見慣れぬ景色も、おかしな同級たちも、取り上えずあれのせいだと思えば理解はできないが納得はできる。

「まあ、私はノーコメント、ですよ。だって私はチェシャ猫ですから。気まぐれで、面白いこと大好きの、ね?」

それだけ言うと三郎は空間に溶けるように姿を消していって。

「っ、まて!お前そんな忍術を・・・じゃなくて、仙蔵はどこだ!?」

「まあ、頑張って探してください。・・・ああヒントを一つ。・・・ウサギを追いかけてください。」

三郎はそんな声だけを残して消え去ったのであった。






「いっけいっけどんどーん」

「先輩、遅刻ですぅ・・・」

その消えた空間を茫然と見ていれば、道の先の方でまた小平太と四郎兵衛の二人組が見えて。

ひょこりひょこり動くそれがようやっとウサギの耳だと理解した時文次郎はその場所から駆けだしていた。






















「・・・なんだ?向こうの方が騒がしいな。」

ようやっと先ほどまでの薄暗い森を抜け、あの二人組がいったであろう方向へと進んでいけば何処からか聞こえてきたにぎやかな声。

「お茶会、お茶会。」

「あ、八、その豆腐とって。」

「兵助!お茶会といってるのだからせめて茶菓子にしてくれ!」

「勘ちゃん、その醤油も。」

「はい、兵助」

草をかき分けてたどり着いたそこでは何とも言えない不思議な光景が転がっていた。



机の上に並ぶすごい量の白い物体。


名をつけるとしたらたうふ

豆腐

豆腐・・・

それを囲む三人の蒼。

二人は黒髪、一人は銀髪。

黒髪二人はにこにこと笑顔で豆腐に手を伸ばしていて。

銀髪はそれにあきらめたようにため息をついていた。




「あれ、先輩じゃないですか。」

文次郎に気づいた兵助がことり首をかしげて文次郎を見る。

「よかったら先輩も一緒にいお茶会しませんか?」

勘右衛門がにこり笑って尋ねる。

・・・五年の中で少ない常識人だと文次郎が認識している後輩だ。

だが___


「お茶会、だと・・・?」

何を言ってるのだこいつらは。

机の上には確かに湯呑と急須がおいてある。

だがそれよりも圧倒的に多いのは白い豆腐とよばれるものであった。

「はいお茶会です。」

真っ向から大真面目に言葉を紡ぐ兵助に絶句する。

まさか俺はお茶会というものの意味を今の今まで取り違えていたと、そう言うことなのか・・・?

