小説
拍手連載第三段!
主に管理人が楽しいだけだったりする。
if〜
もしも婆娑羅の世界に忍たまたちが行ったら〜
管理人による完全なる趣味です。
NOT夢です。
婆娑羅キャラと忍たまキャラを絡ませたいだけです。
管理人に掴みきれていないキャラは悲惨なことになる、または出て来ないかもです・・・。
他のサイト様とかぶってない気がしません。
管理人の趣味と妄想に走っております。
はっきり言って、本当に妄想です。
2,3年生にしようと思ったのですが、いまいちきゃらが掴みきれていないので、とばして上級生にごーです。
6年生、完結編です!
そして、無駄に長い(←ここ重要!!)
それでもよろしいかたはどうぞ
遭遇 〜い〜
「我の城に入り込むとはなかなか勇敢なねずみよ。」
全身に緑をまとったその男は円形の刃を構えてそういった。
何がなんだかわかりはしないが、この男が俺を傷つける気満々なのは見て取れた。
ゆっくりとかまえて姿勢を低くする。
さて、こんなことになってしまったことよりも先に目の前のこいつをどうにかするのが先だ。
一瞬の間も与えずにその懐に入り込む。
が、予想されていたのだろう。
軽い動きで後ろに飛ぶことで回避して。
さらにはあの円形状の動かしにくそうな刃物をいとも簡単に切りつける道具として使って。
「くっ、」
受け止めるには少々荷が重いそれをいなすことで体勢を整えて。
冷徹だったその顔がほお、と興味を持ったように少しだけ変わった。
「忍びごときが、なかなかやるではないか。」
「・・・・・・・」
まったくほめてはいないのであろうそれは挑発にも似て。
だが俺は忍びだ。
こんなことで心揺らされるほど甘くはない。
と、何かが近づいてくる気配がする。
「・・・ちっ」
新手であろうか一つ舌打ちをして、どこらでも反応できるようにとさらに姿勢を低くする。
「元就様!!」
空けられた襖。
そこから現れたのは一人の兵士。
『元就様』というのはこの緑の男の名前であろう。
まあ解ってはいたが、この男は偉いやつなのだろう。
一瞬でそこまで考えて、その男が俺を倒す気がないことを感じる。
と、いうか俺がいるのにも気づいてないようだ。
「・・・なんだ。今は取り込み中だ。」
視線を俺からはずすことなく答える。
「そ、それは失礼しました!でっ、ですが外に西海の鬼がっ___ぐわあぁっ!」
その男が何かを言い切る前にその体が崩れ落ちる。
それに緑の男は一瞬眉を不快そうにゆがめてそれでもこちらから視線をはずしはしない。
つまり、どこにも隙は見えないということで。
背中をじとりとした汗が流れる。
さっさとこの場所から動いてほかのやつらを見つけなければいけないというのに。
焦りだけが俺を突き立てる。
「潮の匂い。・・・海、か?」
自らの焙烙火屋からでたいつもとは違った煙に呑まれ、一度目を瞑った。
それが原因なのか、そこは先ほどまでの校庭ではなく、どこか薄暗い倉庫のような場所であった。
しかも鼻を突くのは潮の匂い。
さらには地面は不定期に揺れていて。
これらから導き出された答えは、ここは船の上であるということ。
だが、おかしい。
私は先ほどの場所から動いた覚えは、ない。
知らぬ間に場所を移動したなど、考えられはしない。
それではなぜ、このような場所にいるのか。
しかし考え込んだところで答えが見つかるはずもなく。
とにもかくにも、情報が必要だと判断した私はゆっくりと行動を開始した。
忍んで忍んで、見つけたのはえらく大きな男。
片目を眼帯で隠しているその姿はそれだけで威圧感を漂わせる。
只者ではない。
それでも情報を聞かぬことには始まらないのだ。
死角になるであろう左側から一瞬で近づいて、くないを首元に仕掛ける。
自分を相手に見えないようにして低い声で抑揚を表さずに淡々と告げる。
「ここはどこだ。」
が、
「ああ?ここか?ここは俺の船の上だ。」
「・・・・・・は?」
なんでもないように、それこそ天気の話をするかのようにゆるく返されて。
思わず間抜けな声が漏れた。
「なあ、すっげー話しずらいんだが・・・面と向き合って話そうぜ?不審者さん。」
軽い調子で話されたそれに思わず気が抜けて。
ゆっくりとくないをはなして、その男の前へとたった。
「えらく別嬪さんだな」
ほお、と驚いたように告げるその男。
そんな反応は慣れっこなので気にせず話す。
「私は立花という。そちらの名前をお聞きしても?」
「ああ、忘れてた。俺は長曾我部元親だ。」
「長、そか、「いい難いだろう?元親でかまわねえよ」・・・では元親殿、と。」
にかりと笑顔がまぶしい男は楽しそうに尋ねる。
「で、立花は何でここに?」
「・・・・・・気づいたら。」
伏せて話そうかと思ったが、なんとなく、本当のことを話そうと思えて。
「・・・?気づいたら、か?」
不思議そうな顔。
まあ簡単に信じられるものではないが。
「まあいいか。」
なぜかあっさりそう言い放った。
「んで?俺に聞きたいことは何だ?」
「探し人がいる。私と同じで色が違う装束を着た少年たちだ。私よりも小さい。」
頭に手をやって考え込むその姿はなかなか格好がいい。
だが、どことなく暑苦しいそれはあの友人を思い起こす。
そういえばあいつはどうなったのだろうか。
頭の隅でぼんやりと考えながら元親の答えを待つ。
「残念だが、俺は見てねえな。」
申し訳なさそうに言った元親の様子に思わず笑みが漏れる。
「いや、答えてくれただけ十分だ。」
「俺よりそういうなこと知ってそうなやつがいるからそいつんとこまで案内してやるよ。」
その言葉にうそはなさそうだったのでおとなしく頷いた。
遭遇 〜ろ〜
「おーい!ちょーじー!いないのかー?」
うーん。
おっかしいなあ?