愕然としながらそんな思考にとらわれれば、いままでしゃべらなかった銀色がため息をついた。

「先輩、こいつらに気にせず先に進んでください・・・あの二人のウサギを追ってきたのでしょう?」

本当に疲れ切ったように八左衛門が声を出す。

お疲れ様、と憐みの言葉をかけてやりたかったがそれよりもこいつの言葉に意識がいった。

「知っているのか?あいつらを!」

おもいっきり近寄って叫んだのが悪かったのか八左衛門は全力で文次郎から距離を取ってうなづいた。

「なぜ離れる?」

「おそらく女王様のところに…」

「俺の質問には無視かよ、ていうか、女王様、だと・・・?」

脳裏に浮かぶあいつの姿。

あいつほど女王様にふさわしいものはいないと思わせるほどだ。

「この道をまっすぐに行けばたどり着きます。・・・たぶん。」

「随分曖昧だなおい。」

「ご健闘を!・・・兵助、お前それで何個目だ!?」

そこまで言うと八左衛門は先ほどから豆腐を食べる手を止めない兵助へと声をあげていた。

「女王様、か・・・」

文次郎は八左衛門に言われた先に進みだしたのだった。


















「・・・なんじゃこら・・・。」


八左衛門によって示された先。

そこにはとてつもなく大きな城があった。

城といっても日本のものではなく、おそらくこれこそが南蛮のものであろう。

ゆっくりと足を進めて行けば大きな門が見えて。

それを全くためらいなく潜り抜ければ甘ったるいにおいが鼻を突く。

「あめえ・・・」

それに口元を押さえて眉をしかめれつつ辺りを見渡す。

そこには白い色を鮮やかに咲かせる花々。

なんだか仙蔵に似合いそうだ。

その花々をじっと見ていればぱたりぱたり走り回る音が耳に入る。

「・・・なんだ?」

不思議に思いその発信源に近づいていけばそこには___





「女王様が来るまでに赤く塗らなきゃ、紅く塗らなきゃ!」

「あ、ペンキが足りない!とりにいってくる!」

「ちょ、まて、左門ーー!!」

「ああ・・・また手が減る。」

「お前ら何をしてるんだ・・・?」


赤いペンキを手に持って駆けまわる委員会の後輩たちがいた。


「あ、ちょうどいいところに!先輩!こっち手伝ってください!」

「左門先輩を三木エ門先輩が追いかけて行ってしまわれたので、手が足りないのです!」

「このままじゃ間に合いません!」

「団蔵、左吉、これはいったいどういう・・・」

焦ったように涙目で訴えてくる二人に驚き理由を問おうとすればそれを遮る声が辺りに響いた。



「ぱんぱかぱーん女王様のおとーりー。」


銀色のうねうねとした髪をなびかせて現れたそれは金色の楽器を持ってるくせに吹くことはせず口でいった。

ちなみに服装はこれまた南蛮のもの。

紫を基調としたひらひらした服が風に揺られてふわりなびく。

「そ、そこのものたち、図が高い、控えろ!」

黄緑のひらひらを身にまとった・・・確か藤内は羞恥からか涙目だ。

「女王様!」

「女王様だよ!」

慌てたように団蔵と左吉が跪く。

「お、おい、お前らいったい___」

「そこのもの!」

また言葉は新たな言葉で遮られて。


「図が高いよ。」

「女王様の御膳だぞ!」

水色のひらひらが二人新たに現れて告げた。


「ふふ、二人とも、私が出よう。」


二人の後ろから放たれる謎の威圧感に体がびりびりとこわばる。

それはきっと殺気にも似たもので。

「っ、仙蔵!」

その声の主の、気配の主の名を呼べば、ふわり現れた緑色。

それは艶やかに微笑んだ。

「なんだ、文次郎。私が用意した服は着なかったのか?」

ことり傾げられた首も計算のたまものなのだろう。

男だとわかっているのにどうしてかどきりとさせられる。

「仙蔵!さっさとここからーーー」

「女王様〜薔薇の花が白いですよー」

二度あることは三度ある。

その通り文次郎の言葉は三度遮られた。

空気を読んでいないのか読む気がないのか。

綾部は無表情でそう述べた。

「なに?薔薇の花は赤にしろとそう言ったのにか?」

「あ、女王様!赤いペンキがあります!」

「ほお・・・つまり、おまえたちは白い薔薇を赤く塗り替えていたと、そう言うことか?」

ふわあり

とてつもなく美しい笑みのはずなのに、それはどこか歪んで見えて。

「ひいい!」

「ご、ごめんなさあい!」

委員会の後輩二人が涙目になりながら謝る。

それにいたたまれなくなり仙蔵と二人の前にずいと体を入れる。

「仙蔵!」

「なんだ、文次郎。・・・ああ、なんだお前が代わりに罰を受けると、そういうことか。」

「は?いや、違う!そうじゃなくてだな!」

「ふふふ、どんな罰がいいだろうか。・・・なあお前たち。」

「はいはーい。たあこちゃんのなかに一日閉じ込めましょう。もちろん中には罠を仕掛けて、簡単には這いあがらせません。」

「ほお、いいな。」

「なっ!」

「なら僕は踏めば体が吹っ飛ぶんですくんが試したいです!」

「この間開発してた奴だな」

「まて、」

「伝七、藤内、どうだ?」

「では、ちょうどくのいちの先輩方からいただいたこのおそらく毒入りの団子をプレゼントしましょうか。」

「ええと、お、御化粧の実験体、でどうでしょうか・・・?」


「ふふふ、どれも楽しそうだ。・・・なあ?文次郎?」

「いや、俺はまったくもって楽しそうだとは・・・」

「ああ、ちょうど白ウサギたちも戻ってきたようだ。」

「は?」

同時に聞こえてきたのはこの場所に来ることになった元凶の声。
慌てて振り向いてそちらを見れば全力で走りくる二つの影。


「いっけいっけどおんどーん!」

「女王様あ・・・」

「っ、お前らとまれええええ!」


それは止まることなく文次郎へと襲いかかり___


























「っどうわああああ!」

文次郎は思い切り体を起こした。

疲れがどっと体を駆け巡る。

慌てて辺りを見渡せど、そこはいつもの学園で。

「・・・夢、か?」

ゆっくりとため息をつき、変な夢だったと心を落ち着かせる。






「も〜ん〜じ〜ろ〜う〜」


おどろおどろしく聞こえてきた声に慌てて振り向けばそこにはにやありいつもとは違い笑みを浮かべた友人がいて。


「ちょ、まて、長次、いったいどうしたっていうんだ!?」

「本が泥だらけだ。」

言われて慌てて持っていたはずの本を見れば起き上がった時の衝撃からか、地面にべちゃり落とされた本があった。




「覚悟はいいな?文次郎?」

にやあり笑みを深めた長次はそのまま図書カードを持ちだして、文次郎に投げつけた。

「わ、ちょっとまて!長次!話せば、わかる!」

「問答無用!」

「っうわああああ!」








そうして忍術学園の日々は過ぎて行くのであった。











アリスパロディー 配役

アリス もんじ
女王 せんさま
兵隊たち 作法
猫 三郎
しろうさぎ こへとしろ
帽子や兵助
三月ウサギはっちゃん
居眠りネズミ 勘ちゃん
姉 ちょうじ

花(?) いさくとめ

雷蔵出番なくてすまん
ただ単にもんじをアリスにしたかっただけ。
以前見たアリス映画に触発された結果。
楽しかった。
後悔はしていない。

















「いーい?旦那、知らない人がいても勝手について行っちゃ駄目だよ?」

「うむ」

「知らない人がお団子くれるって言ってももらっちゃ駄目だよ?」

「う、・・・わかった・・・」

「御館様は風邪で寝込んでるんだから殴り愛しちゃ駄目だよ?」

「う・・・努力、する・・・」

一言約束を取り付けるたび移ろいで行くその視線に一つため息をつく。

「はあ・・・まあいってらっしゃい。気をつけてね。」

「うむ、わかったぞ!」

見舞いの酒と旦那用の甘味を入れた風呂敷を幸村に渡して佐助は離れて行く背中を心配げに見つめた。

「・・・無事にたどり着けるのかねえ・・・。」











赤ずきんちゃん with武田、伊達軍








「団子団子、御館様にあったら団子、団子!」

あまり日の当らない影の中を紅い鉢巻を額に巻いた幸村が楽しそうに歩いていく。

言葉からもわかるように見舞いではなく団子を食べることが目的のようだが。

「御館様に会ったら鍛練鍛練〜」

もうまったくもって見舞いに行く様子が見受けられない。


どうやら佐助の心配は無駄に終わることなどないらしい。

楽しげに鼻歌を歌いながら幸村は御館様に会えるのがそんなに嬉しいのかくるりくるりその場で回る。

と、その時だった

「Hey!boy!」

いやに発音のい外国語が聞こえてきたかと思えば幸村の後ろの茂みから一人の眼帯男(ただし頭に三角の耳、さらにはしっぽが生えているが。)があらわれた。

「うむ!御館様に会ったら飲み比べもしよう。」

とまあ、幸村は英語などわかるはずもなく、その声に見事なまでの無視を披露したのであったが。

「おいまて真田幸村俺様を無視するとはどういうことだこら!」

ノンブレスで言い放った眼帯男は通り過ぎて行った幸村の前へと全力で現れた。

「おお!その姿は!・・・誰でござったかな?」

眼帯男の姿を見て目を輝かせたと思ったら幸村はそのきらきらさせた瞳のままでそうのたまった。

それに眼帯男は全力でうなだれる。

「おまえって、奴は・・・」

そんな言葉にもきょとりとしながら幸村は空を見上げて慌てたように声をあげた。

「御館様がまっておられるのだ!こうしてはいられない!そこのおかた、俺は先を急ぐ故、これで失礼する!」

「え、ちょ、まて!」

眼帯男の言葉をさっそうと無視して幸村は御館様の屋敷へと急いだのであった。






「・・・小十郎!」

「はい、なんですか、政宗さま。」

「甲斐の虎を屋敷から遠ざけろ!」

「は?」

「俺が虎になり済まし、真田幸村の見舞い品を全部食らってやる。否、それじゃ生ぬるいな…不意打ちで刀を突き付けてやろうじゃねえか!」

「はあ、ですが真田においつけるのですか?」

「はっ、Don`t worry!、この道の先にある団子屋に寄ってるだろうからな!」

そう言うと眼帯男改め政宗は高笑いをして屋敷へと走り出したのであった。

「・・・あれで真田幸村がダメージを受けると思っているのだろうか、あのお方は・・・」

残ったそこには小十郎のため息が響いた。
























「御館様!御見まいにまいりました!」


ばたん!