さっきまで長次が横にいて、留と文次の喧嘩をはやし立てていたはずなんだがなあ。
でも、まあ。
恐らく、ここにいるのだろう。
消えてしまったやつらは。
目をつぶる前、消えた紫と蒼。
目をつぶったとき微かに感じた浮遊感。
それらがすべてつながる。
は組もここにいる。
そして恐らく同じように消えてしまったであろう、4,5年生も。
ちなみに、低学年たちは、原因不明のそれに参加させるわけには行かないので学園の各教室で待機中だ。
あの泣き虫な頑張り屋さんは大丈夫だろうか、いや、ないているのだろうなあ。
傲慢で自尊心の強い、それでいてとても面倒見のいい意地っ張りはここでもまた優しさを隠すのだろうなあ。
頭に浮かぶ二人の後輩にやんわりと頬を和らげる。
「さて、と。早くあの二人を迎えに行ってやらないと、な。」
そうしてすごい速さで近づいてくる”何か”に向けて攻撃態勢を整える。
「そのためには、まずは情報収集、だよ、な!」
飛んできた刃を本能のままによける。
さらには風よりも早く近づいてきたそれに、あえて自ら近づいて。
その手にもたれた武器を叩き落そうとする。
が、相手は相当の力の持ち主なのであろう。
それにも気づかれていたようで。
ぐらり
頭の芯が揺れる。
深い深いところから、獣が姿を現そうとする。
「っ・・・、さっさと金吾を見つけるつもりだったのに・・・」
こんな実力のある相手と遭遇したことに、こんなときだというのに、心が弾んだ。
だが
呟いた瞬間に大きく跳躍して後ろに下がったその黒い男は、先ほどまでの殺気を面白いくらいに消して。
きょとりと何かを考えるように首をかしげた。
(・・・・・金吾、っていった?)
口を動かすだけのそれは、声が出ないからなのか、出さないようにしているからなのか。
でもその口が間違いなく金吾、と告げたのでゆっくりとこちらも攻撃態勢を解いた。
「金吾のこと知っているのか?」
問いかけに瞬時して。
(水色の服?)
それに頷く。
(喜三太、知ってる?)
その名前は確か留のところの1年のはずだ。
ということは、こいつは知っているのだろう、あいつらの行方を。
「知っているんだったら教えてくれないか?私は七松小平太だ。あいつらを探してここにいる。」
赤い髪に隠れた目元をじっと見つめて。
やがて男はこくりと頷いた
・・・長次みたいだ。
「おにいさん、いきなりそんな風に武器を構えないでくれよ。俺は別にあんたに何かしようってんじゃないからさ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
知らない道。
記憶にはない。
ちなみにあの場所から動いてもいないはずではあるが・・・
そして目の前には全体的に黄色い、肩に猿を乗せて、大きな刀を背負った男がいた。
何もしないといわれても、忍びの性は正直だ。
いつでも動けるように姿勢を保つ。
そんな私にかまわずに、その男は楽しそうに口を開く。
「ああ、自己紹介が遅れたな!俺は、前田慶二、ってんだ!前田の風来坊っていやあ、俺のことよ!」
いや、知らないが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なああんたの名前は?」
にかりにかり笑顔のままで。
・・・小平太のようなやつだ。
とりあえず、攻撃を加える様子はなさそうなので、ゆっくりと武器をおろす。
「お、信じてもらえた?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「う〜ん、まだ信じちゃもらえないのか?」
さて、どう話そうか。
探しているやつらの特徴を告げようか。
いや、それよりも先に私を紹介しなければならないのだろうが。
「うーん・・・あ!そうか!あんたの服装!幸のところにいっぱいいたのとそっくりだ。色は水色と紫と蒼だったけどな!」
私と同じような服。
間違いなくは組たちであろう。
・・・紫と蒼もきているとは知らなかったが。
あいつらはここにいるのだ。
ほっと、体から力が抜けた。
どうやら知らない場所で一人で何の手がかりもない状況というのは思っていた以上に負担だったようだ。
「・・・私は、中在家長次、だ。・・・・・・・そいつらを探している。よければ案内してもらえないだろうか・・・」
相変わらずぼそぼそとした声だが、それでも相手には聞こえたようで。
にかりと笑って付いてきな!といわれた。
遭遇 〜は〜
「・・・・・・・・・ここって、どこかなあ・・・」
ポツリ呟いた声は拾うものなくその場に落ちて。
見渡せば緑緑緑。
それは学園の前にも見られるものだし、そこまでおかしいわけではない。
ただ、先ほどまでいた場所は学園内なわけで。
つまりこれは異常事態。
だって自分は学園から出た覚えはない。
最後に覚えているのは仙蔵の焙烙火屋がいつも以上に爆発したことくらい。
真っ白な煙に巻かれて、気づけばこんなところにいた。
(・・・もしかして不運の最終形態、とか?)
頭をよぎったそれに変に納得しそうになった瞬間、ぴん、と張り詰めた空気。
目を細めて気配を探り、自分の存在を空気に混ぜる。
息を殺しくないを構え、防御の姿勢をとる。
不意に空気が揺れた。
そして一瞬で現れたそれは目の前で銀色が煌く。
それをくないで咄嗟にとめて。
その目の前に現れた人物の、
同い年の後輩と同じような髪色に
くの一の先生のような豊満な体の線に
あの女性顔負けの美貌を持つ同級生をも凌ぐかもしれないその美しさに
目を奪われるよりも何よりも、
(血、の匂いが、する)
伊作の体を突き動かしたのはその考えだった。
普段の体術の授業では考えられないほどのすばやさで目の前の女性を捕らえて引き倒す。
動きを取れないようにしたままで匂いの元を手繰る。
「!?何をする貴様!」
それは右足と左腕のようで。
「っ、はなせっ!!!」
そこの布をくないで切り裂き傷口を見る。
「離せと言っているだろ「黙って」っ!」
耳元で聞こえるそれに集中力をかき消されそうになりぴしゃりと言い放つ。
「思っていたよりは大丈夫そうだね。応急処置が適切みたいだ。」
誰かの手によってすでに応急処置されていたのであろう傷口は想像していたよりはるかにましで。
ほっと息をつき汗をぬぐう。
「・・・」
「・・・」
じとりとした女性の目にあれ、と思い自分の行動を思い出す。
動けないようにした女性の上に馬乗りで乗り、さらには片手でくないをもち服を切り裂いて___
「・・・・・・わあっ!?」
ようやくその状態の怪しさに気づいたのだった。
「・・・・・・・・・・・」
とりあえず、現状把握といこうではないか。
俺はさっきまで学園の校庭にいた。
それは確かだ。
いなくなった1年は組を探すために。
そこで確か文次郎の言い方にかちんときて殴りかかったはずだ。
そしていつものように(不本意だが)仙蔵の焙烙火屋によって合いの手が入れられて・・・
あれ?
そこから記憶が曖昧だ。
というか、ここはどこだ?
忍術学園に比べるととても立派なお城といえそうな建物。
・・・もしかしなくても俺不法侵入なのか?
まさかとは思うが俺はいつから夢遊病になったのだろうか
んでもって、みんなはどこだ?
まさか俺一人だけこの場所に来たとか言うことでもないだろう。
・・・ない、よな?
そんで、この目の前にいる白い中性的な人物は、何者だ?
「おや。びしゃもんてんのおつげのとおりですね。」
目が合って言われた言葉からもうすでに。
まったくもって理解できないことばかりだ。
上杉謙信と名乗ったその人によって俺はなぜか縁側に座ってお茶を飲んでいた。
「けまどのはなにかをさがしてこちらにきたのでしょう?」
疑問文ではなくしっかりと確定したように言われて。
「え・・・はい。確かにそのとおりですが・・・。」
驚きながらも答える。
「びしゃもんてんのおみちびきですから。」
だから意味が解らない。
でも、この人の言ってることは何一つうそがないのだろう。
それはなんとなく解った。
「・・・俺の・・・私の大切な後輩たちです。」
頭に浮かぶ後輩の顔。
今頃どうしているだろうか。
おなかをすかせてないだろうか。
寂しがっていないだろうか。
俺を呼ぶ声が聞こえそうで。
「それはそれは、はやくみつけましょう。」
それはじんわりと胸にしみこんだ。
どうやら俺は思いのほか不安だったようだ。
苦笑いしてはい、と答えようとした瞬間。
きん
鋭い気配に構える。
横にいる上杉殿を守らなくてはと思い飛んでくるくないをはじき落とす。
が、それはどうやら俺だけに飛んできているようだ。
「貴様っ!何のたくらみがあって謙信様に近づいたのだ!っ私でも私でも一緒にお茶できるときなんて少ないというのに!ずるい!」
・・・・・・なんていうか心の声が駄々漏れですが?お姉さん。
「かすが」
「っ、はい!謙信様!」
上杉殿に呼ばれた瞬間彼女はぱあ、と花が咲くように笑顔になった。
さらにはなんていうか二人の後ろに真っ赤な花が見える・・・のは気のせいだと思いたい。
「留さ〜ん!」
彼女が現れたところから少しだけ遅れて見慣れたやつが現れて。
飛びついてきたから思わずよけた。
「っ、ひどいよ!留さんっ!」
見事に体中をすりむいて。
卵であろうと忍びのくせにと一つ笑って。
「いや、誰でもよけるって。」
そういいながら手を差し出してやる。
「あいつらここにいるだろうから、さ。さっさと見つけ出して怒ってやらないとな。」
「そうだね、早く見つけてあげようね。」
こぶしを一度ぶつけ合って笑う。
さあ、探し出してやろうじゃないか。
俺たちの大事な大事な後輩を。
「水色を身にまとった小さな少年たち?」
「知っていますか?かすがさん。」
「知っているも何も、猿飛のところにいたぞ?11人?だったか?」
上杉殿のはからいで部屋に入れてもらって、ここにいる理由を話す。
そうして探し日との特徴を挙げれば確かな手ごたえ。
すぐに見つかったそれに思わず顔が緩む。
横にいる留さんもほっとしたような気配。
「水色だけじゃなくて、紫と蒼が4人ずついたぞ。」
「!え?紫と蒼って、まさかあの子達も来てるわけ??」
「・・・みたい、だな」
まさかの言葉に驚いて。
個性派ぞろいの紫となんとなく印象が薄い蒼が浮かび上がる。
「かすがさんあんないしてもらえますか?その場所まで。」
かすがさんのきれいな目を見つめてそう頼めば微かに瞬時する。
「あんないしてあげなさい、かすがよ。」
でもさすが。
鶴の一声とでも言おうか。
上杉殿のゆるりとした声にゆっくりとかすがさんは頷いた。
「謙信様の頼みとあらば。」
その姿は凛とした花のように美しい。
そのままゆっくりとたちあがり、僕たちに声をかけた。
「お前たちも忍びであろう?」
「ええ、・・・卵ですが。」
「忍びの速度であれば、そんなに時間はかからない。すぐに出発するか?」
すぐさまそれに頷いて、僕らは上杉殿に向き直った。
「短い間でしたがお世話になりました、上杉殿。」
「とても、助かりました。・・・本当ならば、何かお礼がしたいところなのですが・・・」
「かまいませんよ。じかんがもったいないのでしょう?はやくこうはいたちのところへいってあげなさい。」
「本当に、ありがとうございました。」
深々と二人そろって頭を下げて、立ち上がる。
庭にはもうかすがさんが出発する準備を整えていた。
「いけるか?」
「いつでも大丈夫です。」
「よろしくお願いします。」
その言葉に微かに微笑みかすがさんの姿は消えた。
その後を追って僕たちも出発した。
合流 〜い〜
「何のようだ。長曾我部。」
不意に発せられ声は俺に向けられたものではない。
「あれ?気づいてたのか。」
「気づいているに決まっているだろう。」
先ほど倒れた男をまたぐようにして入ってきたのは学園の紫よりも薄い紫をまとい片目に眼帯をつけたとりあえずでかい男だった。
その男はまっすぐに緑へと近づいていくとその頭に手を載せわしゃわしゃと撫で回した。
「___貴様」
と、緑の男の気配が怒りに満ちる。
にかりと笑った男はこちらをちらりとみて微かに目を見開いた。
「あれ?お前もしかして_っ、いってーな元就!!何しやがる!!」
「それはこちらの言葉であろう?なにをする野蛮人めが。」
目の前でやいやいと言い争いを始めやがった。
・・・・・・どうしろと?