ものすごく大きな扉の音と共に、幸村は現れた。

その目はきらきらと輝いている。

それはもう、飼い主の投げたボールを楽しそうにとってきたようだ。

「?御館様?」

いつもであれば大声で帰ってくる返事がない。

すぐさま飛んでくるこぶしも、ない。

不思議に思い御館様の布団に近づけば、いつもよりも心持ち小さく見える布団の膨らみ。

「御館様?」

幾度か名前を呼んで首をかしげる。

持ってきていた酒などを床に置き、考える。

と、

「…幸村。」

微かに布団から聞こえてきた声にぱあっと考えていた顔を笑顔に変える

「!御館、さま・・・?」

が、その声色はいつもとは少し違っていて。

「・・・?御館様、のどの調子がよくないのですか?」

「・・・ああそうだ。」

だがまあ、風邪のせい、ということであっさり解決したようだが。

「それならば、お酒をもってきました!御館様!」

「いいねえ、是非もらおうか。」

偉く楽しそうな御館様の返事に気を良くした幸村は布団から出てきた手に酒を渡そうとする。

「?御館様の手がいつもより小さく見えまするが・・・?」

「熱で食欲がなくてな。あまりものを食べていないからな。」

何のことはない、という様子で返された言葉に幸村はごそごそと持ってきた荷物の中から違うものを取り出した。

「でしたら、こちらに団子が!」

さあさあ、と進める幸村の眼はぎん、と団子を見ているが。

「ああ、良いねえ、団子。…ずんだ餅の方が好きだがな。」

「?何かおっしゃられましたか?御館様。」

「いや、何も。」

それに、さようですか、とまた笑顔で団子を差し出す。

が、おや、と首をかしげて不思議そうに御館様に声をかけた。

「・・・なぜ御館様、今日は布団から出ていらっしゃらないのでございますか?」

「・・・それはな、幸村。」

そこでいったん言葉を区切った御館様は布団から出していた手で幸村を招き寄せた。

「なんでございましょう!御館様!」

本当に犬みたいに一瞬ですぐそばまで寄った幸村はじっと次の言葉を待つ。

おあずけをされているみたいに、何処となくしっぽが見えてきそうだ。

「それはな―――

      幸村、お前に不意打ちを仕掛けるためだ!!」




























「それはな―――

      幸村、お前に不意打ちを仕掛けるためだ!!」

その言葉と同時に布団をはねのけるようにして起き上がった御館様はしゅばっと布団の中から六つの光る刀を取り出して幸村に突き付けた。

その御館様、否、独眼竜とよばれる伊達の政宗は片目の瞳を楽しげにゆがめて幸村を見据えたが、次の瞬間驚愕で目を見開いた。

「なん、だと?!」
                    
それもそのはず。

刀を突き付けたと思った相手は目の前にはおらず、その代わりとでも言うように政宗の首元に長いリーチを利用した赤く燃える紅蓮の槍がぴたりと薄皮一枚のところで止まっていたのだから。

「ふっ、甘いな政宗殿。俺は御館様の館にいる時が一番強襲に備えておるのだ。」

にやり、先ほどの政宗のように不敵に笑った幸村はそのままの状態でなおも言葉を続ける。

「はじめからわかっておったわ。御館様でないことくらい!」

そのままたか笑いをしそうな勢いである。

「Shit!何処でばれやがったんだ!」

悔しそうな政宗の声だがどこぞの某おかんに言わせれば、何でばれないと思ってたの?!と言われるだろう。

「どこで?そんなの愚門であろう?もちろん、俺の忍びによってだ!」

忍びによってでしか気づけないのであろうか。というか、某おかん…

「はいは〜い。ごめんね?竜の旦那。俺様もついてくるつもりはなかったんだけどね?寄り道しないか心配になっちゃって。」

まさしくおかん。

ここにおかんがいる。

「そしたらなんだか見たことがある人たちに出会ってるからさあ。御館様のところに先に行って待ち伏せしちゃった。」

後ろにてへっとでも☆マークがつきそうなおかn…佐助に政宗は一つしかない目をぎん、と向ける。

「こんのっ、」

政宗が怒りを前面に押し出して声を荒げたと思った瞬間、政宗の目の前の赤は全力で吹き飛んだ。

「ゆうううううきむらああああああ!!!」

それと同時に体中に響くような低い声。

のそりのそり現れたのは武田信玄だ。

「おおおおやかたさまああああああ!!!」

吹きとんでいったと思った幸村はがばりと起き上がると全力で駆けだして武田信玄に向かっていく。

「ゆうううきむらああああ!!!」

「おやあかったさああまあああ!!」

「うわあ!二人ともb屋敷が屋敷が壊れるからあ!!!」


政宗はもう見事なまでの蚊帳の外。

先ほどまでの怒りも忘れて茫然とその様子を見ていた。


「帰りましょうか、政宗さま。」

いつの間にか現れた小十郎の言葉にため息と同時に頷いて、屋敷から姿を消した。


「おやかたさまああああ!!」

「ゆうきむらあああああ!!」

「うわあああ!俺様の仕事を増やさないでええ!」

そんな言葉を背中に聞きながら。



「小十郎、帰ったらずんだもちが食べてえ。」

「はい、ご用意いたします。」



武田の森は今日も平和に過ぎて行く。










赤ずきんちゃん・・・?


収拾つかなくなったので半強制終了。

もちろん強襲とは御館様からの。
バサラで童話を考えた時にあか、あか、あか・・・ああ、赤ずきん。
ときまった。
もちろん佐助はすぐに決まった。
猟師に元就を出そうとか思っていたのは秘密だ。











お付き合いありがとうございました!