思わず構えをといて立ち尽くす。
その瞬間
ひゅ
と空気を切る音に
すっ
とのど元に当てられた冷たいものに
くつり
耳元で笑う声に
しまったと思う間もなく意識は回避するために動き始める。
が
「少しの見ぬ間に、随分と油断が増えたな文次郎。」
その声の持ち主がわかり思わず体から力が抜けた。
「お前は相変わらず悪趣味だな仙蔵・・・。」
言ってやれば再びくつりと笑う声。
いつもと変わらないその様にほっとして解かれた体を伸ばす。
「ところで文次郎。現状把握はどのくらいだ?」
「残念ながらまったくだ。お前はどうなんだ?」
聞かれた問いに正直に返して。
「ふむ。お前にしては行動が遅いな・・・ここはどうやら学園がある世界ではないようだ。」
「・・・は?」
「しかしどうやらこの世界には組がいると見て間違いはないと思うぞ。」
「ちょ、え、え?」
「原因は火薬だと推測する。」
「おい、ちょっとまて、」
「あの時手に入れた火薬をいろいろ調合したのが原因のようだ。」
「おい、仙蔵っ」
「だが安心しろ予備はある。」
「せんぞ「うるさいぞ、文次郎。貴様は黙って人の話も聞けないのか?」・・・」
さっぱりきっぱり
いつもの調子で仙蔵は俺の言葉を切り捨てる。
いらりとしたが今はそんなことを気にしている間はない。
ので、おとなしく黙ることにする。
「立花、やっぱりそいつは知り合いか?」
先ほど入ってきた銀髪の大きな男は緑の男にしばかれたところをさすりながら仙蔵に話しかける。
「ええ、そうです。」
銀髪が俺を見た。
その瞳は意志が強く、下手したら引き込まれそうだ。
「俺は長曾我部元親だ。んでもってあっちの緑のやつが毛利元就だ。」
先ほどから正体不明の緑の男まで紹介してくれたその男はとても男らしく笑う。
緑の男は後ろのほうでふてくされたようになっている。
先ほどまでの冷酷な態度はどこか影を潜めていて。
よろしくとだされた手を用心しながら握り自分を紹介する。
「潮江文次郎、です。よろしくおねがいします。」
その言葉を述べて手を離した瞬間に感じた新たな気配に体全体で戦闘態勢をとる。
それはとなりの仙蔵も同じようで。
二人同時にくないを構え同じ方向を見て。
その姿に悟ったのであろう、元親と元就も視線を鋭くした。
「あれ?もしかして鬼の旦那や毛利の旦那のところにも来たの?」
が、その場に響いたのはとてつもなくのんきな声と謎の言葉。
現れたのは緑の迷彩を身にまとい、橙色の髪が目にいたいやつだった。
「俺様は猿飛佐助。真田に仕える忍隊の長だよ〜」
ニコニコとしているその顔は裏が読めなくて胡散臭い。
だが先ほどの言葉によると1年生のことを知っていそうで。
じとりとした目でその人物を見ればにやり笑う姿。
「俺様の所の城にいるよ?水色と紫、それから蒼が。」
「・・・まさか4、5年生までこっち来てるのか?」
想定外の言葉に驚く。
が、それよりなによりあいつらの元に行くのが先だ。
「案内してあげるよ〜付いておいで。」
その言葉に従うしかなかった。
合流 〜ろ〜
「んん?あれって・・・おーい!長次!」
小太郎(という名前だった)のあとを付いてかけていく森の中。
私の嗅覚が知っているものを伝える。
それと同時に見えたのは同じ忍び服。
その前には見たことない大きな男。
まあ、長次がそこまで警戒していないということはそういうことなのだろう。
速度を落として方向を変えた私にしぶしぶと、ではあるが小太郎が付いてきて。
「・・・・・・・小平太。」
その場所に降り立てば無口で優しい友人がそこにいて。
「おう!元気そうだな、長次!」
にかり、大事な友人の無事に笑みがあふれる。
それにこくりと頷く動作をした後ゆっくりと私の後ろにいる小太郎に目をやった。
「ああ。大丈夫だよ、長次。小太郎はみんなの居場所を知ってるらしくて案内してもらってたんだ。小太郎、こっちは長次。私の大事な仲間だ。」
それに二人はぺこりと一度頭を下げて。
「ははっ!なんかそっくりだな二人とも!」
豪快な笑い声は大きな男のもの。
「俺は前田慶次だ。よろしくな、ええと・・・」
「私は七松小平太だ!よろしく、慶次!」
お互いに手を差し出し握手して。
目の端に映った小太郎が微かに嫌そうな顔をした、気がした。
つんつんと服を引っ張られて、振り向けば小太郎がこちらを見ていて。
(行くなら、早く行こう?)
口の動きだけでそれを読み取って、小平太は頷く。
「長次。小太郎がは組たちの場所を知ってるんだ。案内してくれるって言ってる。行こう?」
長次を見て、そう告げる。
長次は微かに迷うようなそぶりを見せて慶次を見た。
「ああ。俺のことは気にすんな。その忍びについてったほうが早いからな。」
にかり笑ってそういったので長次も頷きこちらに来る。
「頼むな、小太郎?」
その場所には黒い羽が一枚落ちていた。
※※※
うちの小太郎は慶次が苦手です。
道中〜い〜
先ほど、元親殿に礼を告げこの男について木々の間を駆ける。
ちなみに文次郎はあの緑の男に挨拶というか、何かを言いに行って思いっきりしばかれて戻ってきた。
「佐助殿。」
「佐助でいーよー。気持ち悪いから。」
前を駆ける佐助殿・・・佐助の表情は見えないが声はとても楽しそうにはずんで聞こえた。
「・・・どんな、様子ですか?」
「ん〜そうだねえ・・・」
たくさんの言いたいことをこらえて、それだけを聞く。
文次郎も気になっているようで、とても静かだ。
「いい子だよ?みんな。」
今までのような計算高い笑みではなく、本心からこぼれたような笑み。
「そう、ですか。」
その言葉と笑顔だけで十分だ。
さあ、はやくあの子達の場所に向かおう。
私たちを待っているのだろうだから。
道中〜ろ〜
「そうか!喜三太は風魔からの転入生だったからな!」
(うん)
「・・・・・・」
高速で木の上を移動しながら。
そんな会話を続ける。
といっても話すのは小平太ばかりだ。
私はあまり話すのが得意ではないし、小太郎、というものは口を動かすだけで、言葉には出していないから。
先ほどから話されているのはは組の話。
どうやら小太郎は何度もあの子達に会ったことがあるらしい。
この者、はじめ見たときは底知れぬ力に恐怖を感じたが、こんなふうに話してみればなんてことはない。
私たちと同じ、ちゃんとした人間だ。
ただ、私たちとは違いすでに忍びではあるのだが。
「長次!聞いたか?小太郎は風魔の忍なんだって!ぜひ、手合わせしたいものだな!」
にぱりと笑いながらそういう小平太は特に何も思わずにそういってるように見えるが、そう思えて実は奥深いところまで考えている。
「・・・・・・ああ・・・。」
一言だけそう返せばにやり、今度は好戦的に笑って。
「あとで手合わせするから審判頼むな!」
でもまあ、本能に忠実なその姿は悪くはない。
こくり、頷いて先に進む。
向かうのは、上田城、というところらしい。
さて、はやくあの子のところにいってやろう。
強がりで弱虫だからな、あの子は。
道中〜は〜
「かすがさん、さっき言ってた佐助、ってだれなんですか?」
木々の間を飛び交いながらふと疑問を口にする。
「・・・佐助は、ただの同郷のものだ。・・・いつもは真田のお母さん、だが最近は保父さんにでも転職したようだ。」
「・・・忍び、なんですよね?」
かすがさんの言う同郷とはそういう意味なんだろうと思っていたら、なんと言うか聞きなれない謎の言葉が聞こえた。
おかんって、保父さんって・・・
想像できないその姿。
いったいどんな人なのだろうか。
どちらにしても、その人が保父さんになったのは間違いなくあいつらのせいだから。
とりあえずあったらお礼をいわなくてはな、と思った。
「っ、て伊作ぅぅぅ!?」
決心して改めて前を見ようとした瞬間、目の端にかろうじて見えてた薄茶色が木から転落したのが見えた。
「わわ、留さん、ごめんね〜。」
慌てて引っ張りあげてやれば苦笑した顔。
「お前さっきは木のつるに巻き込まれていただろうが!」
あはは、不可抗力だよ、なんて笑うこいつは本当に哀愁たっぷりだ。
「・・・大丈夫なのか?お前・・・。」
さすがに心配になったのだろう。
かすがさんも心配そうに声をかける。
「はい、大丈夫です。ありがとうござ__っわああああ」
お礼を言って頭を下げた瞬間なんていうか、前のめりに目の前を落ちていった。
「っ、なにやってるんだ!!??」
慌てるかすがさんの姿は普通の女の子のようだった。
不運は相変わらず異世界でも共通のようです。
再会 〜い〜
佐助の後について走り抜ける、木々の間。
どれほど長い時間だったのか。
否、そうも長くはなかったのかもしれない。
だが、気が急いて急いて。
「あそこにいるよ。」
その言葉を聴いた瞬間、心のそこが喜びを訴えた。
「・・・・・・・・・・・・・え・・・?」
すたん
その城の中に降り立てばそこには水色、紫、蒼その三色が入り混じっていた。
誰が呟いたのか、その言葉は如実に彼らの戸惑いを表していたのであろう。
じわりじわり
ゆっくりと布が水を吸うように浸透していく、気配。
「・・・し、おえ、せんぱ、い・・・?」
確かめるように恐る恐る呟かれる自分の名。
思わずふ、と頬が緩む。
「なんだ?しばらく会わなかったら、もう俺の顔を忘れたのか?」
そういってやれば、俺の名を言った団蔵の顔がくしゃりとゆがんで
「っ、お、っそいですよっ!しお、え先輩っ!!」
その声と共に体に走る軽い衝撃。
腹の辺りに顔をうずめてしゃくりあげる姿は、とてつもなくいとおしい(絶対に言ってはやらないが。)
ぽんぽんその背を撫でてやっていればそっと近づいてくる紫。
「遅くなってすまなかったな?三木エ門。」
「っ、本当、ですよ。」
その顔を見れば、団蔵ほどではないが潤んだ目が見えて。
忍びなのだからしっかりしろとか言おうかとも思ったが、今回だけは特別だ。
「わわ、潮江先輩!?」
その頭を掴んで引き寄せてやる。
「よく、頑張ってくれたな。」
そっと言えばびくり震えたその肩。
抵抗していた体は力をなくし、顔を押し付けた肩が濡れる感覚がした。
降り立ったとき、一番に動いたのは文次郎のところの一年だった。
その泣き喚く姿を見ていれば背中に重たい衝撃が走った。
見下ろせば、水色ではなく、紫。
ぎゅうぎゅうと体を押し付けてくるその姿はまるで幼子だ。
人一倍わかりにくい性格だといわれているが、なんてことはない。
ただ、顔に出にくいだけで。
しっかりと行動で示してくるのだから。
「すまなかったな、喜八郎。」
よしよしとなでてやれば、こわばっていた体は緩まって。
「遅い、ですよ。先輩。」
微かに上がった顔はむうと、膨れている。(といっても、とてつもなく少しの差だが)
「だが、ちゃんと来ただろう?」
そういえばそっぽを向いて。
苦笑してもう一人の後輩を見る。
「兵太夫。」
優しく名前を呼んでやればゆるり、その瞳にたまっていたしずくが零れ落ちる。
おいでおいでと手招きすれば、駆け寄ってきたその体。
我慢するように服の裾をそっと掴んで、ほとほとと涙をこぼす。
その姿がほほえましくて、その体を抱きこんでやる。
「待たせたな、兵太夫。」
「っ、これく、らい、っどうってこと、ない、ですよっ・・・」
しゃくりあげるのをこらえていう兵太夫。
いつのまにか私から離れていた喜八郎が兵太夫を抱きこんだ上から抱きついてくる。
ふ、とあげた目線の先、こちらを見ていた久々知と鉢屋と目が合う。
「・・・ほら、お前らも。」
「っ、だれがっ!!!」
羨望のまなざしに似ていたので手を広げてやれば顔を真っ赤にして叫ぶ鉢屋。(変装だというのに器用だ。)
だが、次の瞬間広げた腕の中に新たなぬくもりが。
それを見れば蒼色で黒髪を持つ姿。
くるとは思ってなかったので微かに驚く、がその頭を撫でてやれば猫のように体を揺らして。
「久々知」
名を呼べばそっと上がる顔。
真顔でこちらを見てくるその瞳は迷いない。
思わず笑ってやれば、その顔も微かに笑みを形どる。
「っ、兵助くんだけっずるい!」
その声と共に今までの中で一番重い衝撃が走る。
まるで久々知をはさむようにして紫がぎゅうと抱きつく。
同い年だというにもかかわらず、その姿は1年生と変わらない。
まったく、本当に甘えたがりで可愛い後輩たちだ。
つれて帰ってこればこの騒ぎ。
たいそう心細かったのだろう。
まあ、当たり前か。
再会の姿をぼおっと眺めていれば後ろから近づいてくる主の気配。
「無事に見つかったのだな?」
「そうだよ〜。毛利んとこにいたよ〜」
「でも、まだ人数は足りぬか。」
「庄ちゃんいわく、6人の委員長、らしいからねえ。」
「あと、4人、か。」
「でも、大丈夫だよ。もうすぐ、集まるからね。」
でも、それはさよならを暗示する。
再会 〜は〜
ここだ
その言葉と共に降り立ったそこはにぎやかさにあふれた城で。
中から聞こえてきた声に、音に、笑い声に
ただ
ただ
ただ
胸がいっぱいになった。
「乱太郎っ!」
こけそうになりながら、大事な後輩の姿に飛びつく。
「い、さくせんぱあいっ」
ずっと我慢していたのだろう。
ぎゅうとしがみついてきたその小さな体
「喜三太!しんべエ!」
「「食満せんぱあい!!!」」
涙とは違うもので顔中をゆがめて、二人は全力で留さんに飛びつく。
特に後輩が大好きな留さんのことだ。
心のそこから安堵しているのだろう。
まあ、僕もだけどね。
ぎゅうぎゅうと合わなかった日数の分だけ埋め合わせるように抱きしめる。
「いたっ・・・」
その声にそっと体を離してよく見ればいたるところが傷だらけ。
ああもう!いろんなところが傷だらけだ!
こんなところ、僕に似なくていいのに!
そう思っても、保健が不運委員と言われる限りは無理なのだろうけれども。
持っていた救護品で怪我に薬を塗っていく。
「ありがとうございます」
告げられたその言葉が笑顔が温かい。
後ろでぎゃあぎゃあ聞こえたのは5年の鉢屋と竹谷のものだろう。
留さんにとってはいくつになっても、後輩は後輩だから。
「遅かったな、は組の二人。」
その声に振り向けばそこにいたのはい組の二人で。
「・・・伊作。お前はここでも不運なのか・・・?」
文次郎は僕の体を見回して、溜息。
悪かったね。
僕の意思じゃないよ。
でもまあ、あとはろ組の二人だけだ。
早くおいでね?
小平太、長次。
君たちの後輩が、そわそわしてるから。
「乱太郎っ!」
伊作がこけそうになりながら、後輩のもとに駆け寄っていく
それを見届ける間もなく、俺も俺の大事な後輩の名を呼ぶ。
「喜三太!しんべエ!」
「「食満せんぱあい!!!」」
転がるように走り出てきたその二つの小さな体を抱き上げて力いっぱい抱きしめてやる。
怖かっただろう、心細かったであろう。
もう大丈夫だ、俺がいるからな。
そんな思いを込めて、声にならない言葉の代わりに。
強く強く。
「悪かったな、遅くなって。」
「僕たち、信じてましたっ!」
「先輩,絶対来てくれるって!」
首元にぎゅうぎゅうしがみつく腕。
ああもう!
なんて可愛いんだ!!
顔中を涙やら何やらでぐちゃぐちゃにしてすがりつくその小さな体はどうしようもなく、大好きだ。
顔を上げた際に目の端に映るのは様々な色。
水色、紫、蒼色。
誰の顔も皆、うれしそうで。
一つしか年が離れていない蒼たちも、うれしそうで。
それにどうしようもなく顔が緩んで。
「っ、食満先輩!?」
「っ、何なんですか!?」
二人の一年から手を離す。
たまたま一番近くにいた竹谷と鉢屋の首に腕を回して引き寄せてやった。
ぐわしぐわしとその頭を撫でてやれば嫌がり腕の中で体をよじる二人。
その姿でさえ、可愛く思えてさらに強く抱きしめる。
「俺たちがいない中で、よく頑張ってくれたな!!」
さすが自慢の後輩たちだ!
そう告げれば腕の中で二人が顔を真っ赤にしているのが見えて。
本当に幾つになっても、後輩は可愛いものだ。
そのあと聞こえてきた仙蔵たちの声に、あいつらは先に来ていたのかと思いながらも、今はただこの二人のぬくもりを抱きしめることに専念した。
「かすがちゃん、連れてきてくれたんだねえ。ありがとうね?」
「・・・お前のためじゃない。謙信様の頼みだからな。」
「うんそう言うと思ってたよー。」
橙色を目の端にいれないようにしながら、再会して喜ぶ子達を見る。
ころころとした水色はとても可愛い。
はじめこれらを見たときは佐助にどこから攫ってきたのか問い詰めたりもした。
明るく笑顔なこの子達だったけど、時折ふいにさびしげな顔をすることがあって。
帰りたいのだと、会いたいのだと、呟かれた言葉がずっと耳から離れなくて。
謙信様からの頼みがなくても私は行動していたのだと思う。
もうしばらく、この子達を見ていたかったのだけれども。
別れは刻一刻と時を刻む
再会 〜ろ〜
(ここ。だよ。)
音なく告げるその言葉。
あたりは夜。
闇が鎮座するその時間。
見えた城はとても立派で。
「行こう、長次!」
頷いたのをみて、すぐさま降り立ったのは城の塀。
さすがにこの時間じゃ、おきてるものは少なくて。
でも、感じる気配は懐かしいものばかり。
「金吾っ!滝っ!」
「ぐえっ」
その気配がした部屋に全速力で駆け込んで、状況把握をする前の二人を全力で抱きしめる。
(何か踏んだ気がするのは気のせいだ。)
「え、ちょ、え、七松せんぱっ、い、いたっいたいです!!?」
「は?え、七松先輩?!っ、いたたたたっ!!」
腕の中からこぼれてきたそれらの声。
彼らが存在することがうれしくてうれしくて、さらに力を入れる。
「っっててってせん、ぱっ、まじ、でっいたっ、マジでいたっいでっす!!」
「っ、小平太っ!それくらいにしとかないと二人の体がみしみしいってるよ!?」
ああもう、やっと会えた再会を邪魔するのはいさっくんか!
いさっくんにじとりとした目を向けるけれども、本当に腕の中の抵抗がやばいことになってきたのでちょっとだけ力を緩めてやる。
「っ、死、ぬかと思った・・・・・・」
「っ同感、です・・・・・・」
ぜえぜえと肩で息をする二人の頭に手を置いて言う。
「すまんっ!遅くなったな!」
二人が、そっと顔を見合わせて笑う。
「本当に、先輩にしては遅かったですね?」
「一番に駆けつけてくれると思ってたのに。」
その笑みがうれしくて、置いていただけの手をがしがしと撫で回してやった。
小平太が全力で駆けていったのを一瞬見送ってしまった。
慌てて追いかけようとすれば目の前に現れたのは迷彩で橙色の男。
「あれ?風魔がつれてきてくれたんだ。」
構えたけれども、小太郎に話しかけたのを見てそれを解く。
こくり、頷いた小太郎。
それに笑い橙色は私たちの前を先導するように歩き出す。
「中在家先輩!」
と、向こうから現れたのは蒼色の後輩。
音を立てず、近づいてきた雷蔵の頭を撫でてやる。
「わわ!っ、おひさし、ぶりです・・・。」
驚いたように、でもいつものように柔らかな笑みを浮かべて雷蔵は笑う。
が、それもすぐに消えて、次いで放たれた言葉は私を動かすには十分だった。
縁側で一人沈み込むようにしてひざを抱えていたその姿を見つけて、そっと近づいていく。
『きり丸に早くあってあげてください。』
『あの子が一番、まいってます。』
送り出された言葉と共にその場所へ向かって。
「・・・きり丸・・・」
その名をささやくように告げれば、ゆっくりと恐る恐る上がるその顔。
赤く色ずく目元はないていたからであろう。
「・・・せ、んぱ・・・?」
実態ではないものを掴むかのようにそっと呟かれた名前。
手を伸ばせばびくり、体が揺れて。
そっと抱き寄せたその体は風に当たっていたからだろう、とても、冷たい。
腕の中で戸惑うように体を揺らしてそおっと壊れないかを確かめるように腕が伸びる。
短い腕で、二度、三度装束をつかまれる感覚の後、ぎゅう、と強くなるその力。
「っ、せんぱ、ぃっ___先輩っ!!!」
堰が壊れたようにわんわんと泣き出すその姿。
必死ですがり付いてくる細い腕。
力を強めてその体を抱きしめる。
耳元で何度も何度も呼ばれる自分の名。
「もう、だいじょうぶだ。」
そう告げればさらに力は強まる。
ずっと我慢していたのであろう。
この強がりで弱虫で、何よりも、誰よりも絆を信じて恐れて、触れられるものだけが真実だと思い込んでいるこの子は。
とてもとても、いとおしい。
蒼色に示された廊下を走っていった長次の後ろ姿を見送って。
それについていった蒼色の子もここにはいなくなって。
いるのは僕と真田の忍びだけ。
なんとも居づらいその空間。
どうしようかと思っていたら向こうから話しかけられて。
「風魔。」
(なに?)
ことり音が出ない唇で尋ねればそこには寂しげな笑み。
「もうすぐ、あの子達は帰るよ、あの子達の世界に。」
それを聞いて驚いた。
あの子達がどこから来たとか、聞いたことがなかったから。
調べたことはあったけど、何もつかめなかったから。
そうか、あの優しい瞳に、柔らかな笑顔に、もう会うことはできなくなるのか。
そう思うとちょっぴり寂しくて。
ああ、だから忍びもこんなにも寂しげなのか。
納得して頷く。
「たぶん、明日。」
それはきっと本当なのだろう。
もう一度だけ話したかったな。
そう思いながらも、それはかなわぬことと知っているの。
だって、ほら、今の主様が僕を呼ぶ声が聞こえたから。
「じゃあね、風魔」
姿をくらませた僕に向かって微かに届いた声。
でも、返事はしない
だって次、会うときは敵同士、でしょう?
もうしばらく、この仮初の現実に浸っていたかったのだけれども
「小十郎さんっ、鉄砲楽しかったです!」
「俺のほうこそ、いい体験させてもらった。」
「怪我の手当てとかいろいろしてもらっちゃって・・・」
「これからも怪我に気をつけろよ、乱太郎。」
「政宗さん、剣術の稽古ありがとうございました!」
「かまわねえよ。俺も楽しかったからな。」
「僕も、いっぱいお世話になりました!」
「団蔵、馬については俺もいろいろ教えてもらったからお相子だ。」
「佐助さん、いろいろ相談に乗ってくださってありがとうございました。」
「庄ちゃんの役に立てたなら何よりだよ〜」
「いろんなことを教えて下さってありがとうございました!特に、掃除の仕方とか!」
「いいえ。伊助は物覚えがよくて教えがいも会ったしね。」
「ふにゃ、小次郎さんにさよなら言いたかったのにぃ・・・」
「それなら、これをお前にと預かっている。」
「わあ!あの鳥さんの羽だあ!いいの?」
「最後には会えぬからと私に託していったのだ。」
「ありがとうございます!かすがさん!」
「幸村さんっ、お団子またいつか一緒に食べに行きましょうねえ。」
「うむ、そうだな、しんべエ殿。」
「いっぱい罠にかけてしまってすみませんでした・・・」
「否、某の鍛錬が足りない証拠であったのだ。むしろ感謝しておるよ、三次郎殿、兵太夫どの。それと、きり丸殿これを。」
「!え、でも、いいんすか・・・?」
「かまわぬよ。某がきり丸殿に上げたいのだ。」
「・・・ありがとうございます。」
ちゃり、とその音はあたりに響いた。
交わされる会話は、確実にこの子達がこの世界で歩んだ軌跡。
この子達をさらに成長させたものばかり。
「ではそろそろ行くか。」
その場に一瞬訪れた静寂。
このときを逃せば、きっと帰るのがつらくなる。
そう思って切り出した言葉に皆が頷く。
「本当に、お世話になりました。」
佐助たちに向き直り深々と頭を下げて心のそこからの感謝を伝える。
「いんや〜俺様も、旦那のお子ができたときの予習練習ができたからね。」
「っ、佐助!?何を言っているのだ!?」
いい体験だったよ、そう続ける佐助に真田幸村が顔を真っ赤にして反論している。
それに皆、頬を緩ませて。
「無事に帰れることを願っといてやるよ。」
伊達政宗が不適に笑ってそう告げる。
「政宗様・・・」
その言葉にあきれたように声を漏らす片倉小十郎。
でも、その顔はとても柔らかい。
「元気で。」
それだけを告げて、かすがさんはそっぽを向いて。
ぐすぐすと聞こえ出した泣き声。
それを留三郎が、伊作が、鉢屋が、竹谷が
優しく抱きしめて。
「では、行くぞ」
それが合図。
懐から取り出した焙烙火矢を地面に叩きつけて。
煙の中消え行く世界に最後にもう一度だけ深く頭を下げた。
「まったく心配をかけよって!」
「どこに行ってたんだまったく!」
そんなお小言も気にならないくらい、この胸に詰まった体験はかけがいのないものばかり。
でも、やっぱり暖かく笑ってその言葉を言ってくれるのはこの場所だから、
「「おかえり」」
「「「「「「「「「「ただいまっ!」」」」」」」」」」」
全力でその体に抱きついた。
あの場所で
見つけたものはかけがいのないもの
知ったのは悲しい現実
優しい優しいあの人は
今日も戦場に立っているのでしょう
孤独を抱えて、なお強いあの竜は
今日も不適に笑っているのでしょう
影の役目を背負う、あの橙色は
今日も笑顔の下に悲しみを隠しているのでしょう
竜を支える右目は
今日もただ主のためだけに
主を愛するあの金色は
今日もまた盲目なまでに主を思う
口を閉ざしたあの紅は
今日も闇を駆けるのでしょう
道化を演じるあの人は
今日も笑顔を振りまいて
ああでもでも
彼らは必死に生きて生きて、それは私たちとなんら変わりなく。
彼らは精一杯生き抜いて。
私たちを暖かいぬくもりで包んでくれました。
私たちを優しく庇護してくれました。
何も知らなかった無知さを責めることなどなく、さとすように、ただ、手を差し伸べてくれました。
ありがとうありがとう
何度言っても、言い切れない。
奇跡と偶然と、いろんなものが重なってできたこの出会いは、今ではとてもとても大きな宝物になりました。
最後に一つだけ___
また会うことを祈ってもいいのでしょうか
許されるのであれば、今一度、あの姿を
あの笑顔を___
きり丸の胸元の六文銭がちゃりと音を立てた。
回想
一瞬の煙と共にその姿は消えうせて。
夢か幻か、ただそこにはいつもどおりが戻った
あっという間の日々だった。
あの小さな小さな子供たちとの日々は。
今じゃ夢のようだと思う。
あんなにも平和な日々は久し振りだったから。
皆があの笑顔に癒されて
皆があの純粋な存在に心洗われて
皆があの子達を守ろうと一つになっていた
それはもう過去のこと。
この手にあの子達がいた記録はない
あるのは記憶という不確かなものだけ。
「ほんっと、やになっちゃうよ・・・」
ぼおっと縁側で空を見上げる。
これからまた始まる、争いの日々。
「佐助」
名を呼ばれて振り向けば、そこには柔らかな笑みを浮かべた主。
「旦那」
横に座った旦那の手には湯飲みが二つと、団子の山。
「って、旦那。団子は一日に10本までって言ってるよね!?」
慌ててそういえば旦那はまっすぐとこっちを見て告げる。
「これは某ではなくお前の分だ、佐助。」
「・・・へ?」
「いつまでへばっておるつもりだ?お前は某の忍びであろう?はやくいつものとおりのもどって、某について来い。」
いつもはなんとも頼りないこの主は時折、このようにしてとてつもなく聡くなる。
「・・・ほんっと、もう・・・。」
さて、そろそろいつものとおりに戻ろうか。
俺様はこの主についていくと決めているのだから。
あの日々を糧に、俺らは生きていくことができる。
真田の城が保育所じゃなくなってから、あの城に行くことはなくなった。
それはなんというか、なんともいえない気持ちがあるからだ。
「政宗様」
「Ah〜?」
ゆるり、執務室の障子を開けて背中をもたれて休んでいれば、あきれたような声。
またお小言でも始まるのかと思い生返事をすれば驚くべき返答。
「気分転換に城下にでも参りませんか?」
城下町は活気付き、様々な声が飛び交う。
にぎわうその場所は笑顔にあふれた場所で。
「お忘れになりませぬように。この場所は、あなた様の御国。あなた様が治めるべき土地でございます。」
ゆるり流れる風が髪を揺らす。
「あなた様の手によって、どうにでも変わる場所でございます。」
それはプレッシャーにも似て。
目の前に転々と転がってきたのは鞠。
救い上げてそちらを見れば10くらいの小さな子供たち。
「わわ!お侍さんだ!」
慌てて頭を下げようとするその体を止めて、目の前に鞠を差し出してやる。
「ほらよ。なくさねえように気をつけろよ?」
最後に頭を撫でてやれば、花が咲くようにぱあと明るくなるその表情。
「ありがとう!お侍さん!」
ぱたぱたと走り去るその様子を眺めて、目が覚めたような気がした。
「帰るぜ、小十郎。俺にはやることがたくさんあるんだからな。」
「御意にございます」
さあ、俺の国をもっと豊かに、もっと暮らしやすく。
ゴールなんてない。
立ち止まってる暇などない。
ならば進むのみだ。
あの体験は確かに俺の中にある。
喜三太とは、もう会えないのだろうけれども。
さよならを言うことはできないとわかったから、上杉のくのいちに大きな羽を渡して。
風魔の学園で学んでいたという彼は僕と同じ術を知っていたりして。
驚いたけど、同胞だと思うとうれしかった。
しゃべらない僕の言葉を感じ取ってくれて。
それはとても暖かい存在だったように思う。
あの場所は優しかった。
でも、もう敵。
この不安定な関係をつないでいてくれたのはあの子達だから。
あの場所の、あの忍びたちとは、次あえば、殺りあう。
でも、このうたかたはとても心地がよかった。
別に神様なんて信じないけれども、それでも___
次の世界では友達になりたいな。
※※※
これにて終着!
長い拍手でしたが・・・
おつきあいありがとうございました!
なんていうか、最後が小太郎のいいとこどりみたいに・・・